音楽活劇「SHIRANAMI」

エネルギッシュな新生・白波五人男が、平成最後に大暴れ!音楽活劇「SHIRANAMI」観劇レビュー

音楽活劇「SHIRANAMI」音楽活劇「SHIRANAMI」エネルギッシュな新生・白波五人男が、平成最後に大暴れ!音楽活劇「SHIRANAMI」観劇レビュー

音楽活劇「SHIRANAMI」は、幕末の動乱を駆け抜けた五人の盗っ人達の生き様を描いた歌舞伎の名作「青砥縞花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」(通称:「白波五人男」)を題材に、脚本・演出:G2、ショー演出・LEDディレクション:市川訓由という強力タッグのもと、今までに見たことがない全く新しいエンターテインメントジャンル“音楽活劇(演劇×殺陣×歌・ダンス)として大胆なアレンジが加えられ、平成最後&新元号を迎える2019年の幕開けを、エネルギッシュかつ賑やかに彩ります!

舞台は、諸外国との通商条約に反対する武士達が、尊皇攘夷運動に沸く幕末。
オープニングから、白波五人男と、大量の捕方たちによる圧巻の殺陣が繰り広げられ、ステージ上に設置された巨大なパネルに大きくタイトルが映し出されるのですが、これが痺れるほど格好いい!!開幕早々、一気に心を掴まれて、今後のストーリー展開へのワクワク感が高まります。

音楽活劇「SHIRANAMI」
音楽活劇「SHIRANAMI」

そんな華々しいオープニングから時遡って、まず初めに登場するのは、当時、武家屋敷ばかりを狙って江戸の町を騒がせていた泥棒・日本駄右衛門(松尾貴史)と、ある時ひょんなことから駄右衛門と出会った神出鬼没な盗賊・忠信利平(喜矢武豊)。

この二人によるダンスと映像を交えて繰り広げられる逃走劇は序盤の注目シーンのひとつ。松尾さんは、今やG2作品ではお馴染み。軽快なセリフ運びにはユーモアが満載で、観ていて安心感を覚えます。喜矢武さんは、演技、歌など初めて拝見しましたが、よく通る声と軽やかな身のこなしで、私の知っている“ゴールデンボンバーの喜矢武豊”とは別人かのように思いました。

音楽活劇「SHIRANAMI」
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早乙女太一さんが演じるのは、弁天小僧菊之助。私は、「早乙女太一さんが時代劇をやるなら、とりあえずポニーテールはマストである」と、常日頃言いまくっているので、今回のビジュアルが解禁された当初から、心の中で合掌をしていました。少し垂れた前髪からチラリと覗く涼しげな切れ長の瞳がまた素敵。

・・・話が脱線しました、戻します。
けれども、その“弁天小僧菊之助”というのは、世を忍ぶ仮の姿。彼の本当の名は“菊霧”。時の孝明天皇の妹・和宮(入来茉里)のお守り役として、彼女が将軍・徳川家茂(小澤廉)に輿入れする際に同行し、京都から江戸へ下ります。しかし実際は、ただのお守り役としてではなく、とある密書を手に入れるという使命と共に。その使命を果たすために、彼は名前を変えていたのです。

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そしてもう一役、本作の早乙女さんを語るのに特筆しなければいけないのは、登場した瞬間に思わずハッと息を呑むほどに美しい霧里花魁。仕草のしなやかさ、だだ漏れる色気。鈴木壮麻さん演じる瑞帆屋卯三郎に寄り添い、とろんとした目で甘えるその声の艶っぽさがハンパではない。「中身が男だなんて、嘘だと言ってくれ!」

音楽活劇「SHIRANAMI」
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その、霧里と瑞帆屋が二人で過ごす部屋を、あろうことか、いきなり入って来た浪士達が襲撃。瑞帆屋が今にも斬られそうな危機一髪の場面。そこに、華麗な立ち振る舞いで、赤星十三郎(龍 真咲)が現れます。複数人の浪士達相手に挑む姿が本当に男前!
龍さんは、宝塚歌劇団を退団してから2年ぶりの男役。最初は、「おかえりなさい!」と懐かしく見届けていたのですが、場面が進むごとに私の脳は徐々に混乱。何故って、自分の視界にいる“絶世の美女”は中身が男で、“クールビューティーな美男子”の中身が女だという現実がたまにカムバックしてくるものですから、頭を抱えずにはいられませんでした。

