じわじわと心を揺さぶられる!青年座 舞台「旗を高く掲げよ」が7月28日に開幕
左から 石母田史朗、松熊つる松 撮影=坂本正郁劇団チョコレートケーキの古川健が青年座に書き下ろした新作「旗を高く掲げよ」が7月28日から青年座劇場で開幕。
本作は、歴史上の出来事を題材に独自の視点で骨太な戯曲を創作する劇団チョコレートケーキの古川健が青年座に初めて本作を書き下ろしたもの。第二次世界大戦下(1938年~1945年)のドイツ・ベルリンを舞台に、一人の男とその家族が変貌する様を、序章と終章を含む6つの時代を追って描き出す。
左から 嶋田翔平、石母田史朗、 松熊つる松、渕野陽子 撮影=坂本正郁
1939年9月、ドイツ軍がポーランドに侵攻し第二次世界大戦は勃発した。その前年から物語は始まる。
歴史教師のハロルドは善良なる市民。妻レナーテ、娘リーザ、妻の父コントラートとベルリンに暮らすミュラー家は、ごく一般的なドイツ人家庭。
1938 年 11 月、ドイツ各地で起こったユダヤ人に対する組織的暴動事件(水晶の夜)直後、事件を受けて亡命を決意したユダヤ人の友人オットーが今後のドイツを憂える。
妻レナーテはナチス支持者で、時流に乗らない夫に物足りなさを感じている。夫、妻、義父、夫の友人、妻の友人、それぞれの立場からナチスドイツを語る。その数日後、SS(ナチス親衛隊)の友人ペーターが、ハロルドに歴史の専門知識を活かした仕事をしてほしいとSSへの入隊を奨める。乗り気のレナーテに対し、二の足を踏むハロルドだったが……、迷いながらもついに入隊を決断する。
1940年7月フランスの降伏、1942年4月ホロコースト(ユダヤ人の組織的大量虐殺)開始、1944年9月ドイツ軍敗色濃厚、1945年4月ベルリン陥落寸前、そして……。
ドイツ崩壊が進むにつれ、反比例するかのうようにナチスへ傾倒していく家族。ナチス独裁政権下のベルリンを舞台に、物語は時を移して転がっていく。
最終舞台稽古を観ていて、栗山民也演出の舞台「アドルフに告ぐ」を思い出した。あの時も普通の人たちが、徐々にナチスへ傾倒していき、信じているものが徐々に変わっていく様が描かれていた。
青年座によるこちらの「旗を高く掲げよ」は派手な描写は多くないものの、確実にじわじわと心を揺さぶってくるものがあった。
今、自分が信じているものは、本当に信じていていいのか?
今、タイムラインに流れて来たニュースはホントに真実か?
なんだかデカルトみたいな不安定な気分になってくるが、そういうことはちゃんと考えたほうがいいのかもしれないとも思った舞台だった。
・・・と、書いてあるこの記事は信じていいと思いますか?
チケット詳細は公式サイトで。
(文:森脇孝/エントレ)
青年座「旗を高く掲げよ」
作=古川健
演出=黒岩亮
ハロルド・ミュラー(夫)=石母田史朗
レナーテ・ミュラー(妻)=松熊つる松
リーザ・ミュラー(娘)=田上唯
コンラート・シュルツ(祖父)=山野史人
ロッテ(娘の友人)=市橋恵
ペーター・マイヤー(SSの友人)=豊田茂
バウワー(副官)=鹿野宗健
ヘルガ・シュヴァルツ(妻の友人)=渕野陽子
オットー・ワルター(ユダヤ人の友人)=嶋田翔平
ブルーノ・コッホ(障がい者の友人)=小豆畑雅一
2017年7月28日(金)~8月6日(日)/東京・青年座劇場
公式サイト
青年座「旗を高く掲げよ」