堀越涼・渡部豪太・松島庄汰インタビュー

堀越涼(あやめ十八番)演出 CCCreation Presents舞台『近松心中物語』 堀越涼・渡部豪太・松島庄汰インタビュー

堀越涼(あやめ十八番)演出 CCCreation Presents舞台『近松心中物語』 堀越涼・渡部豪太・松島庄汰インタビュー

 
2022年の舞台『沈丁花』、2024年の舞台『白蟻』とリーディング劇『女中たち』など、話題の演劇を次々とプロデュースするCCCreationと演出家・堀越涼(あやめ十八番)のタッグが次に選んだのは、劇作家・秋元松代の名作戯曲『近松心中物語』。
添い遂げるために心中を余儀なくさせられていく2組の男女の物語で、飛脚宿 亀屋の養子・亀屋忠兵衛を演じる渡部豪太と、傘屋の婿養子・傘屋与兵衛を演じる松島庄汰、そして演出を担当する堀越涼が、新しい時代の『近松心中物語』を語り合った。

堀越涼・渡部豪太・松島庄汰インタビュー
左から、渡部豪太、堀越涼、松島庄汰

舞台『近松心中物語』は、10月18日(土)から26日(日)まで、KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉で全13公演が上演される。
秋元松代作『近松心中物語』は、初演が1979年。東宝が秋元松代に「近松門左衛門の心中物作品を、新たな視点から劇化した新作を」と依頼して書き下ろされた、作者初の商業演劇で、蜷川幸雄演出により、帝国劇場や御園座、明治座、日生劇場などのいわゆる大箱で、1000ステージを超える上演回数を誇る。
日本の演劇史に燦然と輝き続ける同作が、CCCreationプロデュース、堀越涼(あやめ十八番)演出での上演が発表されたとき、「令和の今、なぜ元禄期の近松を……」という疑問と同時に違和感を覚えたのが公演ポスターのビジュアルだ。
ダウンタウンによくある壁に乱雑なグラフィティ(落書き)が描かれ、有刺鉄線の向こうに現代の街と空が広がっている――このビジュアルには一体どんなメッセージが秘められているのか?

7月末の初顔合わせに、演出家の堀越涼さん、演者の渡部豪太さん、松島庄汰さんが集合。令和7年の秋に繰り広げられる『近松心中物語』(四幕八場)について、たっぷり語り合った。(以下、3名とも名字で表記、敬称略)

なぜ今、近松の心中物をKAATで上演するのか?

 
堀越 今、“近松流行(ばや)り”なのをご存知ですか。大ヒット作の映画『国宝』の中で『曽根崎心中』が重要なシーンとして描かれています。舞台『沈丁花』に出演した大沢健さんが、遊女お初と心中する徳兵衛を演じていて、もしかしてこれから空前の歌舞伎ブーム、心中物ブームが来るかもしれません。
『近松心中物語』は蜷川幸雄さんが演出を手がけていたことでも有名で、そこに挑戦することはハードルが高いですが、演出家としてはもちろん演ってみたい作品なので、こうして関われることはうれしさ半分、大丈夫だろうか半分(笑)です。

渡部 『近松心中物語』は何度か拝見していて、とても重厚な作品ですし、名だたる名優の方々が演じてこられたので、座組(キャスティング)を聞いたときは、大役をいただいたなと思いました。

松島 堀越さんとは、『沈丁花』、『白蟻』に続いて3作目になりますが、またお声をかけていただけて幸せです。まだ脚本を読んでいないので、今は本当にワクワクしている状態ですが、今回は歌舞伎ぽくはないんですよね?

堀越 そうなんです。原作の『近松心中物語』の大阪言葉の台詞は一切変更なしですが、衣装と美術のみ今の時代に、場所は大阪となります。演技は古典だけど、演出は違う感じにしようと思っています。

渡部 そこは面白いですね。言葉と身体が乖離(かいり)するのは演劇ならではですが、所作はどうするんですか。

堀越 基本的に男性はスーツを着ます。現代劇ですから。

松島 そうなんですか。それなら稽古中に髷(まげ)や着物は着なくていいと。

堀越 でも演技はなるべく古風に演りたい。台詞や時代を超えて、“今”と響き合う心中劇を観てもらいたいなと思っています。

松島 いわゆる「古典の構造」を現代に昇華させて独特な美学を描く、堀越さんの演出は大好きですが、それは今、初めて聞いたので、まだ全く想像できないです。

秋元松代作『近松心中物語』あらすじ
『近松心中物語』は、近松門左衛門による世話物の人形浄瑠璃『冥途の飛脚』をベースに、『緋縮緬(ひじりめん)卯月の紅葉』とその続編『跡追心中卯月の潤色(いろあげ)』を織り交ぜて書かれた戯曲。
飛脚問屋の養子・忠兵衛(渡部豪太)と遊女・梅川(豊田エリー)。傘屋の婿養子・与兵衛(松島庄汰)とその妻・お亀(木﨑ゆりあ)。身分や金に縛られながらも、愛を手放せないふた組の男女。小さな選択が積み重なり、やがて逃れられない運命へと転がり出す。格差、欲、すれ違う心――逃げ場のない現実の中、それぞれの終着点へ向かってゆく。

