今思い出しても力が入る 烏丸ストロークロック『まほろばの景』観劇レビュー
2018年2月『まほろばの景』京都公演 撮影:東直子烏丸ストロークロック『まほろばの景』観劇レビュー
烏丸ストロークロック『まほろばの景』、お誘いをうけて観劇しました小暮智美です(青年座/On7)。
まずは一言…
観てよかった!出逢えてよかった! そう素直に思いました。
この観劇レビューを書く前に 観劇した皆さんの感想を探して見ていましたら 皆さんの感想の言葉達が力強くて豊かで…あぁこの作品がそれらの言葉達を引き出したんだなぁと妙に納得してしまったのです。
さて舞台は、上から何枚もの羽衣のような薄い布が幾重にもにも垂れ下がって 風に揺れるか揺れないか 奥が透けそうで透けない。その間をこれから芝居をするであろう役者さん達が歩いて見え隠れしている。
何が始まるのかな~という静かなシンとした時間から始まります。
山登りの格好の男性が修験者のような方と出逢う所から物語は始まります。
徐々にこの男性が人を探しているということ、仙台出身で先の東北の大震災で被災していること、熊本の震災のボランティアをしていること、、少し遠い過去と近い過去と現在を行き来しながらも、山を登るということをベースに物語は紡がれます。
舞台上に現れるどの時間にも 虚しさや孤独 愚かさや強さがサックりと表れる。
声高に言わないからこそ それがどうしようもなく現れてしまう、そんな時間を味わいました。
そしてその時間が地層のように重なっていきます。
それは山登りをしている男性の精神の負荷となって 観てる側に言い知れぬ圧迫とそれでも生きていくことの残酷さと力みたいな…、目に見えないものを こちらに体感させます。
目に見えないものの正体を突き止めるならば芝居の中で扱われる、東北神楽、山岳信仰なのだろう。
そして生演奏も忘れてはいけない。神楽の動きが人間の気持ちと相まって高まったり、哀しかったり。。
世代を越えてその土地に繋がってきた神楽にかつてここで生きた人々の想いを感じて 物語の世界を飛び越えて 遠い誰かと対話しているような感覚さえするのです。。
目の前で芝居は観てるのに… 不思議。とにかくよほど集中して観ていたのでしょう。
沢山のアイディアが散りばめられているのですが それがただのアイディアにとどまらず 作品の血肉となり融け合っているのが たまらずに好きでした。
作・演出の柳沼昭徳さんは緻密な取材とフィールドワークをもとに短編作品上演を重ね 長編作品を創りあげるそうで、この作品も仙台で滞在・取材して創作したそうです。この情報は観劇の後に知ったのですが なるほどと深く頷いてしまいました。
柳沼さんや烏丸ストロークロックの皆さんが向かい合ってきた膨大な時間と関わりが舞台上で作品となり化けたような気がしました。
こんな方と作品を創りたい!と、恐れ多いながらも本当に思いました。
芝居の最後は どこに気持ちをぶつけたら良いのか分からない男性が必死に山を登ります。あ、もしかしたら山が受けとめてくれていたのですね。
でも観劇してる時はそんな事まで頭は回りません。
ヘロヘロだろうに もう気持ちも限界だろうにという一人の男性を 客席の皆が山の頂きにあがるのを見守っていたと思います。
それでも人間は生きていくのです…
はー。。
今思い出しても力が入ります(笑)
本当にエネルギーを沢山使いながら観劇させて頂きました。
烏丸ストロークロックさん、京都の劇団さんです!
ですが 沢山全国各地で芝居しているようです 是非 まだ未観の方はこの世界を味わって観て欲しいです!!
充実の時間をありがとうございました!!
烏丸ストロークロック『まほろばの景』
【作・演出】柳沼昭徳
【音楽・演奏】中川裕貴
【出演】
阪本麻紀 澤雅展
角谷明子 小菅紘史(第七劇場) 小濱昭博(劇団短距離男道ミサイル) 松尾恵美
2018年2月9日(金)~11日(日・祝)/京都・ロームシアター京都 ノースホール
2018年3月1日 (木) ~3月4日 (日)/東京・東京芸術劇場
公式サイト
烏丸ストロークロック