
シェイクスピアの名作が現代的な価値観で蘇る!ミュージカル「インサイド・ウィリアム」観劇レビュー
シェイクスピアの物語を織り交ぜた、ミュージカル「インサイド・ウィリアム」ついに開幕!
ミュージカル「インサイド・ウィリアム」は、2021年と2023年に、韓国・ソウルの演劇の街・テハンノで上演され大好評を博しました。そんな大人気ミュージカルが、満を持して2025年、日本でも上演されることに!
誰もが知っているウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」や「ハムレット」を軸に、笑いと奇想天外な想像で、現代の価値観に重ねながら描かれます。
取材会の様子について
登壇したのは、ゲネプロに出演した平野良さん、橋本祥平さん、岩田陽葵さん、宮島優心さんの4名と、鍵本輝さん、野嵜豊さん、舞羽美海さん、吉宮瑠織さん、大澤駿弥さん、磯野亨さんです。
和気藹々とした空気感の中で行われた記者会見。おひとりずつのコメントをご紹介します。
作品への意気込みについて
平野良さん
「組み合わせがたくさんあることから一公演一公演が一期一会だと思っています。なるべく多くの方に足を運んでいただくために、精一杯頑張ってきましたし、今日の初日からも頑張る所存です。」とコメント。さらに「劇場を出ると、お高いお皿と茶器がたくさんあると思いますけれど、それらに負けない価値がある作品にしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします!」とユーモアを交えて、意気込みを語りました。
鍵本輝さん
「シェイクスピアが生きていた時代の話にはなるんですけれども、そこから時を経て今の時代にも重なる部分がすごく多いなという印象があります。(今は)人の評価やレビュー、SNSのコメントとか、いろんな人の声や目を気にして、やりたい自分を表現できない時代になっているんじゃないかなと思っていて。そういうことを何も考えなくていいんだよ、生きたいように生きていいよ、望むように進んでいいよというものが、この作品を通して観に来られたお客様に伝わったらいいなと思い、みんな切磋琢磨しながら稽古頑張ってきた」と物語のメッセージ性について言及。
最後に「千秋楽までよろしくお願いします!」とコメントしました。
ダブル・トリプルキャストの難しさと、楽しかったこと、新しく発見したこと
橋本祥平さん
「(海外はキャスト同士がバチバチだと聞くので)どんなスタンスなんだろう?」と思っていたと話した橋本さん。しかし今回は「一つの役をみんなで作り上げられた」と稽古場を回顧し「日本の演劇の良い空間の中で作れたかなと感じました」とコメントしました。
岩田陽葵さん
「同じ役でも、同じセリフでも、言う人によってメッセージの伝え方や受け取る気持ち、その人から出るエネルギーが、こんなにさまざまなんだなと稽古の時からすごく楽しかった」と笑顔。「毎公演キャストが変わるので、毎回新鮮な気持ちで私たちも楽しみながら、お客さまにもそれが伝染して、みんなで楽しい空間になれたら」とコメントしました。
宮島優心さん
トリプルキャストでの公演が初めての宮島さんは「(トリプルキャストの大澤さん・磯野さんと)ハムレットをこうやって作っていこうとか、ここはこういう気持ちなんじゃないかとかを一緒に考えたり話し合ったりすることが、すごく楽しかった」とコメント。さらに「毎日稽古場に来る人が違うので、楽しい気持ちで稽古場にいた」とも話しており、充実した稽古期間であった様子も垣間見えました。
舞羽美海さん
「とにかくお稽古中は楽しくて、相談できるし、(アドバイスや指摘などで)忘れたことも聞いていてくれたりして、ずっと3人で作っていたかなと思う」「同じセリフなのに、出すエネルギーとか見え方が全然違うので、それもすごく勉強になった」とトリプルキャストならではのメリットに言及。一方で、「(組み合わせが多すぎて)なかなかお稽古ができなかった方もいる」と大変だった面も挙げつつ、「(キャストが変わるのが)毎回新鮮で楽しかった」と笑顔を見せました。
大澤駿弥さん
「稽古期間中、大変な事しかなかったなと。」「右も左もわからない状態で、エリート高校に入った子みたいな感覚でやらせていただいて」と、初ミュージカルに緊張していた様子。新たなジャンルに挑戦したことで「次の作品や、自分の本業であるアーティストに活きるものがいっぱい得られた」と、今後へのより高い期待を感じさせるコメントもありました。
吉宮瑠織さん
始めは「(トリプルキャストの岩田さん・舞羽さんに対し)“すごい先輩だ…!” “お二人と並んで大丈夫かな”と不安だった」という吉宮さん。しかし、実際に稽古が始まると「変更点を3人で共有したり、お菓子とか喉に良い飴とか(をくれたり)、すごく優しくて。」と和気藹々とした稽古期間であったことを報告。「3人で作り上げたジュリエットをここからの期間、大切に演じたいなと思います」とまっすぐな眼差しで語りました。
野嵜豊さん
「(過去に共演したことがあった橋本さんについて)同じロミオという役をダブルキャストで演じられることをすごく光栄だなと思いつつ、稽古中からすごく勉強していました。本当に貴重な機会をいただけて感謝です」と、隣に立つ橋本さんに向かって、溢れ出る想いをまっすぐに語りました。
磯野亨さん
「困ったこととか“ここってどういう感情なんだろう?”というところも、3人で集まって話すこともたくさんあって、その経験も初めてで楽しかった」とトリプルキャストの面白さについてコメント。「本番期間中に2日間休みが空くのも初めてなので、良い緊張感を持って最後まで走れるのかな」と話しました。
各出演者について
まずは、キャストについて詳しくご紹介します。
平野良さん
シェイクスピア役を演じたのは平野さん。登場時の劇場を掌握する空気感に「面白い物語が始まる!」という高揚感がありました。
しかし物語が続いていくにつれ、だんだんコミカルな部分も見え始めます。乳母や父親など、年齢も性別も超えて複数の役を演じていますが、それぞれ個性が強くてユーモアがありました。
シェイクスピアが物語作りに苦戦して、葛藤している姿や、自身が生み出したキャラクターたちが暴走する姿を見て頭を抱える姿も面白く、ゲネプロでも何度も笑いが起きるほど!まさしく舞台を引っ張っていました!
