舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」⑧

花總まり&谷原章介主演!舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」ついに開幕!

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」⑧
舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」 撮影:加藤春日

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」ついに開幕!

2010年に出版され、独創的な世界観とメッセージ性の強さが話題となったカナダの小説「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」を原作とした舞台が、2024年4月1日(月)より東京・日本青年館ホールにて開幕しました!

奇妙な銀行強盗によって、魂の51%を奪われてしまった13人の被害者たちの身に起こる、不可思議な事件とそれに立ち向かう姿を描いています。不可思議な事件とは、妻が縮む、夫が雪だるまになる、タトゥーだったはずのライオンに追い回されるなど。ファンタスティックな内容ですが、だからこそさまざまな捉え方ができ、その奥行きの深さが魅力の物語です。

主演を務めるのは、宝塚歌劇団で12年間トップ娘役として活躍し、退団後も『エリザベート』や『マリー・アントワネット』など大作ミュージカルで主演を務めた花總まりさんと、俳優・司会・ナレーションなどさまざまなジャンルで活躍する谷原章介さん。美しい夫婦が不可思議な事件に立ち向かう姿に注目です!

本作に込められたメッセージとは…?

自分の大切なものと向き合うことができるか否か…それが本作の大きなテーマなのではないでしょうか?

冒頭、強盗が「今持っている物の中で最も思い入れのある物を差し出せ」と言い、その言葉通り人々は自分の持っている大切な物を差し出します。主人公・ステイシーが渡したのは、人生設計を立てるときに使っていた電卓。デイビッドという男性は、母親からもらった時計を差し出します。そのほかの人が渡したのは、開封済みの封筒、玄関のカギ、家族の写真など。どれも自分にとって大切な物ばかりです。

それから数日後、ステイシーは身長が縮み、デイビッドは母親が98人に分裂、そのほかの人々にも不可思議な出来事が起こり始めます。共通しているのは、差し出した物(=大切な物)に関する事件が起きているということ。

強盗が告げた「魂の51%を奪った」「自ら魂の51%を回復しない限り、命を落とすことになるだろう」という言葉の真相を探る物語が始まります。

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」③
舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」 撮影:加藤春日

本作はファンタジー要素が強いのですが、根底には“忙しさにかまけて、大切な物や人と向き合うことを避けている大人たち”へのメッセージが込められているように感じました。寓話的な物語といってもよいでしょう。
どのように向き合ったか、何と向き合ったか、その結果何を得られたか、それは人それぞれの解釈があると思いますので、ぜひ劇場でご覧ください!

個性豊かなキャストについて

ここからは、メインキャストの花總さん、谷原さんを中心に役者さんの感想を交えて、ゲネプロの様子をご紹介します。

ステイシー役(花總まりさん)
憑依型のお芝居と品のある佇まいが印象的な女優・花總まりさん。エリザベートやマリーアントワネットなど位の高い役を演じた際の、気品とオーラ、生き様があまりにリアルなので、「乗り移っているのではないか…」と思うほどですが、今回はごく普通のどこにでもいる、夫と子供を持つ女性の役です。

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」①
舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」 撮影:加藤春日

宝塚歌劇団にいたころに出演していた『BOX MAN』や『ホテルステラマリス』などを彷彿とさせる、等身大の女性として存在していました。谷原さん演じる夫との掛け合いもリアルで、大きな喧嘩をしているわけではないけれど、常にギクシャクしている夫婦の冷めた空気が漂っています。

本作は、役者がセリフとストーリーテラーの役割を同時進行で担いますが、ストーリーテラーとしての言葉がやっぱり上手い!セリフではないけれど、感情の波が見えるので、朗読劇のように言葉が心にスッと入ってきます。

ステイシーは気持ちの変化が大きい役ですが、彼女の抱える孤独、葛藤、不安、そして愛情が、一貫性のあるお芝居の中で的確に表現されていました。妻としての側面、母親としての側面もしっかり描きつつ、縮む身体と懸命に向き合い戦う姿を見て、ヒロイン力がずば抜けた方だと改めて感じました。

個人的には、花總さんが等身大の女性を演じた時の“怒り方”が好きでして…(笑)。小さな口を大きく開けてヒステリックに怒る役をよく見るのですが、ヒステリックなのにガミガミしていなくて、まるで小動物が怒っているような可愛らしさがある…今回もそんな可愛らしい彼女の魅力が詰まっていました。

