モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.

オペラと能楽を絶妙に融合すると・・・なぜか敷居が低くなって楽しい! モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』観劇レビュー

モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.オペラと能楽を絶妙に融合すると・・・なぜか敷居が低くなって楽しい! モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』観劇レビュー

 
モンドパラレッロ歌劇団は「愛と平和」「国際文化交流」「ジェンダー平等」をビジョンに掲げ、2018年6月に創立。「MondoParallelo」とは男と女、正と邪、あの世とこの世など相対する2つの時空間を行き交うパラレルワールドという意味とのこと。テノールとソプラノの両方の声を行き来しながら歌えるというマリアセレンを歌劇団団長として人気を博しています。

イタリア語でオリジナル歌曲を作り、オペラ歌手が歌うという「歌劇団」なわけですが、このモンドパラレッロ歌劇団の公演が、なぜか能舞台で行われる(!?)ということで、東中野と中野坂上の間にある梅若能楽学院会館に観に行ってきました!

舞台がこれから始まるという5分前くらいに、本作の出演者であり、狂言指導もされている小笠原由祠さん(能楽狂言方和泉流 重要無形文化財保持者総合認定)が能舞台自体の解説が。橋掛り(はしがかり)という部分は、「あの世とこの世の架け橋になっているんです」とか、入り口の幕の色の意味、舞台の四方に立っている柱の意味などをにこやかな語り口と、いい声で教えてくださいまして、「ほほう、なるほど」と、ちょっと賢くなったようないい気分にさせてもらいました。いかにも おごそかな能舞台にびびっていた私にとってはありがたい演出。

モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.
モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.

そしていよいよ開幕。さっき教わったばかりの橋掛り(はしがかり)から、花魁道中がゆっくりと登場! 能舞台の雰囲気にとても映えて華やかです。と、ここまでは超和風な演出なのですが、演奏されているのは「ボレロ」なんです。「ボレロ」というとシルヴィ・ギエムさんのバレエが思い出されますが、花魁道中ともとてもよく合います。ぽかーんと口を開けて観てしまいました。

そして舞台上に入場した花魁たちが今度はオペラ「カルメン」に出てくる有名な「ハバネラ」を歌い出します。あんまりオペラに詳しくない僕でも知っているくらい有名な曲でとても素敵。この辺から「歌劇団」の本領を発揮して、オペラのオムニバス公演になってくるわけです。

かと思ったら、次は「乾杯の歌」。これもオペラ「椿姫」からの曲なんですが、楼主の忘八十兵衛が観客に「乾杯をしましょう。簡単ですから、みんなでやりましょう!」と話しかけてくるので、一気に雰囲気が柔らかくなって、またガラッと雰囲気が変わるのです。マリアセレンさんも近くにやってきて楽しい。

この後も歌劇団のオリジナル曲「籠の鳥」があり、レモ・ジャゾット作曲の「アルビノーニのアダージョ」があったりしてオペラの歌を楽しんでいた矢先、次の曲で度肝を抜かれました。

モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.
モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.

次はマリアセレンさんが歌う「彼の優しい声の響きが」という曲なんですが、ここで彼女の「テノールとソプラノを使い分ける超絶技巧」が披露されます。男性の声で歌っていたかと思ったら、次は女性の声になって、次の節ではまた男性の声になる・・・。ある意味、魔術的でもあり、何かトリックがあるんじゃないかと思うくらい不思議な感覚でした。例えるなら落語家さんが右を向いている時は旦那さん、左を向いている時は奥さんを演じるような感じで、テンポ良くテノールとソプラノの声が入れ替わるので、デュエットをひとりで歌っているという状態。まさに衝撃のパフォーマンスでした。いったいどうやって声を入れ替えているんでしょうか・・・? 実に不思議。

モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.
モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.

すごいものを聴いたなあと思っていたら、続いては狂言が始まりました。狂言師の小笠原由祠さんが愛嬌のある語り口で登場された後には、さっきまで名曲を歌い上げていたオペラシンガーたちが狂言の登場人物を演じ始めました。なんとも芸達者なことですが、シンプルな筋でこっけいな設定が詰め込まれているのでとても楽しく観ているうちに、あっという間に幕間休憩となりました。

モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.
モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.

お能や狂言、オペラもそうですが、やっぱり私はちょっと敷居が高い舞台だなと思っているわけですが、今作はそういう敷居をうまいこと下げているんです。美しい歌声を聴いているうちに、すごい技を聴かされて、知らない間に能や狂言のエッセンスまで味わえるという、なんともお得で初心者に優しい構成がありがたかったです。

二幕で聴いた「誰も寝てはならぬ」(オペラ「トゥーランドット」より)も素敵でしたし、「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」も素晴らしかったし、出演者一同で歌う歌劇団のシンボル曲「ザ ニュー ミー 〜栄光への賛歌」も聴きごたえがありました。

モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.
モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』©MondoParallelo, inc.

能舞台という特殊な空間でオペラ楽曲を味わうという、なんとも贅沢なコラボレーション。
今度は2024年5月にやるようなので是非 モンドパラレッロ歌劇団 公式サイトをご確認ください。

あと、折り込みチラシでとても敷居の低そうな狂言を見つけました。これも楽しそう!
https://www.atelier-oga.com/future/neo.htm

『ネオ狂言』
『ネオ狂言』

(文:森脇孝)

公演情報

モンドパラレッロ歌劇団『紫のゆかり』

【演出・舞台監督】植村文明
【音楽監督】武井浩之

【テノール/ソプラノ】マリアセレン
【ソプラノ】Sunny、Mitzy、美空、日菜乃、​明日香
【テノール】澤村楽人
【バリトン】MO-TOY

【演劇部】新村沢美、ヤマザキーナ

小川陽万里(劇団ひまわり)、片山美迦(劇団ひまわり)、昇あま音(劇団ひまわり)

【特別ゲスト】
シテ:粟谷明生(能楽シテ方喜多流 重要無形文化財保持者総合認定)
笛:栗林祐輔(能楽笛方森田流)
小鼓:飯富孔明(能楽小鼓方大倉流)
大鼓:大倉慶乃助(能楽大鼓方大倉流)
狂言師:小笠原由祠(能楽狂言方和泉流 重要無形文化財保持者総合認定)
真優(マジシャン)

2023年10月29日(日)/梅若能楽学院会館
【昼の部】13時開演(12時開場)
【夜の部】17時開演(16時開場)

公式サイト
https://www.mondoparallelo.tokyo/

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