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舞台『BIRTHDAY』開幕目前!夫の妊娠出産、現代社会の問題を突く傑作コメディ!演出・大澤遊さんと海外戯曲シリーズを企画プロデュースする筒井未来さんにインタビュー!

本多劇場グループ×海外戯曲シリーズ第4弾。『BIRTHDAY』が7月24日(水)から新宿シアタートップスで上演される。演出家・大澤遊さんと海外戯曲シリーズをプロデュースする筒井未来さんにインタビュー取材した。

本多劇場グループ×海外戯曲シリーズ第4弾となる『BIRTHDAY』は2012年にイギリスで初演されたJoe Penhallによる戯曲。近未来には起こりうるような、夫が妊娠出産するという選択をした夫婦と、病院スタッフの会話を通し、NHS(国民保険サービス)の問題や白人ミドルクラスによる人種差別、男性目線で作られた現代社会の問題を突く皮肉の効いたコメディ作品だ。
2021年9月には新宿シアタートップスのオープニングシリーズとして本邦初訳のリーディング形式で上演。今回は満を持して本公演として再び新宿シアタートップスで『BIRTHDAY』が幕を開ける。出演は阿岐之将一、宮菜穂子、山崎静代、石山蓮華。

今回は開幕直前ということで稽古場にお邪魔し、演出の大澤遊さん、プロデューサーの筒井未来さんのおふたりにインタビュー取材し、制作過程や舞台『BIRTHDAY』について伺った。


左から大澤遊、筒井未来

海外戯曲シリーズが生まれた経緯について聞かせてください

海外戯曲シリーズとは、真摯な創作姿勢と戯曲を深く読み込む演出に定評のある大澤遊、戯曲翻訳の若き旗手として存在感を発揮する小田島創志、本多劇場グループがタッグを組み、海外戯曲の作品をお届けする企画である。

本多劇場グループ・筒井未来(以下、筒井):そもそもは海外戯曲シリーズが始まる前に、伊礼彼方さん主催の『ダム・ウェイター』の公演(※1)を行っていたんですね。あれが海外戯曲シリーズの1回目になりましたね。後付けで。
演出家・大澤遊(以下、大澤):そのとき筒井さんから「本多企画として、翻訳劇シリーズ続けていきたいと思っていてよかったらやってみませんか」「面白い作品ありますか、今度話しましょ」とお声掛けしていただいて。
筒井:当時、本多劇場グループで翻訳劇をやると思わなかったって言われたんです。周りの皆に。それで続けていきたいなと思いました。
ーーこの海外戯曲シリーズでタッグを組んでいる小田島創志さんはどのような流れで。
筒井:『ダム・ウェイター』ってピンターが書いてて、翻訳家の小田島創志さんはハロルド・ピンターの専門家なんです。その時は、別の方が翻訳した上演台本をお借りしてたんですが、「次やるときは誘ってください」って声をかけてくれたことがきっかけで、一緒にやろう、ということになりました。

筒井未来

日本の戯曲ではなく海外戯曲を選んだ理由は

筒井:今は結構うちの小規模な劇場でもやっているんですが、海外戯曲ってあの当時は世田谷パブリックシアターとか新国立劇場とか大きな劇場で商業ベースのところで、しっかり作り込んで大々的にやらないとできないっていうイメージがあったので、そうじゃなくて小さいうちみたいな劇場で最低限のセットで、もう少し皆がとっつきやすく、若い演劇人にも興味を持ってほしいなという想いが、総支配人の本多愼一郎にあったことが一番の理由です。
大澤:下北沢って小劇場の街で、自分たちで作・演出の作品が多い中、翻訳劇はなかなかやってないイメージは確かにありましたね。
筒井:コロナ禍になって、みんなが集まって新作をやるのが難しいっていうのもあって、翻訳劇の少人数のものを選ぶ人が当時に比べたら増えたんだと思います。

