『野獣降臨』は、野田秀樹が夢の遊眠社時代に第27回(1983年)岸田國士戯曲賞を受賞した作品。
40年近く前に感染症をモチーフとし、自らが生きている・生きていた証拠を残すために伝説を創り出そうとするノケモノたちを描いた作品だ。
現在形で演劇を行い、現在のニッポンを映し出そうと活動しているドナルカ・パッカーンが、新型コロナウイルス禍のなかで新たな『野獣降臨(のけものきたりて)』を立ち上げる。
出演は鎌内聡、那須野恵、丸尾聡。感染防止対策を考慮の上、たった3名のキャストが入れ代わり立ち代わり、様々な役を演じわける。
出演の鎌内聡、那須野恵、丸尾聡
お前の胸の中に、
もうひとつの
地球をつくろうと
しているんだ
【あらすじ(のような)】
夢の遊眠社が1987年にエディンバラ演劇祭で海外上演を行った際の写真集に野田秀樹自身によるあらすじが掲載されている。『野獣降臨』という戯曲は非常に複雑に錯綜している作品だが、「これ一回きりのお客様サービス」と書かれたそのあらすじには、この物語が「被差別民族」の物語であると明白に書かれている。作品を貫流するドラマツルギーは「被差別民族」を描くためのドラマツルギーだ。「千鳥足(酔っ払い)の弁証法」という言葉に倣えば、『野獣降臨』は「蛇行のドラマツルギー」ということになる。なぜかといえば、それは「跛行(はこう)」し、「膝行 (しっこう)」するものたちの物語だからだ。
中学校の図書館でたまたま手に取った野田秀樹氏の初期戯曲『回転人魚』が私の人生を決定づけました。実際に演劇活動を始めると野田秀樹氏の演劇活動とはかなり異なるような道に踏み出していましたが、今回の新型コロナウイルス禍のなかで演劇を作り出すとしたらどんな戯曲がふさわしいかと考えあぐねている時にふと『野獣降臨(のけものきたりて)』が頭に浮かびました。
『野獣降臨』は感染症というモチーフを用いて書かれた物語です。古代ギリシアでは「ミメーシス」=感染的模倣は非常に重要視されており、それは芸術や演劇において根本的な力のひとつと認識されていました(そして同時に恐ろしい力・堕落の力とも認識されていたからプラトンは「詩人追放論」を唱えたのです)。もちろん実際の「感染症」と芸術における「感染」というのはまったくの別物ですが、新型コロナウイルス蔓延の間隙に、こうした敢えてのゴチャマゼを行い、その似非的・パロディ的創作行為によって現在の状況を考えてみるのも一興ではないでしょうか。
感染予防対策は稽古場においても劇場においても、業界団体(舞台芸術)のガイドラインに基づいて万全に実施いたします。万難を排して劇場にお越し下さいとは言えませんが、それぞれのご判断で劇場に足を運んでいただければと思います。
本作は7月22日(水)から東京・萬劇場で上演される。
詳細は公式サイトで。
(文:エントレ編集部)
ドナルカ・パッカーン「『野獣降臨(のけものきたりて)』」
【作】野田秀樹
【脚色・演出】川口典成
【美術】根来美咲
【出演】鎌内聡、那須野恵、丸尾聡
2020年7月22日(水)~7月26日(日)/東京・萬劇場
公式サイト
『野獣降臨(のけものきたりて)』
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