
IMP.鈴木大河 初主演舞台!エスパーたちが繰り広げるドタバタコメディ舞台『曲がれ!スプーン』観劇レビュー
撮影:阿部章仁
IMP.鈴木大河さん主演舞台『曲がれ!スプーン』が6月東京・IMM THEATERで上演。今作は2000年ヨーロッパ企画の上田誠氏が作・演出を手掛けて初演されました。(初演時のタイトルは「冬のユリゲラー」)。その後、2002年、2007年の2度にわたって再演され、2005年にはフジテレビの深夜ドラマ『劇団演技者。』にてテレビドラマ化。2009年に「曲がれ!スプーン」に改題され、長澤まさみさん主演で映画化、その後3度目の再演を果たすなど、人気のコメディ作品です。今回、ヨーロッパ企画の大歳倫弘さん演出で待望の再舞台化を果たしました!
あらすじ
クリスマスイブ。町外れの、うら寂れた喫茶店「カフェ・ド・念力」。
集まってきたのは、各種様々な超能力を持ったエスパーたち。
今夜はここで、秘密の「エスパーパーティ」が開かれようとしている。
普段は能力を隠して暮らしている彼らが、初めてその“力”を、仲間同士で披露しあうのだ。呼びかけ人であるマスターが、すこし席を外している間、痩せた男・神田が店に迷い込む。
仲間が来たと勘違いしたエスパーたちは、彼をパーティの輪に招き入れる。
しかし、やがて神田はエスパーではないことが判明 。自分達の秘密を口外されたくないエスパーたちは、あれやこれやと策を練ることに。
ところがそこへ、超常現象番組のAD・桜井が、神田を取材にやってきて・・・。
あらすじを読んだ瞬間から「これは絶対に面白い」と胸が躍りましたが、その期待を裏切らない作品でした!派手な仕掛けや目まぐるしい場面転換はありません。しかし、大掛かりなセットや演出に頼ることなく、役者たちの芝居と言葉、そして細やかな動きだけで観客を舞台の世界へと引き込んでいきます。
物語は、喫茶店を舞台にした会話劇を中心に進みます。
まるでその場で実際に交わされている会話を隣の席から見聞きしているかのような臨場感があり、アドリブと錯覚してしまうほどテンポの良い自然な掛け合いが繰り広げられます。
撮影:阿部章仁
会見で演出の大歳倫弘さんがおっしゃっていたように、今作はまさに「コメディのお手本」のような作品です。脚本や構成が非常に緻密に練り上げられており、絶妙な間や伏線が効き、随所で思わず笑ってしまう場面が続きます。
サイコキネシスを持つエスパー・河岡役を演じるのは鈴木大河さん。透視能力を持つエスパー役に岡田義徳さん 、電子機器を操るエレキネシスを持つエスパー役に忍成修吾さん、テレパシーを持つエスパー役に時任勇気さん 、テレポーテーションを持つエスパー役にオラキオさん。さらに、店に迷い込んだ男役にひょうろくさん 、超常現象を扱うテレビ番組の女性AD役に松井愛莉さん 、喫茶店のマスター役に相島一之さんという個性的なキャストが揃います。
喫茶店でエスパー達は、一人ひとり自己紹介をし、それぞれのエスパー能力を披露していくのですが、どの力も“すごいはすごいけど、なんだか惜しい”(笑)。絶妙な加減で、思わず愛着が湧いてしまうようなキャラクターたちです(笑)
撮影:阿部章仁
主演の鈴木さんは、普段はIMP.のメンバーとして華やかなパフォーマンスを披露していますが、本作では寂れた喫茶店に通う常連客を、等身大の若者として自然体に演じています。パワー系のエスパーで少々粗暴な一面ものぞかせますが(笑)、彼の人懐っこさや飄々とした雰囲気が魅力的で、不思議と憎めない存在です。主演ですが、いい意味で前に出過ぎることなく作品全体になじみ、心地よく溶け込んでいました。
撮影:阿部章仁
会見で初主演舞台ということで、決まった時の気持ちと座長として意識した部分について聞かれ、「率直にすごく嬉しかったですし、たくさんの方に愛されたこの作品で主演をできることが本当に光栄で嬉しかったです。けれど、その分プレッシャーも感じていましたし、本当に座長っていう名前がすごい重たいなって感じるんですが、今回このキャストの皆さんとやるっていうのが決まった時に、無責任なんですが、座長らしくなくていいなと思ったんですよ。一番年下というのもありますし、皆さんが経験豊富なので、学んでいこうと思います。作品の性質上主演として何か台詞や立場があるわけでもなく、皆が常連という(同じような立場)のもあるので、楽しくやれたらと思っています。」と謙虚にこたえていました。
撮影:阿部章仁
そんな”鈴木さんの雑長力”について、共演するベテラン俳優の相島一之さんは「最高です。大河くん男前なんですよ。稽古場での居方、人との接し方とか。だからとても素敵です。」と話され、劇中のマスター役と同じように、温かな眼差しで見守り、柔らかな物腰と、全てを丸っと包んでくれるような安心感を感じました。
オラキオさんは、「舞台上でいつも(鈴木さんが)すごく楽しそうで、目が合う度に僕まで笑顔になれます。」と座長として愛されているのが伝わりました。
撮影:阿部章仁
撮影:阿部章仁
きっと、鈴木さんのファンの方も「大河くんの初主演舞台が、こんなにも温かいカンパニーで本当に良かった」と感じるのではないでしょうか。それほど、彼がのびのびと、そして安心して“役者・鈴木大河”としてそこに生きている姿が伝わってきます。
撮影:阿部章仁
個性豊かなキャラクターたちが揃うなかで、ひときわ異彩を放っていたのが、ひょんなことからこのカフェに迷い込んだ“細男”こと神田役の、ひょうろくさんです!
