ミュージカル「レディ・ベス」花總まり

女王誕生の瞬間に思わず跪きたくなる! ミュージカル「レディ・ベス」観劇レビュー

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3年半の時を経て、ミュージカル『レディ・ベス』がパワーアップ、そしてブラッシュアップされ帝国劇場に帰ってきました!
作詞・作曲は『エリザベート』『モーツァルト!』などのウィーンミュージカルを代表するゴールデンコンビ、ミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイ! そして日本ミュージカル界のヒットメーカー小池修一郎氏が演出した『レディ・ベス』は2014年に世界初演。きっとみなさまも、なにより私が!待ち望んでいた再演が実現となりました!

本作は英国の女王エリザベス1世を主人公にした物語。不遇な少女時代から、波乱の運命を乗り越えて女王として即位するまでが描かれています。
メインキャストは初演オリジナルキャストが続投となり、この3年半の間に人気、実力共にさらに増した俳優陣で再び観ることができるのはなんとも贅沢です。

※写真はいろいろな組み合わせですが、このレビューは初日組キャストについて書いています。

ミュージカル「レディ・ベス」花總まり・石川禅・涼風真世・山口祐一郎
ミュージカル「レディ・ベス」花總まり・石川禅・涼風真世・山口祐一郎

初演とまず大きく変わったのは、冒頭にロジャー・アスカム役(ベスの家庭教師で占星家)の山口祐一郎さんが歌うプロローグの場面。
初演はイギリスの歴史や情勢、主人公ベスと父親のヘンリー8世、異母姉のメアリーとの関係性などが映像で語られましたが、今回ではヘンリー8世、メアリーの母キャサリン、ベスの母アン、そしてベス、メアリーそれぞれの子供時代を演じる子役も登場し、“芝居”で見せる形式に。そのことで歴史や登場人物の背景がぐっとわかりやすくなり、敵対する姉妹関係の構図がより鮮明になった印象を受けました。

ミュージカル「レディ・ベス」 平野 綾・加藤和樹
ミュージカル「レディ・ベス」 平野 綾・加藤和樹

主人公ベス(エリザベス1世)を演じる花總まりさんは、本作の初演で初めて帝国劇場で主演を務められましたが、その翌年、翌々年2年続けて『エリザベート』のタイトルロールを演じ、今やすっかり帝国劇場の真ん中に立つ姿が見慣れた光景に。今の日本演劇界でプリンセスを演じたら右に出る者はいない、というくらい、“ロイヤル”な雰囲気がピタリとハマります。

初演時と比べて落ち着いた色合いになったピンクのドレスを着て登場する姿には、かわいらしさの中に凛とした気高さが。
前回より衣装もマイナーチェンジしており、とりわけベスの後ろに大きくスカートが膨らむ型のドレスは印象的です。様々なシーンでベスの豪華なドレス姿が堪能できるのも今作の魅力のひとつ。ラストの戴冠式で着るエリザベスカラーが目を引く黄金のドレスは必見です!

ミュージカル「レディ・ベス」花總まり・山崎育三郎
ミュージカル「レディ・ベス」花總まり・山崎育三郎

ベスが恋する吟遊詩人、ロビン・ブレイクを演じる山崎育三郎さんは約一年ぶりの舞台出演。最近は精力的にドラマに出演されていましたが、久しぶりにホームへ復帰となり、その甘く伸びやかな歌声と軽やかな身のこなしに改めて“ミュージカルスター、山崎育三郎”の煌きを感じました。
ロビンはこの作品の中で唯一架空の人物であり、自分自身を“流れ者”と呼び、アーティストという掴みどころのない役柄。自由の象徴にも見え、どこかフェアリーな存在です。今回、前半ではより山崎ロビンのポップさ、コミカルさが増した印象を受けました。そして初演をご覧になられた方、安心してください!初演時話題になった“ターザン”場面も健在です。

ベスとロビンの出会いや恋模様も前半はコミカルに描かれており、二人のラブシーンはまるで古き良き少女漫画を見ているかのよう。
ロビンがベスを男装させ街へ繰り出すシーンでは、ロビンが「男らしさ」をベスにレクチャーするのですが、必死にロビンの「男らしさ」を真似をするベスがなんともかわいらしく、二人の距離が一気に縮まる、愉しい場面となっているのでぜひ注目してみてください。

