
ブロードウェイの興奮を、あなたのすぐそばに!城田優さんが語る〈松竹ブロードウェイシネマ〉の魅力
〈松竹ブロードウェイシネマ〉は、“本場のミュージカル”を身近に感じてほしいという想いから始まりました。そしてこの秋、トニー賞を総なめにした伝説のロングラン・ミュージカル3作品がスクリーンに登場します!
今回、〈松竹ブロードウェイシネマ2025秋〉の公式アンバサダーに就任したのは、俳優・城田優さん。ミュージカル俳優として、そしてプロデューサーやクリエーターとして舞台と真摯に向き合ってきた城田さんに、本シリーズへの想いや3作品それぞれの魅力、ミュージカルへの情熱や思い出まで、たっぷりと語っていただきました。
あなたも是非、スクリーンでブロードウェイの鼓動を感じてください!

撮影:岩田えり
―〈松竹ブロードウェイシネマ2025秋〉の公式アンバサダーに就任されたお気持をお伺いしてもよろしいですか?
お選びいただき光栄です。シンプルに自分が知らなかった作品に触れることができたり、実際、ブロードウェイまで行かないと観られない作品を特等席で一足早く観させていただけることなども、個人的に興味があるミュージカルというジャンルなので、ご褒美みたいなお仕事です!もちろんアンバサダーに就任してお話をするために観るわけですけど、それだけではなく、個人的に楽しんで見られるというところも含めてありがたいお話です。

撮影:岩田えり
―本場のブロードウェイミュージカルを間近で観るなんてとても贅沢なことだと思うんですが、改めていかがでしょうか?
今の円安の世の中、ブロードウェイでミュージカルを観ようと思うと、飛行機代、チケット代、もう何十万円っていう金額がかかりますが、映画館に行って、少しのお時間とお金を出せば本場ブロードウェイで数々の賞を受賞していたり、ノミネートされた高く評価された作品に間違いなく触れることができるというのは、本当にこの企画ならではだと思います。
どんどんこの試みを広げていっていただいてほしいと思いますし、ミュージカルの魅力がより多くの方たちに届けばいいなと思っております 。
実際の舞台では出演者たちの表情や細かいお芝居にフォーカスすることってなかなか難しいですよね。このように映画として上映されることで、ディレクターが選んだものではありますが、大事な部分をしっかりと見逃さないカット割りにもなっています。「今観るべき表情はこれですよ」とディレクションをされている状態ですからミュージカル初心者にも優しいですよね。そういった意味でも楽しみやすく親しみやすいミュージカル映画になっていると思います。

撮影:岩田えり
2025年10月31日(金)~
『エニシング・ゴーズ』 ⒸTristram Kenton
―『エニシング・ゴーズ』の主役を演じたサットン・フォスターについて率直なご意見や魅力をお話しいただければと思います。
誰がどう見ても看板女優、主役というオーラを身に纏った素晴らしい女優さんです。更に印象的だったのは、これこそ (カメラの)寄りがあるから分かると思うんですが、サットンさん自身か役として笑っているのかわからない…豊かな表情は、見どころかなと思っています。
例えば1幕ラスト。タップして踊ったり、ジョークを言ってる時に、本気で笑っている感じが、役者である僕がわからないくらいナチュラルにリアクションされているんです。“何があっても別にいいぜ”っていう、この『エニシング・ゴーズ』のメッセージ通りの表情というか、先ほど言ったオーラとはまた違う、時々そこからはみ出してくる人間らしさや、天真爛漫なちゃめっ気みたいなものが魅力かなと思います。
2025年11月14日(金)~
『インディセント』 ⒸCarol Rosegg
―『インディセント』についてはいかがですか?
正直、僕はミュージカルというよりは音楽劇のように感じました。
その差って何って言われたら非常に難しいんですが、 僕はミュージカルは、基本的には出演者たちが自分たちの気持ちを吐露したり、劇中で音楽が始まり、セリフが芝居の中で歌に変わっていくものが、割とオーソドックスだと思っています。
この作品は、そうではなくて、転換や、何か物事が動いた時に音楽が始まることが多い印象がありました。物語の本筋は基本的には全部セリフで動いていく。そういった意味で、音楽劇だと感じました。
本当ここだけの話、正直最初は僕「これ好きじゃないな」って思ったんですよ。ただ観ていくうちに「なんて素晴らしい作品なんだろう」と変わっていきました。
少ない人間たちで、あれだけの深い、そして長い時間の物語を演じる…そして、その演出の手法も含めて非常に勉強になりました!何よりも人間らしいというか、 演劇という部分にフォーカスをしているが故に、途中のお芝居をしているシーンがまたすごく面白かった。
語るのが難しいですが、語りたくなってしまう作品でした。おすすめです!非常に興味深かったです。