キャストの皆さんがはまり役だったため、会見時にどのようにキャスティングされたのか演出の大歳さんに質問したところ、
「まずは(登場人物の)細男が細いかどうかが重要なポイントで、とにかく芸能界で一番細い人にお願いしたいと思っていたところ、ひょうろくさんという素晴らしく細そうな方が加わってくださって心強いです。」
と回答。さらに、そこに手練れの役者陣とフレッシュなメンバーを揃え、グラデーションや全体のバランスを考えながら、綺麗な五角形になるようキャスティングしたそうです。
キャスティングの要となったひょうろくさんですが、なんと意外にも本作が初舞台。そうとは思えないほど堂々とした佇まいで、物語を動かしていくキーパーソンとして大きな存在感を発揮しており、驚かされました。
登場時から、サングラスをかけ、ふてぶてしい座り方や足の組み方、どこか上から目線の物言いなど、妙に“大物感”を漂わせるひょうろくさん。いかにも「特殊能力」を持っていそうな風貌で現れるため、ほかのエスパーたちもその“エスパーらしい雰囲気”にすっかり惑わされ、「勘違い」や「すれ違い」を生みながら物語は展開していきます。
存在そのものが笑いを誘い、不思議な魅力も放っているので気づけば目で追ってしまう存在となっていました。
撮影:阿部章仁
会見で、”大変だったこと”について聞かれると、「アクションが多い」と語っていたひょうろくさん。実際に舞台をご覧いただければわかるのですが……彼ならではの“ゆるめ”のアクションには思わず笑みがこぼれます(笑)。
間違いなく、その独特のゆるさと存在感が作品全体の空気を作り出しており、肩の力を抜いて楽しめる笑いが好きな方にはたまらないはず。誰かを傷つける笑いではなく、観ているこちらまで穏やかな気持ちになれるような、優しくて平和なコメディです。
撮影:阿部章仁
個性豊かなキャラクターたちがひしめく中で、ごく普通の会社員を演じた時任勇気さん。その“普通らしさ”が、「現実にもこんな人がいそう」と思わせるリアリティを作品にもたらしていました。
撮影:阿部章仁
撮影:阿部章仁
岡田義徳さんや忍成修吾さんは、ベテランならではの安定感で作品を支えつつ、大人たちが少年のように無邪気にはしゃぎながらドタバタ劇を楽しむ姿がなんとも微笑ましく感じました。
撮影:阿部章仁
後半には、テレビスタッフ役として唯一の女性キャスト・松井愛莉さんが登場。彼女のナチュラルな可愛らしさと肩の力の抜けた佇まいが、物語に新たな風を吹き込みます。
ふんわりとした柔らかな雰囲気が役柄によく似合っており、「こういう女性スタッフ、いそうだな」と思わせるような自然体のスタイルと演技で、個性豊かな登場人物たちの中で、良いアクセントとなっていました。

撮影:阿部章仁
観劇後は思わずにやにやしてしまい、心がほっこり温まるはず。帰り道には「もしかして、この人もエスパー?」と想像したくなってしまうような、遊び心あふれる優しいコメディでした。
千秋楽となる6月19日18:00開演回は配信も予定されています。ぜひ劇場や配信で、その世界観を体感してみてください!
(文:あかね渉)
舞台『曲がれ!スプーン』
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
演出:大歳倫弘(ヨーロッパ企画)
キャスト
鈴木大河(IMP.)、岡田義徳、忍成修吾、時任勇気、オラキオ、ひょうろく、松井愛莉、相島一之
【東京公演】2026年6月4日(木)~6月14日(日) IMM THEATER
【京都公演】2026年6月17日(水)~6月19日(金) 京都劇場

