杉原邦生「木ノ下歌舞伎が辿り着いたひとつの〈到達点〉と言える作品」『三人吉三廓初買』9月15日に東京芸術劇場で開幕
東京芸術祭 2024 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(第一幕より) 撮影:細野晋司
東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」が9月15日に東京芸術劇場プレイハウスで開幕した。
木ノ下歌舞伎(通称:キノカブ)は、2006年に京都で活動を開始した、数々の古典作品を現代劇化する舞台。
監修・補綴は木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰) 、演出・美術は杉原邦生。
キノカブ版『三人吉三』は、2014年に初演され、翌年、東京芸術劇場が若手演劇団体と提携して公演をおこなう“芸劇 eyes 公演”としてシアターウエストに初登場。
読売演劇大賞2015年上半期作品賞部門のベスト5に選出された。
本作は、東京芸術祭2024の参加演目。東京芸術劇場の主催公演として、東京芸術劇場プレイハウスに初登場する。
9年ぶりの再演となる本作では、作品タイトルを演目の本外題である『三人吉三廓初買』に改め、数奇な運命に翻弄されながら疾走する、和尚、お坊、お嬢という“三人の吉三郎”の物語と、現行歌舞伎ではカットされている商人と花魁の恋をめぐる廓の物語、初演以来約160年ぶりの上演となった「地獄の場」を完全復活。
黙阿弥オリジナル版の全貌を見られるのはキノカブ版のみとなるそうだ。
東京芸術祭 2024 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(第一幕より) 撮影:細野晋司
物語の中心となるのは同じ「吉三郎」の名をもつ三人の若者。
兄貴分の和尚吉三を演じるのは、田中俊介。血気盛んなお坊吉三は、須賀健太。女装の盗賊・お嬢吉三は、坂口涼太郎が演じる。
また、和尚吉三の父親・伝吉として川平慈英が出演する。
東京芸術祭 2024 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(第一幕より) 撮影:細野晋司
もう一つのストーリーラインを動かす、お坊吉三の妹・花魁一重に、藤野涼子。一重に恋する商人・文里に、眞島秀和。文里の女房・おしづに、緒川たまき。
「吉三郎」の物語と「廓噺」の物語の両方をつなぐキーマン・十三郎は小日向星一が演じ、十三郎とめぐりあうおとせを深沢萌華が演じる。
他、武谷公雄、高山のえみ、山口航太、武居 卓、田中佑弥、緑川史絵が出演する。
東京芸術祭 2024 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(第一幕より) 撮影:細野晋司
東京芸術祭 2024 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(第一幕より) 撮影:細野晋司
あらすじ
江戸時代。
刀鑑定家・安森源次兵衛の家は、何者かにお上の宝刀・庚申丸を盗まれて断絶となっていた。
ある時、立身出世を目論む釜屋武兵衛は、巡り巡って木屋(刀剣商)文里のもとにあった庚申丸を金百両で手に入れる。
しかし文里の使用人・十三郎は、その取引の帰り道、夜鷹(街娼)・おとせと出会い、受け取った百両を紛失。
思いがけず百両を手にしたおとせだったが、十三郎を探す道すがら、女装の盗賊・お嬢吉三に百両を奪われてしまう。
様子を見ていた安森家浪人・お坊吉三は、お嬢吉三と百両を巡って争うが、そこに元坊主・和尚吉三が現れる。
彼がその場で争いを収めたことで、三人は義兄弟の契りを結ぶ。
また、失意の十三郎は、川に身投げしようとしたところを、和尚吉三の父・伝吉に拾われていた。
訪れた伝吉の家で、彼はおとせと再会し…。
一方、吉原の座敷では、文里がお坊吉三の妹で花魁・一重に想いを寄せていた。
人柄で評判の文里だったが、彼には妻子があった。
文里の求愛を一重が拒みつづけていたある日、文里は、ある決意を座敷で語りはじめる。
木ノ下歌舞伎主宰/監修・補綴 木ノ下裕一 コメント