2025年11月28日(金)~
『タイタニック』
― 最後、『タイタニック』についてはどうでしょうか?
この作品は唯一、僕が生で日本で上演されているものを日本語で観たことがある作品ですし、モーリー・イェストンさんとは『NINE』や『ファントム』というミュージカルもやらせて頂きました。公私ともに非常に素晴らしい、偉人と呼んでもいいような人だと思います。
映画版は、ジャックとローズと言う主人公二人の環境や身分の違いを乗り越え、最終的に悲劇ではあるけれど、純愛を貫く二人の物語という部分が印象に残っています。けれど、ミュージカル版は、人間の儚さ、強さ、脆さやタイタニック号に対しての期待や希望、“絶対に沈まない”という確固たる自信や自負を持った製作者たちの姿が描かれています。
最初と最後に同じ歌詞と音楽が出てきますが、それが非常に印象的で、聞こえ方が全く変わってきて、すごく切なくなる、胸が締めつけられるような思いになる…。やはり、頭の部分に誇らしくタイタニックの説明をするあの時間が長ければ長いほど、深ければ深いほど、その後やってくる悲劇がよりその落差で胸をつくというか、しんどい気持ちになります。
そして、何がしんどいって、ぶつかってすぐに沈むわけではなく、そこからの時間があるんです。本来であれば、 悲しみや絶望、困惑が音楽で表現されるようなシーンが割とポップに奏でられて、抜いてくるというか、ちょっと違うテイストで音楽を奏でてくるところがあり、でも最後はやっぱり涙を誘うゴージャスなモーリーならではの胸にそっと寄り添ってくれる音楽という流れも素晴らしいです。
もちろん『タイタニック』って誰もが知っているお話ですが、そこに音楽の力が加わることで、時に儚くも美しくも、そして悲しくも、その感情が際立つそんな部分をモーリーが担ってくれています。
この作品は一番コメディ要素も少ないですし、ドラマとして人間の心情を描いています。最後には、実際に亡くなられた方たちのお名前が並び、それぞれ夫を亡くした人や自分自身が命を失ったであろう人たちが自分の気持ちを吐露するシーンも含めて、胸を締め付けられる作品です。ただモーリーの音楽がその悲しい物語を、ある意味教訓として次の世代に繋げていこうということや、人間のおろかさを折り込んだ作品だと思うので、個人的には、悲しいんですが、ある意味、人って捨てたもんじゃないなってことも感じました。
誰かのために自分が命を落とすとことや、乗り込んでいたバンドの人たちは、最後まで演奏を続けていたことなど。今、喋っているだけでも鳥肌が立つくらい、その勇気と最後まで自分達の職務を全うしようとする姿…。それこそ15歳以下のベルボーイが50人ぐらいいたみたいな話も含めて、とにかく悲劇でしかないんですが、モーリーの音楽がその悲劇を少し柔らげて後世に伝えられる物語にしているところが、魅力かなと思っています。

―今回3つの作品があり、好みが分かれ、それぞれの魅力があると思いますがその中でどれが一番好きですか?
えー!本当に全然違うので。『エニシング・ゴーズ』は知っている作品で、『タイタニック』は正直前々から知り過ぎていたというところがあって。自分の中で新しい感覚を一番もらえたのは『インディセント』。一回しか観てなかったら多分『インディセント』は最下位だったんですが、何回か観る機会があったので、最終的には一番僕が演出も含めて作品として、メッセージ性など、一番考えさせられるのは『インディセント』ですね。圧倒的にこれはもうしょうがないですよね。テーマも、扱っているものも。
ただ難しくするんじゃなくて、コメディ要素を出して、何か面白いってお客様が思う、一回体をほぐしてあげて固まらないようにしてくれるんだけど、結論から言うと、すごく直球のど真ん中を突いてくる作品なんです。演出の手法も含めて、僕はやっぱり『インディセント』に一票かなと思います。
―私も(記者自身も)3作品の中で一番自分では、選ばない作品でしたが心に残りました。
そうですよね。別にこれは観る人が選べばいいとは思いますが、僕個人としての新しい感覚、新しい発想があったのは『インディセント』でした!

