音楽劇『テラヤマキャバレー』

派手な中にも哀愁が漂い、こちらの想像を掻き立ててくる 寺山修司の息吹を感じる音楽劇『テラヤマキャバレー』観劇レビュー

音楽劇『テラヤマキャバレー』
音楽劇『テラヤマキャバレー』

派手な中にも哀愁が漂い、こちらの想像を掻き立ててくる 寺山修司の息吹を感じる音楽劇『テラヤマキャバレー』観劇レビュー

【キャバレー】という言葉を見ると華やかで楽し気な舞台を想像してしまうけど、あの【寺山修司】の名前が入ってるとなると意味が違ってくる!ほら、フライヤーだって怪しげでしょ?寺山修司といえば60年代に日本のアングラ演劇を牽引してきた人物のひとり。その人物の物語をなぜかイギリス演出家デヴィッド・ルヴォーさんや、寺山世代ではない若い脚本家・池田亮さんがタッグを組み作品を創るという異色とも思える企画に不安がないとは言えない。とはいえ、ルヴォーさんの実績はもちろんのこと、自分の周りの役者からはメチャクチャ信頼度があり尊敬されているし、池田さんは『ウマ娘』など自分も楽しませてもらってる作品を提供している方。これまで寺山修司さんの言葉に何度も心を打たれてきた身として、どんなものが観れるのかいろんな意味でドキドキしながら観劇してきました…

音楽劇『テラヤマキャバレー』
音楽劇『テラヤマキャバレー』

控えめにいって最高でした!ブロードウェイで上演されるような笑って泣ける華やかな作品とは違い、日本的?派手な部分はあるものの哀愁が漂い、気が付けば人物を眺めて自然と涙し、自分でもよくわからない感情を噛み殺したりと、こちらの想像を掻き立ててくる!
思い起こせば初っ端から、寺山修司役を演じる香取慎吾さんの演技にすでに魅了されていた気がする!自分が知る香取さんの演技(役柄)は、香取さんの優しさが滲み出る印象があった。が、今回は違った!開演と同時に張り詰めた様子で現れぶっきらぼうに語り始める。誰も近づけない、近寄りがたい雰囲気に彼の孤独を感じグッと心を掴まれた。

音楽劇『テラヤマキャバレー』観劇レビュー
音楽劇『テラヤマキャバレー』

舞台中央の門が開くと黒いマントをした亡霊のような劇団員が現れる。彼らは寺山に名前を与えられた瞬間に姿を現す。役者は名前(役割)を与えられるまでは存在しない、という演出が面白い!与えられた名前はとても奇妙ではあるが、寺山に関連する名前ばかり。重たい雰囲気の中で白粥と名付けられた成河さんが妙におかしくコントのよう!個性豊かな劇団員たちは寺山を苛立たせることばかりだけど、彼の人生が描かれた物語を見ていると拒絶しない理由が自ずと伝わる。

音楽劇『テラヤマキャバレー』観劇レビュー
音楽劇『テラヤマキャバレー』

音楽劇『テラヤマキャバレー』観劇レビュー
音楽劇『テラヤマキャバレー』

劇団員とは一線を画す、真っ白な衣裳をまとった死役の凪七瑠海さんは見事に異質!そして伊礼彼方さんの蚊がくどくて終始ニタニタ。個人的に近年拝見することが多かったこともあり推しの存在になっていたようで、登場しただけで嬉しかった(笑)

音楽劇『テラヤマキャバレー』観劇レビュー
音楽劇『テラヤマキャバレー』

音楽劇『テラヤマキャバレー』観劇レビュー
音楽劇『テラヤマキャバレー』

ルヴォーさんらしいリアルな芝居を追求しつつファンタジーのような不思議な世界観は健在。人形浄瑠璃を体現するシーンがあったり(お芝居の内容関係なくもう一度観たい、圧巻!)、カラフルなボールがいつの間にか宇宙になったり。それでいて官能的で攻撃的な寺山修司の息吹を感じる。日本に根付いているアングラ作品よりも開放的な空間になっているのは、ルヴォーさんだからこそなのかなと!もちろん演出だけでなく、寺山修司らしい言葉が並べられた脚本、舞台の上のキャストがみな演出を信じて進んでいるからこそ!それがまた寺山修司と劇団員との関係に観えて…最後に死んでいく寺山修司が門の向こうに消えて、冒頭に門から出てきた劇団員が舞台に残るという粋な演出が強烈にカッコよかった!!

音楽劇『テラヤマキャバレー』観劇レビュー
音楽劇『テラヤマキャバレー』撮影:岡千里

随所に散りばめられたエンターテインメントに最期まで楽しませていただきました!

本作は2月29日(木)まで日生劇場で上演されます。
詳細は公式サイトで。
https://www.umegei.com/terayama_cabaret2024/

(文:かみざともりひと

公演情報

Inspired by Shuji Terayama『テラヤマキャバレー』

【演出】デヴィッド・ルヴォー
【脚本】池田亮
【出演】
香取慎吾
成河 伊礼彼方 村川絵梨 平間壮一
花王おさむ 福田えり 横山賀三 凪七瑠海(宝塚歌劇団)他

 

【日程】
東京:2024年2月9日(金)~29日(木)日生劇場
大阪:2024年3月5日(火)~10日(日)梅田芸術劇場メインホール

 
公式サイト
https://www.umegei.com/terayama_cabaret2024/

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