2017.10.10

かけひきと恋とたくらみは甘い囁き 玉木宏×鈴木京香 舞台「危険な関係」 観劇レビュー



舞台「危険な関係」玉木宏、鈴木京香
舞台「危険な関係」玉木宏、鈴木京香 撮影:細野晋司
 

かけひきと恋とたくらみは甘い囁き 玉木宏×鈴木京香 舞台「危険な関係」 観劇レビュー

 
7日にBunkamuraシアターコクーンで上演された「危険な関係」のゲネプロを観劇してきました。

「危険な関係」は、もともと1782年にフランスの作家ラクロによって書かれた作品で、舞台の戯曲としては1986年にミュージカル『サンセット大通り』やキーラ・ナイトレイ出演の映画『つぐない』などの脚本を手がけたクリストファー・ハンプトンにより戯曲化されたものが今回の上演バージョンです。日本では1988年にデヴィッド・ルヴォー演出、麻実れい主演で上演され、1993年にも再演されています。舞台のほかにもフランスやアメリカ、韓流でも時代やキャラクターの設定を置き換えて映画化されていたり、宝塚でも「仮面のロマネスク」として今年の春にも花組で上演されたばかりの作品です。

 
舞台「危険な関係」千葉雄大、鈴木京香 撮影:細野晋司
舞台「危険な関係」千葉雄大、鈴木京香 撮影:細野晋司

まず前提として、現代日本と違ってこの時代の「既婚者」のカードとして、恋愛に対する制約が一切ないということ。既婚者の恋愛は不倫ではなく人間を駒としたゲームで、もはや勝つか負けるかのギャンブルと表現したほうがふさわしいぐらい。

舞台の幕が開いてそこに広がるのは18世紀末のパリのメルトゥイユ侯爵夫人(鈴木京香)の館
・・・なのですが、ガラス張りの天井の高い部屋、コンクリート色の柱、襖を思わせる白い引き戸などおしゃれな現代日本建築を思わせる空間。
衣装も女性陣は和服を彷彿とさせる袷や帯のようなベルト付きのドレス、男性陣の衣装も召使いに至るまでほぼみな「襟」がないデザイン。シンプルなラインながらも華やかさも忘れていない衣装も見どころの1つです。

 
舞台「危険な関係」鈴木京香、高橋惠子 撮影:細野晋司
舞台「危険な関係」鈴木京香、高橋惠子 撮影:細野晋司

特に女性陣の衣装はそのキャラクターが衣装からもより伝わります。ゲームの仕掛け人・メルトゥイユ侯爵夫人は胸元と膝下をあだっぽく見せつけ、貞淑なトゥルベル夫人はシンプルなくるぶし丈のフィッシュテールのワンピース、修道院から出てきたばかりの前半のセシルは砂糖菓子のように甘い可愛らしい衣装です。

今作は美術と衣装は同じジョン・ボウサー(ロンドンパラリンピックの開会式などを手がけた)が担当しているからこそ世界観やストーリー、人間模様に対してビジュアル面からもすっと一本軸が見える印象です。最初のほうではセシルが「襟」のある服を着ているのですが後半では…?

貴族社会のストーリーということで衣装の着こなしだけではなく「誰がどのように衣装を扱い、それがどう変わっていくか」という小道具としての扱いにもご注目。一言セリフを発するより、その動きの方が雄弁に物語っています。

 
舞台「危険な関係」玉木宏、野々すみ花 撮影:細野晋司
舞台「危険な関係」玉木宏、野々すみ花 撮影:細野晋司

そして、今作は小説に忠実バージョンありアレンジバージョンありということは、たとえ外枠の設定を変えたとしてもそこに描かれている人間同士の駆け引きや心理描写が不変である事の証左。

たとえ衣装・美術が現代的で、現代と倫理観が全く異なるものであっても若い純情な子供たちが恋の病を患っている様子、大人が表からは見えない顔の下に隠れてとめどない駆け引きを、騙し合いをしている人間模様は今も昔も変わりません。子爵のはかりごと、侯爵夫人のたくらみ。この2人の戯れというにはあまりにも大げさすぎる気まぐれなゲーム。彼らの周囲の人たちに言う言葉、当人たちの秘密、囁く言葉、さてどこがどこまで本当で、本心で、嘘で、騙し合いなのか。

ヴァルモン子爵(玉木宏)の全く芝居がかっていない自然体な印象なのに、今まさに企み事の相手として狙っているトゥルベル夫人を淡々と翻弄し、話している相手、純粋で登場しただけで若さゆえの清涼感が溢れている対照的なダンスニー(千葉雄大)やセシル、高級娼婦のエミリーをふっと絡め取ってしまうその存在感。
侯爵夫人は鈴を転がすような甘い声でアドバイスを求めてくるものたちに「事実を述べる」。ふたりとも、そこには正義・倫理・道徳なんて存在せず、ただ享楽的・退廃的な世界に、もちろん彼らは意図しているけれど自然と周りを巻き込んでしまう。大げさな芝居が必要なのではなく、それは全てが日常の延長線上なのです。恐ろしい事に!

 
舞台「危険な関係」玉木宏、千葉雄大 撮影:細野晋司
舞台「危険な関係」玉木宏、千葉雄大 撮影:細野晋司

子爵も侯爵夫人も幕が降りて冷静になって考えれば下衆の極みで現代的な基準に照らすと共感の余地はもはや無し・・・・なのですが、この戯曲は「危険な」関係。そんな基準もナンセンスだし、終わったあとに板の上の人たちに「してやられた!」と我にかえっている段階で、私たちも共犯者。客席から「危険な関係」の覗き見をしているのですから。

毒は甘くて苦いと言いますが、もしかしたら、たとえ嘘であっても甘い言葉で騙されていたままのほうが幸せなのかも。

そんな錯覚を覚えてしまう作品です。

 
このレビューを書いたのは

藤田侑加
兵庫県神戸市出身。武蔵野美術大学で舞台美術を専攻後、卒業後演劇の制作として活動を開始。現在はフリーで演劇の企画・広報・制作から海外の演劇祭などにも参画中。
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公演情報

舞台「危険な関係」

【作】クリストファー・ハンプトン
【演出】リチャード・トワイマン
【出演】玉木宏 鈴木京香 野々すみ花 千葉雄大 青山美郷 佐藤永典 土井ケイト 新橋耐子 高橋惠子 他

2017年10月8日(日)~10月31日(火)/東京・Bunkamuraシアターコクーン
2017年11月9日(木)~11月14日(火)/大阪・森ノ宮ピロティホール

公式サイト
舞台「危険な関係」

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