音楽活劇「SHIRANAMI」
音楽活劇「SHIRANAMI」

斬り合いの最中、飛び込んでくるもう一人の男・南郷力丸(伊礼彼方)。彼は奉行所の同心で、幕府を救うために、菊霧が狙う密書を探す事に。しかし、彼にはそれ以上に探さなければいけない人が。それは、ある事件以来行方不明となった許嫁の小夜(龍 真咲)。恋人二人がお互いを想って歌うデュエットは、切なくて儚くていとおしい。
南郷を演じる伊礼彼方さんは、本作が初の和モノ、という事でしたが、そんな事は微塵も感じさせないほどの力強い立ち回り。持ち前のコミカルな芝居で客席から笑いを誘う生き生きとした姿から、初の和モノを存分に楽しんでいることが、とてもよく伝わってきました。

音楽活劇「SHIRANAMI」
音楽活劇「SHIRANAMI」

最後に、私が「興奮した!」という場面について書かせていただきます。2幕終盤。菊霧と、浪人・高杉(安田桃太郎)による1対1の殺陣。きっと、私と同じ、劇団☆新感線ファンの皆様は大喜びだと思います!これまで多くの作品で幾度となく刀を交えて来たお二人の、完全に信頼しきった、フルパワーの殺陣。二人だけ倍速空間で生きているのではないかというレベルのスピードでした。初めてご覧になる方に少しでも私の興奮が共有出来ればと思い、書かせていただきました。もし、観劇中に思い出しましたら、注目して観てみてください!

菊霧、忠信、南郷、十三郎、駄右衛門。今までは、表の顔と裏の顔を器用に使い分け、それぞれの忠義のためにバラバラに活動していた5人が、徐々に運命の糸に操られるかのように、ひとつの真実に吸い寄せられ、ある目的のために力を合わせ始めます。
普段は裏街道を歩く彼らが必死になって守ったもの、彼らがやり遂げた快挙とは。
その爽快な結末は、ぜひ劇場で体感を!

音楽活劇「SHIRANAMI」
音楽活劇「SHIRANAMI」

本作は、記事冒頭で書いた通り、“音楽活劇”という新しいエンターテインメントジャンル。
激しい大立ち回りと、かっこいい口上で歌舞伎のような展開になったと思えば、
舞台後ろに立ち並ぶパネルに映し出される迫力満点の映像が音楽に合わせて動き、菊霧の心の葛藤を表現。そして、劇中で使用されている曲の中には、「あれ?どこかで聞いたことがあるような・・・?」という音楽がいくつも登場します。加えて、まるでブロードウェイミュージカルを観に来たかと錯覚するようなアップテンポでおお盛り上がりのカーテンコール。是非とも最後の最後まで客席で“音楽活劇“の世界に浸っていただけたらと思います!

本公演は、東京・新国立劇場 中劇場にて、今月29日(火)まで上演されます。
詳細は公式サイトで。

(文:越前葵

公演情報

音楽活劇『SHIRANAMI』

【脚本・演出】G2
【ショー演出】市川訓由

【出演】
早乙女太一 龍 真咲 伊礼彼方 喜矢武豊 松尾貴史
鈴木壮麻、加納幸和、小澤廉、入来茉里
小林大介、谷山知宏、谷水力、安田桃太郎、有川マコト、越塚学、熊倉功、伊藤教人、南誉士広、加藤学、高橋玲、小川夕姫、森田万貴、横山祥子 米島史子
及川崇治、笠田康平、長瀬絹也、山内涼平

2019年1月11日(金)~29日(火)/東京・新国立劇場 中劇場

公式サイト
音楽活劇『SHIRANAMI』

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