ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと、寺脇康文、相島一之

不朽の名作が新キャストを迎えて再び登場! ミュージカル「マイ・フェア・レディ(朝夏まなと&寺脇康文)」観劇レビュー

ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと、寺脇康文、相島一之
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと、寺脇康文、相島一之 写真:東宝演劇部

不朽の名作が新キャストを迎えて再び登場! ミュージカル「マイ・フェア・レディ(朝夏まなと&寺脇康文)」観劇レビュー

「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと&寺脇康文バージョンの観劇レポートをお届けいたします!

「マイ・フェア・レディ」は言わずと知れたミュージカルの名作。ジュリー・アンドリュース主演の舞台版やオードリー・ヘップバーン主演の映画版が有名。どちらもトニー賞やアカデミー賞を受賞した名作中の名作です。日本初演はなんと1963年でなんと55年前、既に上演も1100回以上という日本のミュージカル界では実はかなりのご長寿演目です。

今回は2016年以来2年ぶりの上演。メインのイライザとヒギンズ教授役がそれぞれダブルキャストというのは実は初めて。そして4人中3名、イライザ役の朝夏まなとさん・神田沙也加さん、ヒギンズ役の別所哲也さんはそれぞれ初役とのこと! 朝夏さんは昨年11月に宝塚歌劇団を退団してから初舞台ということでこちらも見どころです。

ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと、寺脇康文
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと、寺脇康文 写真:東宝演劇部

宝塚在団中に「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラ役で女役はされていましたが、男役から女優へ、というのは下町の花売り娘からレディへ、というストーリーにはぴったりハマる感じが!こちらのペアのヒギンズ教授役は初代「相棒」な寺脇康文さん。4人とも舞台ではかなりおなじみなメンバーなのに、寺脇さん以外が初役とは意外な印象です。
今回、それぞれダブルキャストではありますがペア自体は朝夏&寺脇・神田&別所で固定での上演になります。

囲みで寺脇さんがそれぞれのペアの稽古はお互いほとんど見てなかったんですよ、というお話でしたが、それ、絶対的に功を奏していたと思います!

スペインの雨は主に平野には降らないけれど

ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと 写真:東宝演劇部

ミュージカルからの楽曲でも比較的原曲のまま知られている曲と、翻訳されている曲の方が有名なものが多いものと分かれる印象がありますが、個人的には「マイ・フェア・レディ」は原曲のまま知られているのでは?という印象です。英語歌詞でのカバーやジャズアレンジなどもテレビやCMなどでよく流れています。

「ミュージカルはオリジナル言語派!翻訳版はちょっと・・・・」という人も一定数いるのも事実。翻訳ものはミュージカルに限らずニュアンスや原語の「ことば遊び」を背景知識なども含めて別の言語に落とし込むのがとかく難しい! ましてやプラスで歌となると「歌詞として・歌として成立させる」というところも。しかも今作はよりによって「ことば」の部分が話の主軸の作品です。

今回は2013年版から演出を手がけているG2さんが翻訳・訳詞、そして演出まで手がけられてます。演出家が翻訳、すなわち上演台本の部分も手がけているだけあって聞いてて「無理に日本語直訳した?」という違和感はありません。

「スペインの雨は主に平野に降る」の歌詞で覚えている人間(私含む)からすれば「そうきたかー!」という感じではあるのですが、「でもこのシーンはこの発音の練習しているんだからそこを外しちゃいけないよね」というのが「その翻案の発想はなかったわ!」と脱帽です。どう訳されているかは劇場でのお楽しみで。
そしてこのレッスンシーンなど、立ち位置やらなんやらの細かいところはそれぞれのチームでかえているとか。見比べ聴き比べ、必見です。

ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと、寺脇康文
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」朝夏まなと、寺脇康文 写真:東宝演劇部

今より少し良い暮らしをしてみたいと夢見てそのために自分を変えようと決めるイライザと、自分の理論の正しさを証明しようと挑むヒギンズ教授。前半戦の2人のぶつかり合いもそうですが、根底にあるのは「自分自身」への挑戦があるからこその白熱ぶりが舞台で繰り広げられます。
「この野郎、腹立つ!いつかやっつけてやる!!見てろよ!」とイライザが一人で歌い上げるシーンはやり込められている2人のやりとり・やり合いっぷりがあるからこそ「そうだそうだ、やっちまえ!」と思わずイライザにエールを送りたくなります。
そしてこの前半戦の白熱ぶりがあるからこその後半の「レッスンの結果」と今度は「ことば」ではなく「感情」に振り回される人間模様が際立ちます。
完璧な言葉、完璧な理論は例え実践できたとしても、感情に関してはどうもそうはいかない。そんな繊細な心情を2人が描き出しています。

コヴェントガーデンから大使館の舞踏会まで、イギリスファッションにも注目

ミュージカル「マイ・フェア・レディ」今井清隆 ほか
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」今井清隆 ほか 写真:東宝演劇部

イギリスが階級社会なのは言わずと知れたことですが、イギリスの上流階級文化といえば「帽子」!イライザがキービジュアルで身につけている衣装が出てくるアスコット競馬場のシーンでは観客たちの白と黒を基調にした、華やかな装いにも注目。女性陣の帽子も全員デザイン違うあたり、見応えあります。
このシーンだけでなく全てのシーンで衣装とにかく華やか!紳士ファッションであるところのスーツも部屋着、外出着、礼装とこちらもバリエーションが豊富。女性陣に目が行きがちですが、ヒギンズ教授もかなりお洒落です。

耳にも目にも麗しく、王道なミュージカル。
ハラハラドキドキ、時にはイライラ? ヤキモキ? させられながらも楽しめる作品です。

 本作は現在 東急シアターオーブで上演中。9月30日(日)まで上演された後、福岡、広島、大阪、愛知、大分で上演されます。
詳細は公式サイトで。

(文・藤田侑加

公演情報

ミュージカル「マイ・フェア・レディ」

脚本/歌詞:アラン・ジェイ・ラーナー
音楽:フレデリック・ロウ
翻訳/訳詞/演出:G2

出演:朝夏まなと/神田沙也加(Wキャスト) 寺脇康文/別所哲也(Wキャスト)
相島一之 今井清隆 平方元基 春風ひとみ 伊東弘美 前田美波里

石井雅登 上垣内 平 川島大典 小南竜平 佐々木重直 白山博基 管谷孝介 辰巳智秋 松村曜生 若泉 亮 内田このみ 大月さゆ 木村晶子 木村桃子 後藤祐香 鈴木結加里 華花 般若愛実 横岡沙季 吉田玲菜

2018年9月16日(日)~30日(日)/東京・東急シアターオーブ
2018年10月6日(土)~7日(日)/福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
2018年10月19日(金)~21日(日)/大阪・梅田芸術劇場メインホール
2018年10月24日(水)~25日(木)/愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2018年10月31日(水)~11月1日(木)/大分・iichikoグランシアタ

公式サイト
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」

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