
時空を超えた衝撃!劇団四季 ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』観劇レビュー

撮影:荒井健
想像の遥か上を行く舞台体験
映画史に燦然と輝く傑作「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。その感動と興奮をそのままに、ミュージカルとして舞台化され2021年にロンドンで初演。そして、映画公開から40周年となる2025年、劇団四季が日本で初上演。4月6日、東京・JR東日本四季劇場[秋]にて待望の幕を開けました。
上演決定から大きな話題を呼び、開幕前に延長公演分のチケットが発売されるなど、文字通りの超話題作。
そんな大注目の公演を観劇した私は、そのあまりにも強烈な衝撃と驚きに、開いた口がふさがらない状態でした。その熱量をそのままに、驚きを中心に体験をレビューとしてお届けします。
劇場全体がアトラクションと化す空間設計
JR東日本四季劇場[秋]に足を踏み入れた瞬間から、特別な体験は始まっています。劇場に到着した時の高揚感はもちろん、会場内に一歩入った途端、他の舞台では感じたことのない異世界感が広がっていて本当に驚きました。
まだ会場に1歩入っただけなのに、そこはまるでテーマパークのアトラクションの世界に入り込んだかのよう。劇場空間全体が否が応でも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の世界へと観客を引き込み、開演前から期待値を最高潮に高めてくれる設計になっていました。
舞台化への疑問が、感動へと変わる瞬間
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が舞台になる!と聞いた時に、「あの映画の世界観を、生の舞台でどう表現するのか?」「タイムトラベルの描写や壮大なスケールを表現しきれるのだろうか?」という疑問を感じたのは、私だけではなかったと思います。しかしそれは、全くの愚問でした。
舞台は私の想像を遥かに超える演出と舞台装置の連続で、正直、何がどうなっているのか理屈での理解が追い付かないほどでした。観客は、ただただ驚愕の世界に身を委ねることになります。
いよいよ幕が開くと、映像と舞台美術の融合、そしてオーケストラピットから響き渡る生演奏の大迫力に圧倒されます。やはり、生演奏の持つ振動と響きは格別で、時折オケピから覗く指揮者の方の姿を見ながら、「本当にこの空間で演奏されているんだ」と感じるのも、また贅沢な観劇体験です。

撮影:荒井健
映像と融合するマジック:3D?4D?体感型の舞台芸術
観劇中、キャストが目の前で演技をしているにもかかわらず、まるで映像の中の登場人物が飛び出してきたかのような、不思議な感覚に襲われます。
映像との境目が一瞬分からなくなるほど自然に切り替わり、後半では実際に手に触れることができるような演出もあり、3Dや4Dのような体感型の映像の世界に触れているかのようでした。
この圧倒的な没入感を支えている1つの要因は、場面転換のスピード感だと感じました。舞台では当然の如く存在している場面展開がほとんど目立たず、ほんの一瞬目を離すと「今何があったんだろう?」と思ってしまうような感じで自然な流れの中で、舞台の景色が切り替わっていきます。
そして、思わず「なるほど!」と唸らされたのは、映像との融合シーン。キャストはその場から全く動いていないにもかかわらず、映像と重なることで、見事に場面を移動していく様子が表現されていて、舞台上のマジックを見ているかのようでした。
舞台にリアルなデロリアン!驚愕のタイムトラベル体験
今回の舞台演出の中で、何よりも特筆すべき最大のハイライトは、タイムマシン「デロリアン」の存在でしょう。
観劇前、最も大きな疑問だった「デロリアンに乗って未来から帰ってくるシーンをどう表現するのか」という問いに対し、舞台にリアルな車(デロリアン)を登場させただけではなく、想像の遥か上を行く演出を仕掛けてきました。
舞台に車があるだけでも驚きなのに、デロリアンが巻き起こす驚愕の演出には、思わず声が漏れるほど。このままどこかに行ってしまうのでは?と真剣に考えてしまうほどの、驚きと感動が繰り広げられます。このデロリアンのシーンの衝撃は、ぜひ皆さんの目で直接確かめて、大いに驚き、感動していただきたいと思います。

撮影:阿部章仁
14年の情熱が結実した、世代を超えた名作
本作品は、映画を観て育った世代の方々はもちろん、映画を知らない若い世代の方々にも心から楽しんでいただける普遍的な魅力に溢れています。特に、映画を知っている世代の方は、その再現性の高さと、舞台上で繰り広げられる魔法のような演出に、驚きと感動を感じると思います。
今回の観劇を機に少し調べてみると、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」舞台化は、2006年頃に計画され、多くの拒絶を乗り越え、実現までになんと、14年間もの歳月を要したそうです。この素晴らしい舞台の成功は、関わった全ての方々の夢と情熱の結晶であることを知り、舞台の素晴らしさだけでなく、夢を叶えるためには強固な情熱が必要だということも改めて感じることができた、貴重な観劇経験となりました。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年という記念すべきタイミング。映画ファンの皆様も、映画未見の方も、この機会にぜひ劇団四季の舞台に足を運び、デロリアンが誘う時空を超えた冒険を、肌で体感してみてください。
(文:松坂柚希)
劇団四季 ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
クリエイティブ・チーム
台本/共同創作者: ボブ・ゲイル
共同創作者: ロバート・ゼメキス
作詞・作曲: アラン・シルヴェストリ、グレン・バラード
グローバルプロデューサー: コリン・イングラム
演出: ジョン・ランド
◻︎公演日程
【東京公演】
公演日程:ロングラン上演中
会場:SMBCグループミュージカルシアター JR東日本四季劇場[秋](浜松町・竹芝)