撮影:岩田えり
―日本のミュージカルとブロードウェイミュージカルが互いに影響し合えたり、日本のミュージカルがブロードウェイに学べることはありますか?
影響し合えるというよりは、一方的に僕らが学ぶことしかないですね。日本で上演されているミュージカルの多分9割~9割5分が招聘もので、ストーリー、音楽、セリフは全てオリジナルがあるものなんです。
だから、僕らが日本で上演したものをアメリカやフランスのカンパニーが「いやー素晴らしいね」となって、そのアイデアを逆に盗んで帰ることは基本的には無いのかなと思います。オリジナルって結局やっぱり超えられないと僕は思うんですよ。僕らはそれを真似しているだけですから。
そういった意味では学ぶことしかないと思うし、やはり韓国みたいにオリジナルのミュージカルをどんどん作っていかないといけない。だけど、オリジナルを作ろうとした時に起こる障害だったり、過去に失敗している例も含めて、日本はなかなかそこに億劫になって手を出せないジレンマの中にいるんだと思います。
僕個人としては、そこをぶっ壊すプロデューサーや、作り手として、韓国に負けないぞっていう勢いを持てたらいいなと思います。
僕の場合は演じることもそうですし、製作する側、例えばプロデュースや来年の作品は翻訳として入らせていただきます。いわゆるスタッフとして クリエイティブに携わらせて頂く機会も最近は増えてきています。またこれからオリジナルはもちろんですし、海外で非常に人気の高い作品を日本で上演してっていうことにも興味があります。そういった普及活動は是非していきたいなと思っています。

撮影:岩田えり
―ご自身が演じる際や作品づくりで、特に意識していることがあれば教えてください
プロデュースや、ミュージカルを演出させていただく時に大事にしていることは、やはり観終わった後に観たことによって、彼なり彼女の感覚が何か変わったり、再認識できたりすることです。やはり高いチケット代を払って得られるものが何もない、ただただ楽しかったというものよりは、何か考えたり、終わってから一緒に観ている人に対して何か疑問を投げかけて、普段だったら喋らないような内容のことを話してみてほしいですね。

撮影:岩田えり
―ありがとうございます。では、城田さんにとってミュージカルとはなんでしょうか?
難しいですね(笑)。いろんな作品があります、今回も3作品上映されますが全く毛色が違ってそれぞれの魅力があります。色と一 緒で、どの色にもその魅力があって、その色が好きな人もいれば、ちょっと苦手という人もいて…「自分は何色が好きなんだろう?」って見つけられるとても楽しいコンテンツだと思っています。
10年前20年前に比べると日本でも非常に普及し、沢山の方たちが演じられたり、海外のミュージカル映画が日本に入ってきたりなど触れる機会も増えてきました。その中で、多分「私、これは好きだな。」 とか 「私は無理だな。」 とか、少しずつ材料が増えていけばいくほど自分がその中でどれに 魅力を感じるか、惹かれるかっていうのが出てくると思うんです。そういった意味で、やはりミュージカルってすごく幅が広いので、ぜひあまり観たことない方は、映画という形で上映される映画館に足を運んでみて、どう感じるかというものを感じていただきたいですね。
ミュージカルというものは、エンターティンメントの中でとても刺激的で作品によって全く景色が違う、とにかくカラフルな世界なので、いろんな色に触れていただきたいと思うし、心が豊かになるコンテンツだと思います。

撮影:岩田えり
―ありがとうございます。では、最後にファンの皆さんやご覧の皆さんにメッセージをお願いします。
僕が公式アンバサダーを務める〈松竹ブロードウェイシネマ2025秋〉極上の三作品!
全く景色の違うこの三作品あなたはどれが好きですか?是非劇場でお楽しみください!

撮影:岩田えり
(文:あかね渉)
【ヘアメイク】Emiy
【スタイリスト】黒田領
【衣装クレジット】
コート¥122,222/BODYSONG.(TEENY RANCH)、その他スタイリスト私物
TEENY RANCH 03-6812-9341
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-24-4 里見ビル2F
「松竹ブロードウェイシネマ2025秋」
2025年10月31日(金)~「エニシング・ゴーズ」 ⒸTristram Kenton
2025年11月14日(金)~「インディセント」 ⒸCarol Rosegg
2025年11月28日(金)~「タイタニック」
配給:松竹

