佐藤佐吉大演劇祭 2018in北区

【21作品コンプリート!】「佐藤佐吉大演劇祭 2018in北区」全21作品 観劇レビューマラソン!

佐藤佐吉大演劇祭 2018in北区
佐藤佐吉大演劇祭

王子地区を中心に2017年2月から行われる佐藤佐吉演劇祭が開幕した。ここでは、全21作品について簡単な感想(レビュー)で振り返る。

佐藤佐吉演劇祭は2004年から隔年で開催され、2018年で8回目の開催となる。
メイン会場となる花まる学習会王子小劇場のほか、合計10か所が会場となり、20を超える団体が集い、演劇祭が繰り広げられる。

エントレは、「全作品の中から一番面白かったもの」を表彰する「エントレ賞」を提供予定です。全21作品を観劇予定なので、舞台写真と共に簡単な感想を随時公開していこうと思っています。

※2018年3月30日追記
21本全部観ました! これとこれは似ているという事は全くなく「みんな、やりたいことがいろいろなんだなあ」という、ごく当たり前の感想を持ちました。エントレ賞は後日発表します!

劇団スポーツ『グランマに伝えて、アニーは不死身。』

劇団スポーツ『グランマに伝えて、アニーは不死身。』

きっと少し未来、戦争状態の日本が舞台。戦争孤児となった若者たちの話なのだけど、少しずつ不思議な出来事が起こってくる。同棲、妊娠、出産といった、いつの時代でも変わらないテーマが盛り込まれていくなか、若者が作っているらしい勢いのあるせりふとギャグが散りばめられていました。

3/29(木)~4/1(日)/王子スタジオ1
劇団スポーツ 演劇祭の中のページ
Twitter:@gekidansport

クロムモリブデン『たまには海が泳げ!』

クロムモリブデン「たまには海が泳げ!」

とある犯罪者の家族と、犯罪の被害者の家族と、それに関わるジャーナリスト(作家)のお話なんですが、悲劇をいわゆる悲劇として演じて見せるわけではなく、劇団特有のテイストでもって料理しているという印象でした。「めちゃくちゃ独特なテイストの虚構性が高い作り物の世界」のように見えるのだけれど、犯罪者と被害者という実際にあり得るテーマなだけにリアリティも同時に感じていました。音楽や照明やシンプルな美術も、これらの世界観をとても引き立てていたように思いました。

3/20(火)~4/1(日)/花まる学習会王子小劇場
クロムモリブデン 公式サイト
Twitter:@Crome_molybdan

トリコロールケーキ 第10回公演『ヤシの木』

トリコロールケーキ「ヤシの木」

円形舞台の真ん中に、ヤシの木が置かれており、その周りにいる人たちの物語。・・・なのだが、なかなか不条理なテイストのせりふとギャグ、奇妙な妖精(あやかし?)、不思議な設定など、ヘンな世界観であふれていた。円形舞台なので、向かい側にいるお客さんの顔が見えたりするのだが、それぞれがそれぞれのタイミングで笑っていて、「ああ、みんなツボはいろいろなんだなぁ」と、ヘンな観察をしてしまった。不思議なお芝居でした。

3/21(水)~3/25(日)/北とぴあ カナリアホール
トリコロールケーキ 公式サイト
Twitter:@ToricoRollCake1

北区民と演劇を作るプロジェクト「未開の議場」

北区民と演劇を作るプロジェクト「未開の議場」

トメニア人という(おそらく架空の)外国人が多く住む街で、トメニア人と日本人が仲良くするためのイベントを企画している人たち。その会議の様子を描いたお芝居でした。
どうすればイベントがうまく行くかという事をみんなで議論しているはずなのに、だんだんと趣旨がズレていくのは現実の会議と似ていて、誰しも経験があるような光景でした。なにしろ煮詰まっていました。
真に「仲良くする」という事は、どういう事なのか?これは、人として生きていくうえでいつまでも無くならないテーマなんだろうなあと改めて感じました。答えが人それぞれ違うからなあ。

