恋の魔法をその眼のフィルムに焼き付けて! ミュージカル「パジャマゲーム」観劇レビュー
ミュージカル「パジャマゲーム」舞台写真 撮影:花井智子恋の魔法をその眼のフィルムに焼き付けて! ミュージカル「パジャマゲーム」観劇レビュー
1954年に初演、1955年トニー賞ミュージカル部門を受賞したミュージカル『パジャマ・ゲーム』の 公演を見てきました。
2006年にもリバイバルで上演されこちらでもトニー賞を受賞するという賞レースでも有名どころ、そしてミュージカルの振り付けといえば『シカゴ』『スイートチャリティー』などで知られるボブ・フォッシーの出世作というのに実はこれが日本初演!意外すぎる!
ストーリーとしては、
1954年のアメリカ・アイオワ州(南部)が舞台。周囲の工場が次々と給料アップを果たす中、スリープタイト社のパジャマ工場でも労働組合が立ち上がっていた。組合の中心はベイブ・ウィリアムス(北翔海莉)と組合委員長プレッツ(上口耕平)。彼女達は時給7セント半の賃上げを求め、奮闘する毎日を送っている。
そんな中、社長ハスラー(佐山陽規)が雇った新工場長のシド・ソローキン(新納慎也)は若くてハンサム。女子社員の間では、お昼休みも右腕チャーリー(広瀬友祐)を連れて一生懸命働く彼の噂で持ちきりだった。
工場のタイムキーパー ハインズ(栗原英雄)は「もしや自分の恋人も…」と社長秘書である恋人グラディス(大塚千弘)の事が気がかりでしょうがない。シドの秘書メイベル(阿知波悟美)はそんなハインズを優しく諭し、新工場長は上手くやっていけるかと思えたのだが、反抗的な従業員との間でトラブル発生!駆けつけた労働組合と工場長、相対する立場のベイブとシドが運命的に出会う。
一目見た瞬間から惹かれあう二人だが、ベイブは自分の立場を優先するあまり、彼の誘いにつれない素振りをしてしまうのだった…。
・・・と、あらすじからして王道です。しかし王道、さすが王道!最初の最初からメインキャスト・アンサンブル全員が歌・ダンス・芝居の全て3拍子揃ってかっこいい!
まず開場アナウンスから観客をお客さんではなく「スリープタイト社の従業員」としてその世界に引き込んで離しません。そして普通の額縁舞台なのですが、客席降りがあるので、実際の通路に役者さんたちが通ります。通路すら舞台の一部です。完全に観客巻き込み型舞台です。
そしてど直球のバリバリの王道ミュージカル新納慎也さん演じるシドの王道2枚目ぶりに恋に落ちない人がいるであろうか、いや、いない。まさに王子様(注※工場長)かっこよすぎて悶死ものです。
専科出身で星組トップスターとしてかっこいい男役をずっと演じていた北翔海莉さん演じるベイブの男勝りながらも恋する一人の女性であるといういじらしさに愛おしさを感じない人がいるであろうか、いや、いない。いやもうもどかしいし頑張って!!となるし、ああこういう運命の人に出会って恋してでも・・・という王道すぎるほど王道なのに一切飽きないどころか前のめりで見てしまうのは演出トム・サザーランドの魔法!
ベイブとシドの周りの工場メンバーの人間模様も面白い。イケメンの登場に心穏やかではない社員、経営者側の社長、秘書たち、工場の労働者仲間たち。恋してるのは二人だけではなくて、みんなドキドキハラハラ。その気持ちわかるわー、とみんな誰かに感情移入して見てしまうストーリーです。
見た目も一切飽きさせません。基本的には工場の作業場や執務室などがベースになっているのですが、シーン転換で出てくるモチーフも松井るみさんによるパジャマをモチーフにした粋な舞台美術がチラリホラリ。ピクニックのシーンなど背景にもご注目です。
・こちらはゲネプロを収録したダイジェスト動画です。
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そして女性陣の衣装も50年代のカラフルな可愛い衣装がいっぱい。特にグラディスは社長秘書ということもあり出るシーンごとに衣装替えがあってちょっとしたファッションショーを見ているようです。アンサンブルのひとりひとりに至るまで、全部違った衣装を着ているのでこれまた性格も反映されているようです。
振り付けもフォッシースタイルのナンバー「スチーム・ヒート」だけではなくダンスシーンではない普通の演技のシーンの動きも全てがかっこいい。ミュージカルを苦手とする人たちが「突然歌い出すし、踊り出すからちょっと・・・」とよくこういう意見を聞きますが、ストーリーの中に溶け込んでいるので違和感なし。だって、踊りだしたくなる気分になるハッピーなお話ですから。また目だけではなく耳も飽きさせません。伴奏もオーケストラによる生演奏と贅沢なことこの上なし。
・こちらは稽古場で披露された「スチーム・ヒート」の動画。かっこいい!
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ミュージカルの楽しいところが全部詰まった『パジャマゲーム』!!
恋の魔法にかけられる時間を過ごすのは、たのしいものです。
(文:藤田侑加)
ミュージカル・コメディ「パジャマゲーム」
【原作】リチャード・ビッセル
【脚本】ジョージ・アボット、リチャード・ビッセル
【作詞・作曲】リチャード・アドラー、ジュリー・ロス
【翻訳・訳詞】高橋知伽江
【演出】トム・サザーランド
【振付】ニック・ウィンストン
【出演】
北翔海莉、新納慎也、大塚千弘、上口耕平、広瀬友祐、阿知波悟美、佐山陽規、栗原英雄 ほか
2017/9/25(月)~10/15(日)/東京・日本青年館ホール
2017/10/19(木)~10/29(日)/大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
公式サイト
ミュージカル・コメディ「パジャマゲーム」