夫(谷原章介さん)
背が高く舞台映えする谷原さんが今回演じているのは、妻子を持つ夫。妻・ステイシーとの関係が冷めきっていることは、谷原さんのお芝居からも感じ取ることができました。夫はいつも自分の世界に入り込んでいて、人に興味がないように見える男性。ステイシーがカウンセラーに夫の欠点を話すと、心を閉ざしたように黙り込んでしまう場面からも、夫のキャラクターが垣間見えます。そんな夫が縮んでいく妻を目の当たりにして、少しずつ彼女と向き合うようになっていく様も丁寧に描かれていました。

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」②
舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」 撮影:加藤春日

また谷原さんは、ストーリーテラーとしての役割が大きく、常に登場人物の行動に合わせて言葉を発し続けているので、セリフ量がとにかく多い!覚えるだけでも一苦労では?と想像してしまいますが、谷原さんはスマートにこなしていました。舞台を観ているはずなのに、小説を読んでいるような不思議な感覚になれるところもおすすめポイントです。

その他のキャスト
マスクをつけて登場する強盗(平埜生成さん)は、1幕冒頭、銀行で拳銃を発砲し「今持っている物の中で最も思い入れのある物を差し出せ」と叫びます。インパクトのある登場で、なおかつ放つ言葉も普通の強盗とはちょっと違うので、キャラクターが浮いてしまいそうなのですが、なぜか違和感なく存在しているのが、面白可笑しくて。怖い人のはずなのに、どこか抜けているような印象さえ与える強盗でした。

13人の被害者の1人・ドーン(入山法子さん)は、タトゥーだったはずのライオンに追われていつも忙しそうです。ドタバタと走り抜ける場面が多いですが、ただ走っているだけではありません。いつもライオンを睨みつけていて、生き残るための強いエネルギーを持った人という印象でした。

13人の被害者の1人であり、被害者の会を作った刑事(栗原英雄さん)は、自宅のキッチンで、先祖の歴史に押しつぶされる場面があります。そこでの一人芝居では、先祖の歴史を眺めて自分の感情に変化が起きる過程を、短い時間の中で繊細に演じていました。

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」⑥
舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」 撮影:加藤春日

ほかにも被害者とその家族が出てきます。一人ずつの登場場面が少ないので、観客は役の認識をするのが難しくなるはずですが、役者さんがそれぞれのキャラクターを個性豊かに作り上げていたので、困惑することなく楽しく観ることができました。

面白い演出

今回印象的だったのは演出です。黒子を使った古典的な演出と、映像を駆使した現代的な演出が相まって、物語を追うだけでなく、演出の面白さに見入ってしまう場面も多々ありました。家具や階段などを大きくして、妻が縮んでいるように見せる演出も印象的です。ほかにも、照明を使って猛スピードで運転しているように見せたり、水中にいるように見せたり…。

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」④
舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」 撮影:加藤春日

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」⑤
舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」 撮影:加藤春日

豪華なセットを使っているわけではありませんが、人の動きと小道具の使い方で、世界観が表現されているのが非常に面白かったです。

忙しく日々を生きる方に観てほしい作品

花總さんが一場面歌唱しますが、それ以外に歌う場面はなく、ストレートプレイに近い形の舞台。ファンタスティックでありながらメッセージ性が強いので、忙しく日々を生きる方にこそ、観てほしいと感じました。

舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」⑦
舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」 撮影:加藤春日

忙しくて目を向けられないところに、大切なものが転がっている。そこに向き合うことで何かを断ち切ったり、拾い上げたりすることができる…人生における取捨選択を寓話的に描いた今作。劇場を後にするときには、ふわっと柔らかい気持ちになり、足取りも軽く、その足で家族や友人に会いたくなる、そんな作品です。

あなたにとっての大切なものはなんでしょうか?

大切なものに思いを馳せながら、ぜひ劇場へ足を運んでみてください。

本作は4月14日(日)まで東京・日本青年館ホールで上演されます。
詳細は公式サイトで。
https://thetinywife.com/

(文:山本萌絵

公演情報

舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

【原作】アンドリュー・カウフマン
【脚本・演出】G2
【製作】TBS

【出演】花總まり 谷原章介
平埜生成 入山法子 栗原英雄
中山祐一朗 吉本菜穂子 幸田尚子 楢木和也(梅棒)
西山友貴 吉崎裕哉 山口将太朗 黒田勇 須崎汐理 山崎眞結

 

2024年4月1日(月)~4月14日(日)/東京・日本青年館ホール
2024年4月20日(土)~21日(日)/大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
2024年4月26日(金)~28日(日)/名古屋・御園座

 
公式サイト
https://thetinywife.com/

Copyright © 2010 by Andrew Kaufman
Used by permission of The Rights Factory Inc. through Japan UNI Agency, Inc., Tokyo

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