18年前に木ノ下歌舞伎を旗揚げしました。「現代の演出家や俳優と一緒に日本の古典について考えるプラットフォームを作りたい」と(旗揚げ当時はそこまで明確に言語化できてはいなかったとはいえ)そう願ってのことでしたが、この度、素晴らしい俳優、デザイナー、スタッフに恵まれて、全力で作った5時間超えの『三人吉三廓初買』は、その願いが大きく実を結んだ作品だと実感しております。
18年間一貫して持ち続けた「歌舞伎の面白さ、現代演劇の楽しさを多くの人とシェアしたい」という想いは、作品のみならず、全20頁の無料パンフレットや、視聴覚障害のある方を対象にした鑑賞サポート、そして杉原さんの舞台芸術の未来を見据えた眼差しによって実現したスウィング公演、幕間の軽食販売に至るまで、この公演のすみずみにまで込められています。
一緒に最も多くの作品を作り、最も多くの時間を過ごしてきた、私にとっては唯一無二の演出家・杉原邦生さんをはじめ、演劇をこよなく愛する俳優陣、多彩なスタッフ陣と劇場でお待ちしております。
演出 杉原邦生 [KUNIO] コメント
今作の見どころは、エネルギッシュで魅力溢れまくりの素晴らしいキャスト陣だけではありません。強力なスタッフ陣にもぜひご注目ください!
作品に寄り添いポップかつドラマティックな音で観る者の感情を大きく揺さぶる☆Taku Takahashi(m-flo)さんの音楽、ファッション性とドラマ性とを行き来しながら驚きの発想で世界を提示してくれるAntos Rafal(ANTOS.)さんによる衣裳、古典歌舞伎のロジックを要所に垣間見せながら現在進行形の空間を出現させる金井勇一郎さんの美術、歌舞伎の真似事ではない木ノ下歌舞伎の目指すカタチを同じ目線で探求してくださる歌舞伎俳優・中村橋吾さんによる立廻り。その他、これまで何度も創作を共にし、絶大な信頼を寄せる皆さんの演劇愛に満ちたスタッフワークも存分に楽しんでいただけるはずです。
2006年に旗揚げし、2017年までメンバーとして共に歩み、いまや唯一無二の演劇団体となった“木ノ下歌舞伎”。『三人吉三廓初買』は、そんな木ノ下歌舞伎が辿り着いたひとつの〈到達点〉と言える作品になっていると思います。実は、稽古の時からひっそりと、僕はそう感じていました。
この作品をお客さまにお届けできることがとても嬉しく、とても楽しみです。
座組一同、劇場にて皆さまのご来場をお待ちしております!
東京芸術祭 2024 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(第一幕より) 撮影:細野晋司
東京芸術祭 2024 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(第一幕より) 撮影:細野晋司
公演は、9月29日(日)まで、東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。
その後、10月には長野(松本)、三重、兵庫での上演も予定されている。
詳細は公式サイトへ。
https://www.geigeki.jp/performance/theater364/
(文:エントレ編集部)
東京芸術祭 2024 芸劇オータムセレクション
東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』
【作】河竹黙阿弥
【監修・補綴】⽊ノ下裕⼀
【演出】杉原邦生[KUNIO]
【出演】
田中俊介 須賀健太 坂口涼太郎 / 藤野涼子 小日向星一 深沢萌華
武谷公雄 高山のえみ 山口航太 武居 卓 田中佑弥 緑川史絵
川平慈英 / 緒川たまき 眞島秀和
【スウィング】佐藤俊彦 藤松祥子
2024年9月15日(日)~9月29日(日)/東京・東京芸術劇場 プレイハウス
2024年10月5日(土)~10月6日(日)/長野・まつもと市民芸術館 主ホール
2024年10月13日(日)/三重・三重県文化会館 中ホール
2024年10月19日(土)~10月20日(日)/兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール