
心がチクっとするけど、あたたかい気持ちにもなれるラブコメディ 東京マハロ『貴子はそれを愛と呼ぶ』インタビュー特集2
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』に出演する荒木健太郎、南圭介、熊澤枝里子、中村信幸にインタビュー取材した。
「東京マハロ」は脚本家・演出家の矢島弘一が2006年11月に旗揚げした劇団。
不妊治療や震災直後の被災地、いじめ問題に性同一性障害など現代社会が目を背けてはならないテーマの作品を上演してきた。近年ではコメディ作品にもチャレンジして脚本の幅を広げている。
今回上演される『貴子はそれを愛と呼ぶ』は脚本の矢島弘一が初めて書いた「ラブコメ」で、2023年12月に初演した作品だ。
老人介護施設に勤務する46歳独身女性がInstagramに投稿した画像に「いいね!」とコメントが付いたことで物語が動き出してゆく。
作・演出は矢島弘一が手がける。
今回エントレでは本作に出演する荒木健太郎、南圭介、熊澤枝里子、中村信幸にインタビュー取材し、本作の魅力について聞いた。
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』
STORY
東京近郊の老人介護施設に勤務する阿部ちゃん、46歳独身。華があり、男性からモテる同級生の貴子に「男紹介するよ」と言われても『今は必要ない』と意地を張る。そんなある日、何気なくUPしたInstagramのパンケーキの画像に「いいね!」が押される。さらに「美味しそうですね」とコメント。
コメントの主は一目惚れするほどの美男子、ライトさん。阿部ちゃんは浮かれ、あっという間に恋をしてしまう。果たして阿部ちゃんとライトさんの恋の行方は・・・
心がチクっとするけど、あたたかい気持ちにもなれる作品
――本作がどんなお話か教えてください
荒木 「阿部忠夫役を演じます荒木健太郎です。主人公である阿部円香の弟でして熱狂的なタイガースファンなんですが、ずっと引きこもりをしているという人物です。
僕はこの作品の初演を観た際に、主人公の阿部ちゃんが将来の不安とかいろんなことを、彼女なりに懸命に考えている姿に、すごく感動したんですよ。この人、大好きだなと思ったんです。再演となった今回、自分がそこに携われることをすごく嬉しく思っています。」
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』荒木健太郎
南 「黒澤俊哉役の南圭介です。僕が演じるのはお肉好きの弁護士で、福田ユミさんが演じる菊田貴子さんとお付き合いしているという役です。ハッキリと好きなものがあるキャラクターなので感情移入がしやすい役ですね。作品も日常がうまく切り取られている感じがして、とてもナチュラルに世界観に入り込んでいけるんです。お客さまも入り込みやすい作品になっていると思います。」
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』南圭介
熊澤 「市ヶ谷綾役の熊澤枝里子です。綾は主人公の阿部円香さんの仲のいい同僚なんですけども、関西出身でマイペースな人で阿部ちゃんのことをイラつかせたり、無意識にチクチク傷つけてしまったりしている面がある人物です。阿部ちゃんは不満とか諦めとかが心の中にいっぱい渦巻いていると思うんです。綾の中にもそういうものはあるんですけど、綾の場合はそういうものに折り合いをつけて楽しんで生きているところがあるんです。
この作品は、とにかく阿部ちゃんが愛おしくて仕方がないんです!私は初演を観させて頂いていたんですけど、阿部ちゃんの痛みの部分にすごく共感できて、多くの女性はもちろん、男性にも《わかる、こういう痛みわかるわ》と共感していただける方は結構いらっしゃるんじゃないかなと思います。」
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』熊澤枝里子
中村 「僕の演じる赤間秋和は、阿部ちゃんや綾ちゃんの働く特別養護老人ホームの同僚で、この中でも職歴の短い若手職員の役です。仕事にも人に対しても真っ直ぐな思いを持って、直向きに突っ走る人物だと思います。
最初に脚本を読んだ時に、一気に読み進めたんですけど最後には涙がにじんでいました。阿部ちゃんがとても切なくて、心がチクっとするんですけど、それだけじゃなくあたたかい気持ちになれるところもある。矢島さんのつむぐ言葉にいろんなハートを揺さぶられる、そんな素敵な作品だなと思います。」
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』中村信幸
――みなさん、阿部ちゃんが大好きなんですね
中村 「好きになっちゃうんですよね〜。」
荒木 「頑張れって思っちゃうんですよ!」
バランス感の良い役者陣 ピタッとはまったキャスティング
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』稽古場より
――お稽古を進めてみていかがでしょう?
熊澤 「ここにいるメンバーは矢島さんの舞台に出演されているんですけど、私だけ初めてなので稽古初日はガチガチに緊張していました!」
南 「気合い入ってたよね!」
熊澤 「気持ちが昂りすぎて、なぜか職員さんの格好をして行きました。めっちゃ恥ずかしかったんですけど・・・」
南 「形から役作りするの素敵ですよね!」
荒木 「僕も熊澤さんと初めての共演なので『こういう服の人なのかな』って最初思いましたけどね!」
中村 「言ってくれないとわかんないですよね!」
荒木 「でも、役作り、大事ですよね。」
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』稽古場より
熊澤 「今回稽古を進めてみて思うのは、みなさん個性がとてもある上にバランス感も優れているというか、居心地がいい稽古場だなと思います。矢島さんが役者のみんなの意見も取り入れてくださるので、みんなで作り上げて行くという雰囲気ができていると思います。」
南 「そうですね。演じる役者によって演出を細かく変えてくださっているので、楽しく役と向き合って行けています。」
荒木 「矢島さんはよく人を見てくれてますよね。僕は矢島さんと知り合って15、6年で、今回が3本目になるんですが、物語にスッと入ってくる役者をキャスティングの段階で選んでいるところが流石だなと思います。」
中村 「確かに。前回もすごく良くハマったキャスティングだなと思って観ていましたけど、今回のリバイバル上演でもピタッとはまってますよね。この役はこの人だよね!というのをすごく感じます。」
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』稽古場より
阿部ちゃんにどんどん愛おしさが募ってくる
――お客様に向けてお誘いのメッセージをお願いします!
中村 「阿部円香っていう人を追いかけて観ていただければ、最後には観て良かったなって思ってもらえる作品になっていると思います。夏の暑い時期ではありますがお越しください!」
熊澤 「私はこれまで観た東京マハロ作品の中でも一番好きな作品です。観ていると阿部ちゃんにどんどん愛おしさが募ってくると思いますし、痛さをえぐられる感じもあり、深く共感していただけると思います。キャストが変わったことで、前回よりもさらに面白くお届けできると思います!」
南 「『こういうことあるよね〜』とか『こんな人いるよね!』というように、本当に共感と発見のある作品だと思います。お客様もこの登場人物の輪の中にいるような感覚で楽しんで頂けると思います!力まず、気楽に劇場に来て頂けたら嬉しいです!」
荒木 「初めて東京マハロに出演させて頂いた時に矢島さんが『我々の仕事は、人が休みの時に働く仕事だ』という話をしていたんです。まさに今回は夏休みのお盆の時期に、みなさんが娯楽の一つとして演劇を選んで見に来てくださるわけです。我々は阿部円香という神輿をかついでお芝居をするわけですが、きっと劇場に来て頂いたお客様も知らない間に阿部円香を応援したくなると思うんです。舞台も客席も一体となる体験をしていただきたいと思いますので、ぜひ劇場までお越しください!」
東京マハロ リバイバル公演『貴子はそれを愛と呼ぶ』稽古場より
詳細は公式サイトで。
https://www.tekkosho.jp/stage/takako2025
(文:エントレ編集部)
東京マハロ リバイバル公演 PRODUCE BY テッコウショ
『貴子はそれを愛と呼ぶ』
【作・演出】矢島弘一(東京マハロ)
【出演】
今藤洋子、松村龍之介、本間剛、荒木健太郎、南圭介、
中村信幸、熊澤枝里子、加藤美佐江、安倍香、内谷正文、
春木生、福田ユミ、西野優希
2025年8月6日(水)〜8月13日(水)/赤坂 RED/THEATER