音が人をつなぐヒューマンストーリー 室龍太主演『ONAIR~この音をキミに~』観劇レビュー
撮影:宮川舞子 ©ニッポン放送音が人をつなぐヒューマンストーリー 室龍太主演『ONAIR~この音をキミに~』観劇レビュー
舞台はとある山奥にある、ほし観河町。
東京からこの町に引っ越してきた桜木真(室龍太)は音響効果を扱う音効マン。音にこだわりを持つ彼は2か月後に閉じてしまう町のラジオ局に勤めることになります。
口癖のように言う言葉は「せっかく出会ったんや」「ほっとかれへん」。
お節介な性格でラジオ局の存続や町民の家庭や人間関係など、様々な問題を解決するべく奔走します。真のラジオ愛や行動力が徐々に周囲に波及していく中、ある出来事が起こります…
脚本・演出はテレビドラマ『99.9 -刑事専門弁護士-』シリーズ、『探偵が早すぎる』などで知られる人気脚本家の宇田学さん。登場人物のそれぞれにスポットを当てながらテンポ良く展開していき、各々の複雑な想いが描かれる中にもクスッと笑える場面もあり。緩急のある展開に引き付けられ、ほし観河町の住民や町の動向から目が離せなくなります。
撮影:宮川舞子 ©ニッポン放送
室龍太の存在感
主演の室龍太さんは求心力がある方だなと登場して数分で感じました。それは役の言動だけではなく、室さん自身の発する明るさや声の温かみが周囲を巻き込んでいくような空気感。真は関わった人には片っ端から世話を焼く周囲から見たら”変わった人”。でもその存在自体が周囲を安心させ、人の心を引き付けて離さない。ラジオ局でも町内でも家庭内でも、同僚に頼られ近所の住民と大いに交流し妹にはとても慕われています。天真爛漫さや人柄が真と室さんとで重なるように見え、まさに真そのものでした!
撮影:宮川舞子 ©ニッポン放送
出演者の魅力的な声
特に印象的だったのは出演者の方々の声。”音”や”ラジオ”がテーマなこともあり、特に声に注目してしまったのですがどの方も声がとても魅力的。
まず室さんのヤンチャさと芯の強さを感じるハツラツとした関西弁が良い!(聞いているだけで元気をもらえるのでずっと聞いていたいくらい笑) 町役場の谷山茜役の新内眞衣さんは真とは真逆でTHE公務員らしい硬めの声。真面目な性格の通り言葉もストレートに伝わってきます。真の妹鈴を演じる羽瀬川なぎさんは透き通った綺麗な声がとても印象的。目が見えなくとも真から”音”で様々なものを見せてもらうことで世界を知り、純粋に育った様子が想像できます。
撮影:宮川舞子 ©ニッポン放送
撮影:宮川舞子 ©ニッポン放送
上島明人役の小西成弥さんはハリのある声が魅力。警戒心高めな不愛想な男子高校生で、心の壁を作りがちなのには理由が…。酒浸りの独り暮らしの老人、吉田のじいさんを演じる螢雪次朗さんは味わいのある、でもどこか寂し気な声。普段は人と関わろうとせず家に籠りっきりですが真たちに影響され…?個人的に好きなのは「急になんだよ」という台詞。(町民の人間関係が動き出すポイントで注目の場面です!) 自治会長の高橋夫婦を演じる植村好宏さん、谷野まりえさんは強めの方言で繰り広げる夫婦の掛け合いが見どころ。真の妹を「りんちゃーん」と呼びかける声もなんだか孫を呼んでいるようでほっこり。そしてラジオ局でパーソナリティーを務める団六子役seicoさんの特徴的なチャーミングな声も外せません…!
ここでは書ききれないのですが皆さんとても個性的且つ素敵な声で、感情の機微が乗った言葉に何度も胸を動かされました。
撮影:宮川舞子 ©ニッポン放送
人とのつながり
本作は2020年に上演を予定しており、2年の時を経て今回待望の上演となります。依然としてコロナ禍と言える中、2年経った今でもなお刺さるメッセージがあり今一度大切なものを見つめ直したい―。
つながることは簡単ではないけれど知らない世界、遠くにいる人、言葉にできない想い。
”音”を通じてなら伝えることができ、”つながる”ことができる。
ほし観河町の人々を見守る数時間は私たちの心を温め、解きほぐしてくれます。
勇気を与えてくれる真の存在、ほし観河町の温かみ、音やラジオの力。
今多くの人に届いて欲しい物語です!
公演の詳細は公式サイトで。
https://konooto.jp/
(文:真来こはる)
『ON AIR ~この音をキミに~』
【原案】田中渉
【作・演出】宇田学
【出演】
室龍太、新内眞衣、小西成弥、羽瀬川なぎ / 植村好宏、笠井隆介、森下ひさえ、seico、谷野まりえ、伊藤駿九郎、古賀柚奈 / 螢雪次朗
2022年7月28日(木)~8月7日(日)/東京・新国立劇場 小劇場
2022年8月13日(土)・14日(日)/京都・京都劇場
公式サイト
https://konooto.jp/
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