渡部豪太渡部豪太

 
渡部 2015年に近松作品に着想を得た舞台『GS近松商店』に出演して、大阪の新歌舞伎座で上演しました。劇場の近くに近松門左衛門のお墓がありましたが、マンションとガソリンスタンドの間の細い路地の先に、ひっそりと墓石が建っていて、「すごい場所に建っているな」と手を合わせたのを覚えています。
近松門左衛門の作品は、今ちょうど『冥途の飛脚』を読んでいますが、秋元松代さんの『近松心中物語』も読むのが楽しみです。

松島 堀越さんは、衣装と美術は現代的で、演技様式は古典に寄せるとおっしゃいましたが、公演ポスターがそのイメージの象徴になっているんですね。

堀越 この春に、『近松心中物語』上演のための取材旅行で大阪に行ってきたんですが、飛田新地の周りや大阪の街を見たときに、落書き(グラフィティ)がすごく印象に残りました。今回、今を生きている人たちの感性で作るので、ビジュアルに取り入れたいと思いました。

舞台『近松⼼中物語』
舞台『近松⼼中物語』メインビジュアル

渡部 たまたまですが、地下鉄「動物園前駅」(御堂筋線)近くの銭湯に入って、打ち上げ会場に向かう途中に飛田新地を通ったんですが、あれは異世界ですよね。

堀越 迷い込んじゃったんですか? 本当に『千と千尋の神隠し』みたいに赤い提灯があって、舞台美術の久保田悠人さんともそういう雰囲気を検討しています。

渡部 ああいう失われていく日本の風景を今の人たちに伝える、共有するというのも演劇の醍醐味だと思うので、自分も舞台美術に期待します。

脚本家・堀越涼が感じる『近松心中物語』の台詞の魅力とは

 
松島 堀越さんは脚本も書かれますが、この『近松心中物語』の台詞の魅力を教えてください。

堀越 今、ちょうど、あやめ十八番の新しい脚本を書いているんですが、秋元松代さんが書かれた台詞は、「キレてるな」と思います。もうキレキレですね。作家として、なるべく短い距離で、最短距離で行くのが一番面白い本ということは分かっていますが、どうしても自分で書いていると長くなったり、上演時間を考えたり。
秋元さんの台詞は最短距離どころかショートカットしつつ進んでいくので、その気持ちよさたるや、「半端ねぇな」と思います。秋元大先生に対して半端ねぇというのも失礼ですが、半端ねぇなと思います、正直。
俳優さんも演じていて絶対楽しい本だと思いますが、稽古の最初の読み合わせがまずポイントになると思いますね。

渡部 堀越さんは「古典的な脚本で、演者はスーツを着ている」とおっしゃいましたが、そこは動き出してみて初めて知ることのできる発見になると思います。

松島 堀越さんの演出は面白くて、舞台『白蟻』のときに4人で話しているシーンで急に席替えが始まるんですよ。キャラクターは変わらないのに、役者だけ立ち上がって席替えをするんです。最初、これは何をしているんだろうと思うんですが(笑)、途中からすごくしっくりきて、観ているとその演出が飽きさせない。
堀越さんの演出はそういうことが多いので、「古典的な脚本で、演者はスーツを着ている」というのも変な下心を感じさせません。今回も堀越さんにどう調理されるのか、とても楽しみです。

松島庄汰
松島庄汰

渡部 先日、座・高円寺1であやめ十八番公演の音楽劇『金鶏二番花』を拝見しましたが、すごく面白かったです。劇場に入ってセットを見てワクワクして、これから何が起こるんだろうと。始まってからもお芝居がすごく生き生きとしていて、気持ちよかったです。

堀越 今回の舞台『近松心中物語』は、現代風のセットを非常にコンパクトに作ります。KAAT神奈川芸術劇場の大スタジオはコンパクトな空間ですが、演奏陣を含めた総勢30名がぎゅうぎゅうになって(笑)演ります。“人のエネルギー”をぎゅうぎゅうで表現したいと思っています。

人間の愛の事象と、金銭の呪縛は、今も昔も変わらない

 
渡部 今回、遊女梅川を演じる豊田エリーさんとは初共演ですが、梅川との出会いがひと目惚れなんですよね。でもひと目惚れって曖昧なので、その一瞬でそれが出せたらいいなとすごく思います。……なんか自分、真面目なことしか言ってないですね。