ミュージカル「レディ・ベス」 平野 綾・吉沢梨絵
ミュージカル「レディ・ベス」 平野 綾・吉沢梨絵

ベスを敵視している異母姉のメアリー・チューダー(現英国女王)を演じる未来優希さんのパワフルな歌声は、ロック調の楽曲とも相まって非常に力強いナンバーで聞きごたえたっぷり。メアリーは権力を持つ“強さ”が前面に出されたキャラクターですが、後半では一人の女性としての“弱さ”も描かれていて、今回の再演版ではよりメアリーの孤独が伝わってきました。
ベスとの「和解」へ繋がるシーンでは、二人が抑圧されてきた者同士の哀しみや孤独を分かち合い、手を取り合う姿に思わず涙がこみ上げてきてしまいました。

女性は子供の頃から社会で“容姿”や“女としての技量”をとかく「比べられる」ことが多く、そこで傷ついたり、神経を擦り減らしてしまうようなことがあると思うのですが、実はメアリーは(ベスよりも)女性が共感できるポイントがたくさんあるキャラクターなのだ、と再演を観て気付かされました。
唯一の心の拠り所である、父親のヘンリー8世の肖像画を一人見つめるメアリーの姿が切なく、印象に残りました。

時にベスのピンチを救い、奔放さと頭の切れの良さが魅力のスペイン王子、フェリペ役を演じる平方元基さんは、よりポーカーフェイスが際立った王子に。ビリヤード台に乗って華やかに登場するシーンは圧巻です。スペイン大使のシモン・ルナールを演じる吉野圭吾さんとのやり取りも色気があって愉しい。一幕の最後に客席と向かい合う形で登場人物が一列に並ぶシーンがあるのですが、そこでニヤリと不敵な笑みを浮かべる表情にゾクッときてしまいました。

ミュージカル「レディ・ベス」古川雄大・吉野圭吾
ミュージカル「レディ・ベス」古川雄大・吉野圭吾

物語は後半へ進むにつれ、シリアスな色が濃くなっていき、ベスも「大人」へと変貌していくこととなります。
無実の罪で投獄されたベスは、恨んできた亡き母、アン・ブーリンと向き合い、自身の状況を重ね合わせ、母を許し受容していきます。そして、何もかも捨てロビンとの恋愛に生き女性としての幸せを選ぶのか、一国の女王として生きるのか、苦渋の選択に悩みながら「生き方」を決断します。

再演では終盤にベスとロビンのデュエット、ベスのソロの2曲が新たに加わっていましたが、どちらも“決断”や“決意”を歌ったナンバーとなっていました。
ラスト、まさに“階段を登る”ベス(花總まり)の後ろ姿には、ベスが背負う“責任”と女王としての“神々しさ”が宿っており、思わず客席で跪きそうに。「晴れやかな日」という壮大なナンバーと共に、一国の新しい女王の誕生に居合わせたかのような、祝祭的な感情を味わうことができました。

ミュージカル「レディ・ベス」 平野 綾
ミュージカル「レディ・ベス」 平野 綾

私は1階席で観させて頂いたのですが、2階席から観るのもステキかも。天文時計がモチーフになっている回転舞台に、細やかな光の粒が降り注いだり、ステンドグラスが写しだされたりと、きっと美しい舞台装置と照明の魅力を存分に味わって頂けると思います。

(文:古内かほ

公演情報

ミュージカル「レディ・ベス」

脚本 / 歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽 / 編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出 / 訳詞 / 修辞: 小池修一郎

出演:
花總まり 平野 綾 山崎育三郎 加藤和樹
未来優希 吉沢梨絵 平方元基 古川雄大
和音美桜 吉野圭吾 石川禅
涼風真世 山口祐一郎

大谷美智浩 中山 昇 加藤潤一 寺元健一郎 石川新太
朝隈濯朗 石川 剛 榎本成志 奥山 寛 川口大地 黒沼 亮 後藤晋彦 杉山有大 武内 耕
田中秀哉 福永悠二 港 幸樹 山名孝幸 Christopher
秋園美緒 池谷祐子 石原絵理 樺島麻美 島田 彩 真記子 安岡千夏 山田裕美子 吉田萌美
斉藤栄万 山田樺音 石倉 雫 桑原愛佳

2017年10月8日(日)~11月18日(土)/東京・帝国劇場

公式サイト
ミュージカル「レディ・ベス」

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