アドルフに告ぐ 舞台写真

舞台「アドルフに告ぐ」観劇レビュー/今、自分は何をすべきか

アドルフに告ぐ 舞台写真
「アドルフに告ぐ」舞台写真 撮影:引地信彦

手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」が栗山民也の演出により舞台化。
現在、KAAT神奈川芸術劇場で絶賛上演中だ。

漫画の神様、手塚治虫の長編戦争漫画「アドルフに告ぐ」。
栗山民也演出による手塚作品の舞台化は今回「ブッダ」「火の鳥」に続き3作目である。

開幕前の成河・松下洸平・髙橋洋へのインタビュー取材はこちら

時代はナチス・ドイツ。日本とドイツを舞台に
ヒットラーを含む「アドルフ」の名を持つ3人の男が

それぞれの人生
それぞれの運命
それぞれの正義

を生きる。

アドルフに告ぐ 舞台写真
「アドルフに告ぐ」舞台写真 左から松下洸平・成河 撮影:引地信彦

歴史的事実に基いた、60年にも及ぶ人間ドラマを舞台化しようという試みは、
無謀に思えるほど困難であったに違いない。

しかし、これだけたくさんの場面展開がありながら、
そのどこを取っても1枚の完成された絵になるような計算された演出・舞台美術であった。

それは決して、当時を再現するために似せて作った道具で空間を埋めるようなものではなく、
大胆かつ最低限のセットと、生身の人間が発する空気を巧みにコントロールすることでなし得る
舞台芸術のひとつの完成形に思えた。

アドルフに告ぐ 舞台写真
「アドルフに告ぐ」舞台写真 中央は成河 撮影:引地信彦

狂気が狂気を生み、犠牲者が犠牲者を生む。戦争を軸に負の連鎖が果てしなく続く一方で、
こうして戦争の悲惨さを伝える作品が表現を変え受け継がれる。

いいことも悪いことも人から人へ伝わり、拡散し、影響しあい、歴史を作ってゆく。
それが人間ならば自分は何をすべきだろうか。

本作は6月3日(水)からKAAT神奈川芸術劇場で14日(日)まで上演。
その後、宮崎、京都、愛知でも上演される。

舞台「アドルフに告ぐ」公式サイト

(撮影:引地信彦 文:大矢喜代治)


公演情報
舞台「アドルフに告ぐ」

【原作】手塚治虫【演出】栗山民也
【脚本】木内宏昌【音楽】久米大作
【出演】成河 松下洸平 高橋洋/朝海ひかる/前田亜季/大貫勇輔 谷田歩/市川しんぺー 斉藤直樹/彩吹真央/岡野真那美 林田航平/石井愃一/鶴見辰吾
田中茂弘 安藤一夫 小此木まり 吉川亜紀子 今井聡 北澤小枝子 梶原航 西井裕美 薄平広樹

2015年6月3日(水)~14日(日)/神奈川芸術劇場<ホール>
この後、宮崎、京都、愛知でも上演

舞台「アドルフに告ぐ」公式サイト


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