3/21(水)~3/25(日)/北とぴあ ペガサスホール
北区民と演劇を作るプロジェクト 公式サイト
Twitter:@kitakumin2018

遠吠えの、佐藤佐吉大演劇祭2018in北区参加作品『天国と地獄』

遠吠え「天国と地獄」

演劇部の女子高生のお話なんだけども、描いているのはその外側の話のように感じました。というのは、「なぜ演劇を続けているのか」「なぜ演劇を上演するのか」「演劇部を卒業しても、どうして演劇はやめられないのか」など、どうも作家である木村みちるさん自身の葛藤がここに現れていたような気がしたのです。幼稚園の砂場で「砂の山」を作っては壊していくという話が、仕込んではバラす演劇自体とリンクしていたり、劇中での作家が「端的に言葉で言えないから演劇を創るんだ」というようなせりふも、全てが木村みちるさんへ帰っていくような気がしたし、僕が「仕事をする意味」や、僕が「生きていく意味」を問いかけられているような気もしました。行きつく先が「天国」なのか「地獄」なのかは誰にもわからないわけですが。

3/20(火)~3/25(日)/王子スタジオ1
遠吠え 公式サイト
Twitter:@tooovoe

すこやかクラブ『逃げる男』

すこやかクラブ「逃げる男」

4人の男が、深夜にポテトチップを食べながら、何かに悩んでいるという感じでした。なんとなくネガティブなオーラが、ひしひしと伝わってくるというのか、そんなに切なくて悲しいことがたっぷりある生活を送っているのだろうかということを悩みながら観ていました。それにしても、ポテトチップはいろんな種類があるんだなあと、そんなことを考えていました。

3/15(木)~3/18(日)/王子スタジオ1
すこやかクラブ 公式サイト
Twitter:@sukoyakakurabu

劇団きらら『プープーソング』

劇団きらら「プープーソング」

熊本の劇団さんなので、東京で観られるのがまず貴重。レンタル彼氏や、葬儀の参列者の代行など、なんでも「代行する業者」でバイトする男の物語。依頼人の女性の「依頼」自体がなんとも今風で、現代の一部分をとてもうまく切り取って物語にしているという感じがしました。劇中、ところどころ方言(熊本弁?)になるので、よくわからないワードもあったりするんだけど、なんとなくあったかい気持ちになって観ていられるのが不思議でした。関西弁のお芝居とはまた違った味わいがあるというか、それも独特な面白さだったと思います。くだらないやり取りや、自分はこれでいいのか真剣に悩んでいるところ、嘘を取りつくろうところなど、人間らしさがたくさん詰まったお芝居でした。

3/16(金)~3/18(日)/北とぴあ カナリアホール
劇団きらら 公式サイト
Twitter:@gkirara

Mrs.fictions『再生ミセスフィクションズ2』

ミセスフィクションズ「再生 ミセスフィクションズ2」
Mrs.fictions『再生ミセスフィクションズ2』

短編4本が次々と上演。勢いではなく計算されたせりふと間で確実に笑わせてくれる、大人が安心して観に行けるコメディだなと感じました。そして、笑っているのに、最後ちょっとしっとりとした部分もあったりして、心をうまい具合に揺さぶってくれる。主宰の今村さんが「あの役」を担当しているところも上手だなあと思いました。さすがの安定感。

3/15(木)~3/19(月)/北とぴあ ペガサスホール
Mrs.fictions 公式サイト
Twitter:@Mrs_fictions

劇想からまわりえっちゃん『尊厳の仕草は弔いの朝に ~1・2・3ショットマンレイ~』

劇想からまわりえっちゃん『尊厳の仕草は弔いの朝に ~1・2・3ショットマンレイ~』
劇想からまわりえっちゃん『尊厳の仕草は弔いの朝に ~1・2・3ショットマンレイ~』

とにかく熱くて元気! 若い俳優さん達が発するエネルギーが高くて気持ちよく観劇できました。一幕は西部劇テイストの賑やかなお話で、二幕はこの続編になるんじゃないかと思っていましたが、ガラリとテイストが変わる。そのギャップに緩急があり、いい構成だなと思いました。ところどころに小ネタがはさまってくるのが大阪出身の劇団さんという感じ。刀と拳銃の立ち回りも迫力がありました。

3/14(水)~3/18(日)/王子小劇場
劇想からまわりえっちゃん 公式サイト
Twitter:@gekiso_07

果てとチーク『ヤギの身代わり』

果てとチーク『ヤギの身代わり』
果てとチーク『ヤギの身代わり』

特殊な設定を理解するのに少し時間がかかったこともあり、途中まで複雑な人間関係を追い切れずにいました。俳優さんたちの芝居がとても自然で、さらに、僕が普段新宿で仕事していることもあって、「こういう状況」がフィクションだと言い切れない感じがあり、かなり怖ろしかったです。大きく傾いた部屋が、異常な状況を良く表しているような気がしました。

