2017.7.18

『死』を多く扱う中に強く『生』を感じる! ミュージカル「RENT」観劇レビュー


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ミュージカル「RENT」舞台写真 写真提供:東宝演劇部
ミュージカル「RENT」舞台写真 写真提供:東宝演劇部
 

『死』を多く扱う中に強く『生』を感じる! ミュージカル「RENT」観劇レビュー

 
『RENT』は1996年2月にオフブロードウェイで初演されたのが大成功し、同年4月にブロードウェイに舞台を移して以来今日までに日本を含む世界15カ国で上演されてきたミュージカル。2005年にはハリウッドで映画化されており、もはやミュージカルを代表する1作品です。日本では1998年の初演以来7回目の上演。前回の2015年の上演と同じく、オリジナルバージョンの演出家・マイケル・グライフによる新演出版です。

ミュージカルが好きで舞台の仕事を志すようになった私としては珍しく、色々な人から勧められていたにも関わらず今回が初の『RENT』観劇。曲だけの抜粋も聴いたことのない完全初見です。


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※こちらの動画は堂珍さんが出演したBチームのゲネプロより

 

作品の持つ強いメッセージ

ストーリーは1830年代のパリが舞台のプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を1989年のクリスマス・イブから1990年のクリスマス・イブまでの1年を「ニューヨークのボヘミア」とも呼ばれたマンハッタンのイーストヴィレッジに置き換えて展開されます。今やイーストヴィレッジは90年代のジュリアーニ元市長による再開発により現在では高級住宅街となりつつあり、初演の1996年から見た1989年は同時代的・コンテンポラリーな作品だったのにもはや初演から20年近く経た今では『過ぎ去りし華やかなりし時代』な作品なのかもしれません。しかしながら、作品の持つメッセージ性は今でも強く、セクシュアルマイノリティに限らないマイノリティ、薬物、差別について20年経って私たちの認識は変わったのか?と問われているような作品です。

1幕の特に前半、家賃が払えないのを嘆くシーン”Rent”やミミ(ジェニファー)がロジャーの部屋を訪ねてくる”Light My Candle”のシーンはまさに現代版『ラ・ボエーム』ですが、元ネタは知らなくても全然問題ないし、逆に意識しないほうが楽しめます。
クリスマス・イブがストーリーの始まりなので、下手側、天井近くの舞台セットには『くるみ割り人形』がチラリ。

 
本作品の語り手となってる映像作家のマーク(村井良大)はユダヤ系という設定、そしてビデオカメラを回しているところからいわゆるアメリカ的な表現で言うと『ナード(オタク)』。ジョックス文化が取り上げられるアメリカにおいて登場人物がだいたいナード。ミュージシャンのロジャー(超新星・ユナク)、大学教授のコリンズ(光永泰一朗)、ハーバード卒インテリ弁護士のジョアンナ(宮本美季)もナードの枠内。もう諸々の設定からしてアメリカのマジョリティに喧嘩売ってる感じがすごく面白い!

 

生演奏とパワーあふれる歌声、そしてダンス!

そしてオペラを下敷きにしてるだけあって、普段のセリフの部分も歌だったりするので全編ほぼ歌。しかもかなりパワーのある歌なので、役者陣がメイン・アンサンブル全員歌のうまさがむき出しに!
1幕ラスト、ボヘミアンたちが溜まり場のカフェで歌う”La Vie Boheme”(日本語訳でもかなり韻を踏んで作詞されているオリジナルが伝わる歌詞!)、2幕の”Seasons of Love”は全員参加のゴスペルナンバー。この作品を象徴する曲で繰り返し流れるモチーフなのですが、やっぱり全員で歌われると迫力が段違い。
合唱シーンもさることながら、各人物、そしてそれぞれの持つ人間関係において互いに感情をぶつけ合うシーンもとても劇的。個人的には2幕の”Take me or Leave me”で2012年版からモーリーン役の上木彩矢と2015年版からジョアンナ役の宮本美季によるレズビアンカップルの愛憎ぶつかり合う応酬が「女同士」だからこそのえげつなさや愛おしさが舞台から伝わってきて思わず拍手。二人とも初役ではない経験値と、歌手として活動してるからこそ技術に裏打ちされた表現で魅せてきます。

 
そしてミュージカルで忘れてはいけないダンスシーン。ドラァグ・クイーンのエンジェルのダンスもミミの激しいソロパフォーマンスも1幕のハイライト。舞台を文字通り縦横無尽(どう縦横無尽なのかは会場で!)に踊り狂ってます。1幕があるからこそ2幕の人間ドラマが『死』を繰り返し扱っているけれど、いやだからこそ『生』を強く感じさせます。

 
そして観どころならぬ聴きどころは演奏が生バンドというところ!ステージは2階構造になっていて、奥には生バンドが待機してそこで生演奏を披露。ミュージカルというよりライブを聴きにきている感覚です。
そして曲はロックンロールからタンゴ、R&Bにゴスペルとジャンルも幅広く網羅。
ミュージカルを見たことない人、むしろ抵抗感がある人にこそ見て欲しい現代にも通じる舞台です。

 
このレビューを書いたのは

藤田侑加
兵庫県神戸市出身。武蔵野美術大学で舞台美術を専攻後、卒業後演劇の制作として活動を開始。現在はフリーで演劇の企画・広報・制作から海外の演劇祭などにも参画中。
ホームページ

 

公演情報

ミュージカル「RENT」

【脚本・歌詞・音楽】ジョナサン・ラーソン
【演出】マイケル・グライフ

【出演】(★は初参加キャスト)
マーク役・・・村井良大
ロジャー役・・・堂珍嘉邦/ユナク(超新星)
ミミ役・・・青野紗穂★/ジェニファー
コリンズ役・・・光永泰一朗★
エンジェル役・・・平間壮一/丘山晴己★
モーリーン役・・・上木彩矢/紗羅マリー★
ジョアンヌ役・・・宮本美季
ベニー役・・・NALAW(CODE-V)★
新井俊一、千葉直生、小林由佳、MARU、奈良木浚赫、岡本悠紀

2017年7月2日(日)~8月6日(日)/東京・日比谷シアタークリエ
2017年8月10日(木)/愛知・愛知県芸術劇場大ホール
2017年8月17日(木)~22日(火)/大阪・森ノ宮ピロティホール
2017年8月26日(土)~27日(日)/福岡・福岡市民会館

公式サイト
ミュージカル「RENT」

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