橋本祥平さん
ロミオ役を演じたのは橋本さん。誰もが知る名作「ロミオとジュリエット」のロミオなので、「ロミオといえばこう」という固定概念が生まれがちですが、あくまでも「インサイド ウイリアム」のロミオとして、新しいキャラクター像を見事に体現。
はじめは、バルコニーの上と下で愛を囁く名場面を、ロミオらしく演じていましたが、徐々にキャラクターが崩壊!
ジュリエットが振り向いてくれない悲しさを、顔を思いっきり崩して表現する潔さが、後々まで続くロミオの一生懸命だけれどどこか面白いキャラクター像と一貫していました。
岩田春葵さん
ジュリエット役を演じたのは岩田さん。登場からtheヒロインの初々しさやフレッシュさ全開で、ジュリエットそのものでした。登場するたびに目を引く可憐さと、意志の強さを感じさせる言い回しが印象的です。
個人的には体の使い方に魅力を感じました。ディズニープリンセスのように、軽やかで優雅な振る舞いと、弾けるような笑顔。アイドル出身者ならではの愛嬌が、ジュリエットと相性抜群でした。
宮島優心さん
ハムレットを演じたのは宮島さん。復讐に燃える青年の強さを感じさせる“目”のお芝居が印象的です。自分が本当に大切にしたいことに気がついた後の、穏やかな空気感との使い分けも絶妙!
個人的には、本業を活かした“歌”で言葉を伝える力が強い方だと感じました。
繊細な声色とパンチのある歌声を自在に使い分け、歌詞まで明確に届ける技術力の高さに脱帽。本作のミュージカルとしてのクオリティを、より高いものにしていると感じました。
演出の面白さ
本作の面白さのひとつが演出です。舞台装置が大きく変化するわけではないものの、スポットライトや小道具、音響、役者の芝居によって、場面がコロコロと変わっているような感覚を味わえます。
また、ゲネプロを行った三越劇場は歴史ある建物ゆえ、重厚感があり、まるで劇場全体がシェイクスピアの世界のもののようでした。
作品のメッセージ
シェイクスピアは、小説を書き始めたとき「生きるか死ぬか」に重きを置いていましたが、やがて「どう生きるか」が大切であると気がつきます。
“特別”にこだわりすぎる必要はなく、ただ自分が好きなものを好きと言い、大切なものを抱きしめて生きることに価値がある…シェイクスピア作品を軸とした作品でありながら、メッセージは非常に現代的です。
ハムレットやジュリエットが、物語の主役という立場を捨てて、心を大切に生きようともがく姿を「眩しい」と感じたのは、私自身がメッセージを強く受け取ったからでしょう。
舞台に登場するのはたった4人ですが、そう感じさせない熱量で場面を埋め、笑いと感動を巻き起こす本作。ダブルキャスト、トリプルキャストで構成されていて、毎回違う組み合わせで上演されるため、何度見ても新鮮に楽しめる作品です。
トリプルキャスト・ダブルキャストで生まれる化学反応をぜひ劇場で!
本作は3月23日(日)まで三越劇場にて上演されています。
詳細は公式サイトで。
https://inside-william.com/
※写真提供
Ⓒ『ミュージカルインサイド・ウィリアム』製作委員会
Book & Lyrics by Kim Han Sol 김한솔 キム・ハンソル
Music & Arrangement by Kim Chee Young 김치영 キム・チヨン
Original Production by The Best Plays Inc. ㈜연극열전 (株)演劇列伝
(文:山本萌絵)
ミュージカル「インサイド・ウィリアム」
【作・作詞】キム・ハンソル
【作曲・編曲】キム・チヨン
【製作】(株)演劇列伝
日本版スタッフ
【日本語翻訳/訳詞】安田佑子
【日本版台本/演出】西森英行
【音楽監督】宮﨑誠
【出演】平野良/鍵本輝(Lead)
橋本祥平/野嵜豊
岩田陽葵/舞羽美海/吉宮瑠織
宮島優心(ORβIT)/大澤駿弥(ORβIT)/磯野亨