松島 いや、その誠実な感じが、すごく亀屋忠兵衛ですよ。

渡部 お客さんが観て、「あ、忠兵衛が惚れたんだな」、「梅川も惚れたんだな」という関係性を稽古中に豊田さんと作れたらいいなと。

松島 「あ、落ちた」と。

渡部 そうです、そうです。自分は芝居を観ていて、闇に落ちる瞬間とか、逆に闇から光を見出した瞬間とかにゾクゾクっとするので、心が動くそういうモーメントを作りたいですね。

松島 自分の役、傘屋与兵衛は、「すごく面白い役だよ」と聞いていて、「頼りなくてすごくいい人だから、松島君に合ってるんじゃない?」と(笑)。ただ、心中するほど人を愛するわけですから、そこは、お亀役の木﨑ゆりあさんと稽古期間中にしっかり話し合って作っていきたいです。

渡部 自分は豊田さんと、松島さんは木﨑さんと“対の芝居”も多いと思うので、しっかり稽古したいと思います。

「目が飽きない」堀越演出を支える生演奏と振り付けにも注目!

 
松島 今回の劇伴も吉田能さんたちの生演奏で、とても楽しみです。

堀越 やはり芝居の効果として生演奏は強いので今回も吉田能が担当します。松島さんはご存知の通り、吉田は皆さんのお芝居を観て、その場で曲や効果音を作るので、すごく信頼しています。
今回、振り付けをTHE CONVOY SHOWの舘形比呂一さんにお願いしますが、彼も「芝居とコラボしたような振り付けが好きだ」とおっしゃっていて、稽古で一緒に作っていく感じになると思います。

堀越涼
堀越涼

松島 吉田能さんの生演奏は、ラジオの音とかトイレを流す音まで生で奏でるので、耳にも楽しいし、迫力が違いますよね。

堀越 今回の『近松心中物語』は、メインキャストの皆さんのしっかりしたお芝居と、アンサンブル的な美しさ、全員で演じる面白さをたくさん出して、賑やかさやパワーを感じてほしいと思います。

亀屋忠兵衛=渡部豪太と、傘屋与兵衛=松島庄汰からのメッセージ

 
渡部 秋元松代さんが書かれた素晴らしい台詞を、美しいまま鮮度をさらに高めて表現するのと、堀越さんの演出がそこに加わって、とてもエネルギッシュだけど洗練されたお芝居になると思います。
“心中”という、今はあまり使われない言葉ですが、好いたもの同士が死というものを選んでしまう人間の儚さや、どうしてそこに行き着いてしまうのかを表現できたらと思います。言葉では表現できない思いは演劇でこそ表現できると思うので、ぜひご覧ください。

松島 またKAATの大スタジオで皆さんにお会いできます。役者の体温ですら感じられそうなステージで、総勢30名が集まって演劇をすることで、人間のパワーを感じ取ってください。難しいことは考えず、本当に芝居を味わっていただけたらうれしいなと思います。人間の弱さ、愚かさが今の時代にも通じるからこそ歴代の演劇人が競って演じてきたわけで、自分もしっかり勉強して稽古に臨みます。
そういえば、テーマ曲の『それは恋』は、森進一バージョンなんですか。

堀越 それがですね。『それは恋』の歌詞はそのままですが、曲は変えていいということで、吉田能が曲を作ります。今はどうなるか分かりません(笑)。その方が、今の若い方に先入観なく観ていただけるんじゃないかと思っています。

堀越涼・渡部豪太・松島庄汰インタビュー
堀越涼・渡部豪太・松島庄汰インタビュー

本作は10月18日(土)より、KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて上演される。
詳細は公式サイトまで。

(カメラマン:伊藤智美、文:梶井誠)

CCCreation Presents
舞台『近松心中物語』

【作】秋元松代
【演出】堀越涼(あやめ十八番)
【音楽監督】吉田能(あやめ十八番)

【出演】
渡部豪太 豊田エリー
松島庄汰 木﨑ゆりあ
植本純米
霧矢大夢

猪俣三四郎 川田希 井上一馬 三遊亭遊かり 小林あや
田上真里奈 中村元紀 小田伸泰 秋山遊楽 前田隆成
加藤広祐 木村聡太 悦永舞 守屋えみ 中島多羅
竹内麻利菜 牧田優希 雛田みかん 白井もえ コータロー 小川さくら

【演奏】吉田能 福岡丈明 ほか
【振付】舘形比呂一(THE CONVOY SHOW)

2025年10月18日(土)~10月26日(日)/KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉全13公演

公式サイト
https://www.cccreation.co.jp/stage/chikamatsushinjyu/

チケットを探す
https://www.cccreation.co.jp/stage/chikamatsushinjyu/#ticket

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