3/8(木)~3/11(日)/花まる学習会王子小劇場
果てとチーク 公式サイト
Twitter:@hatetohoppe

劇団「地蔵中毒」第七回公演無教訓意味なし演劇vol.7
『「淫乱和尚の水色腹筋地獄」改め「西口直結! 阿闍梨餅展示ブース』

劇団「地蔵中毒」第七回公演 無教訓意味なし演劇vol.7 『「淫乱和尚の水色腹筋地獄」改め「西口直結! 阿闍梨餅展示ブース』
劇団「地蔵中毒」第七回公演 無教訓意味なし演劇vol.7
『「淫乱和尚の水色腹筋地獄」改め「西口直結! 阿闍梨餅展示ブース』

一体なんと言ったらいいのか、あまり体験したことのないお芝居でした。ほとんどのせりふに小ネタが挟まってきていて、クスっと笑いながらも、内容はなかなかダークな方向に向かっていっていて、少しエグい感じもしました。全体的に体当たり感のあるお芝居で、もしかしたら、演出家さんや役者さんたちは、何かをぶつけたい気持ちが強いのかもしれないなと、そんな事を思いました。

3/8(木)~3/11(日)/王子スタジオ1
劇団「地蔵中毒」公式サイト
Twitter:@zizouchudoku

X-QUEST『義経ギャラクシー ─銀河鉄道と五条大橋の999─』

X-QUEST『義経ギャラクシー ─銀河鉄道と五条大橋の999─』
X-QUEST『義経ギャラクシー ─銀河鉄道と五条大橋の999─』

源義経と弁慶が、銀河鉄道に乗って歴史を追体験する、というド派手なファンタジー作品。力強くてキレのある殺陣、ダンスがとても心地よかったです。牛若丸と弁慶の出会いのシーンから、那須与一の扇の的、勧進帳、弁慶の立ち往生など、超有名なエピソードがたくさん登場して、義経というのは、やっぱり日本史における悲劇のヒーローの一人なんだなあと思いました。幕末純情伝をほうふつとさせる部分で、一人で声を出して笑ってしまいました。

3/8(木)~3/11(日)/北とぴあ つつじホール
X-QUEST公式サイト
Twitter:@babaquest

LiveUpCapsules『見晴らす丘の紳士』

LiveUpCapsules『見晴らす丘の紳士』
LiveUpCapsules『見晴らす丘の紳士』

渋沢栄一氏の伝記のようなお話でした。王子の飛鳥山公園は子供とよく行っていて、渋沢栄一記念館があるのは知ってましたが、こんな人だったとは。
6人の男性キャストが次々に著名な会社の社長や創業者を生き生きと演じていくのは見事でした。明治の初めは混沌としていて、希望や未来、失敗と挫折がたくさんあったんだろうな、と、思いを馳せていました。

3/7(水)~3/11(日)/北とぴあ ペガサスホール
LiveUpCapsules公式サイト
Twitter:‎@Super_himawari

シラカン『坦々とおこり』

シラカン「坦々とおこり」
シラカン『坦々とおこり』

「他者の死を悲しむべきか?」、「悲しみは他者の指導で増やせるか?」。
亡くなったおじいちゃんの葬儀に出なかった娘を、兄弟や母が責めるところから芝居が始まり、「坦々と」というタイトル通り、じっくりと演じられているように感じました。

3/7(水)~3/11(日)/北とぴあ カナリアホール
シラカン公式サイト
Twitter:@coelacanth91012

ぬいぐるみハンター『ゴミくずちゃん可愛い』

ぬいぐるみハンター「ゴミくずちゃん可愛い」
ぬいぐるみハンター『ゴミくずちゃん可愛い』

世界各地で、企業が先導して戦争を行っているという、少し未来のお話。ゴミが集まってくる谷には、ゴミがたまって山になってしまっているという描写からも、ちょこちょこと社会風刺的な表現が出てきていたように感じました。このお芝居、飛鳥山公園の野外舞台で行われていたので、途中救急車が通ったり、北区全域に流れる夕方の放送が流れてきたりしたけど、それが逆に戦争の中にあるゴミの山に響いて妙になじんでいました。
お芝居が進むにつれて、次第にあたりが暗くなっていくのも、次第に気温が低くなって寒くなっていくのも逆に演出効果に含まれているようで、面白い体験でした。

3/3(土)~3/4(日)/飛鳥山野外舞台
ぬいぐるみハンター 公式サイト
Twitter:@nuigurumihunter

天ぷら銀河「日本語姦」

天ぷら銀河「日本語姦」
天ぷら銀河「日本語姦」

あるエロエッチ小説を書いている作家が書けなくて悩んでいるところから芝居がスタート。早速小説の中のキャラクターが舞台に登場してくるので、それだけで期待が膨らんでくる。
せりふの中にしょっちゅうギャグが挟まれていて、細かいネタに何度も笑ってしまった。
満月、TSUTAYA、マクドナルド。ファンタジーのような日常のような小説のようなお芝居でした。

3/1(木)~3/4(日)/花まる学習会王子小劇場
天ぷら銀河 公式サイト
Twitter:@tempuraginga

ウンゲツィーファ「転職生」

ウンゲツィーファ「転職生」
ウンゲツィーファ「転職生」

劇中でもはっきりとは説明されなかったように思いますが、太い音声用のケーブルをひたすら巻いている人たちが登場するので、きっと映像や音声の技術会社のスタッフルームでのお話。若者たちがとてもしんどそうに、つまらなさそうに仕事をしていて、そして未来への希望もほとんどないという状況が続くので、なんともいやーな気持ちになりました。現代の若者は「そうそう、そうなんだよ!」って共感するのでしょうか。だとしたら、切ない世の中なんだなぁと感じました。

2/28(水)~3/4(日)/王子スタジオ1
ウンゲツィーファ公式サイト
Twitter:@kuritoz

CITA『EMOTO』

CITA「EMOTO」
CITA「EMOTO」

ほとんど言葉を使わずに、ある男(研究者?)の気持ちを描いた作品。
もしかしたら男の心の中でだけ起こっている出来事だったのかもしれない。水に感情がある、と、信じている男はきっと他の人には信じてもらえず、辛い人生を送っているのかもしれない。
動きはどれもしなやかで、きれいだなと思いました。

2/27(火)、2/28(水)/北とぴあペガサスホール
CITA 公式サイト
Twitter:@CITATheatre

演劇組織 KIMYO「ゴスン」

演劇組織KIMYO「ゴスン」
演劇組織KIMYO『ゴスン』

幕末、何度も何度も脱獄を繰り返した五寸釘寅吉の壮絶な人生を描いた話。狭い空間を目一杯使って、殺陣あり、踊りありのエンターテインメントでした!
いろいろな方法で獄中から逃げるシーンはドキドキするし、その脱獄を繰り返す理由を考えると切なくて、「頑張って!」と思ったり「もう、いいじゃないか、寅吉!」と思ったり、何度も心揺さぶられました。ものすごく客席と舞台が近いので、鍛えられた俳優さんの筋肉の躍動、鬼気迫る表情を間近で味わえます。

2月22日(木)~25(日)/王子スタジオ1
演劇組織 KIMYO「ゴスン」 演劇祭のページ
Twitter:@engeki_kimyo

ピヨピヨレボリューション『疫病神』

ピヨピヨレボリューション「疫病神」
ピヨピヨレボリューション『疫病神』

音楽も歌もダンスも派手で楽しい。芝居の途中で感情がたかぶってきたところで歌に入っていくタイミングも気持ち良かったです。自分の中の感情・・・、僕は何人くらいいるんだろうか?
どうやら今年はたくさん(12か月連続!?)やられるようなので、他の演目も観てみたくなりました。

2月21日(水)~25日(日)/北とぴあ つつじホール
ピヨピヨレボリューション 公式サイト
Twitter:@piyorevo

鬼の居ぬ間に『人魚 ―死せる花嫁―』

鬼の居ぬ間に『人魚 ―死せる花嫁―』
鬼の居ぬ間に『人魚 ―死せる花嫁―』

「海が荒れたら女性を生贄に出して海の神様の怒りを鎮める」、という、昔話に出てきそうな漁村でのお話。
全編に渡ってものすごくシリアス。村の掟に従うという事が、そんなに大事なの?晴れた時に逃げれば?と、浅はかに考えて観ていました。僕はこの村の生まれじゃなくて良かった。
ああ、それにしても、とてもリアルでした。

2月21日(水)~2月26日(月)/王子小劇場
鬼の居ぬ間に 公式サイト
Titter:@onino_inu_mani

(文:森脇孝/エントレ編集部)

公演情報

佐藤佐吉大演劇祭 2018in 北区

期間:2018年2月21日~4月1日 計40日
会場:
花まる学習会王子小劇場、王子スタジオ 1、飛鳥山能舞台
北とぴあ さくらホール・つつじホール・ペガサスホール・カナリアホール、北とぴあ 特設ステーション、サンスクエア広場、BASEMENT Monster

公式サイト
佐藤佐吉大演劇祭 2018in 北区

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