制作過程について聞かせてください

ーー戯曲はどのように選んでいますか

大澤遊
筒井:大体1年半から2年前に大澤さんと創志さんが嬉しそうにペーパーバック(戯曲)をいっぱい持って来て、英語の授業が始まるんです(笑)
2人はいいけど、最後に「どれが面白かったかジャッジして」って聞かれるんですが、ジャッジするほど私の理解が追いついていかない。
大澤:『BIRTHDAY』も『ULSTER AMERICAN』(※2)もそうなのですが、イギリスの本屋は戯曲がおすすめされてる棚があるんです。ナショナルシアター(国立劇場)にもそういうブックショップがあって、いつも「何か面白いものないかな」って戯曲を探すのが楽しい。
例えば下北沢で今、何本か公演やってるじゃないですか、ナショナルシアターだと、その戯曲がほぼ売ってる感じです。
筒井:「只今上演中の戯曲」みたいなことですか?
大澤:その時、ウエスト・エンド(※3)とかでやってる作品がほぼペーパーバックになって置いてある。だから、おすすめの作品を見つけて、それがやっていれば観にもいけるし、今は上演してないけど、○○劇場でやってたよみたいな感じでコメント付きでおすすめされてたり。
そのうちの2本です。『ULSTER AMERICAN』と『BIRTHDAY』は。
筒井:文化が違うんですね。今でこそ台本を売ってる団体さんは結構いるけどそれでも本番中にロビーでだけですよね 。例えば下北沢で言ったらそれこそ”観劇三昧”で売ってて「この公演今やってるよ」というようなことですよね。そういう文化ないですよね。
大澤:そうですね。

「BIRTHDAY」の原作台本
ーーキャスティングはどのように決めているのですか
筒井:基本的には大澤さんが考えてます。
大澤:今まで2本とも、僕がこの人たちとやりたいと言った人たちもいますが、必ず僕は筒井さんが提案して下さった方を1人はキャスティングするようにしています。
筒井:そういってくださるんです。
大澤:新しい出会いもしたいし、あとやっぱり自分の感覚とは違う役者さんと、どんな創作ができるかなみたいな楽しみもあるし、それが結構毎回ハマってると僕は思います。うまくできてるなというか、僕だけで考えてたキャスティングにちゃんとスパイスがかかってる。
筒井:稽古始まるまでは大変なわけですよ。キャスティングをする段階では英語の戯曲しか私の手元にないんです。戯曲をちゃんと読んでないと全然とんちんかんなことを言っちゃう可能性があるんです。その中で何人か私が候補を出して、大澤さんとキャスティングしていく。決まるまではね、吐きそう(笑)
大澤:でもそのキャスティングの時間も面白いですよね。

稽古について聞かせてください

大澤:作家が狙ってるものの面白さが、ハマってきたというか、みんなの理解と、作品の持ってるエネルギーが、うまく重なっていて、笑える要素も増えたし、いい感じで育ってます。
筒井:前回リーディングを行ったときに、学校でよく「朗読」っていうのがあるけど、リーディングってこんなに違うんだなっていう感動がありました。今回は、ほぼほぼ脚本は変わってないのに全然違う作品になりそうです。 なのでぜひ、リーディングを観た人ももう一回観てほしいです。
大澤:役者の3人は前回と一緒だけど、その3人がやっぱり前回よりも理解が深まってるし、その役で生きてくれてるから面白い。
筒井:こんなに違う?っていうぐらい違う話になってると思います。
大澤:そして、将一くんがやっぱり、いいスパイスになってくれてます。
筒井:(阿岐之将一さん)ご本人は始める前、みんなが出来上がってるところに入っていくのは…、って仰っていたけど、そんな事はないですよね。
大澤:再演って同じものを繰り返すんじゃなくて新しいものを作っていく方が僕はいいと思っていて、そこに彼が入ることで新しい『BIRTHDAY』が生まれている、そういう感じがしていて嬉しいです。
将一くんのエドは(初演でエドを演じていた)亀田さんと全く別物だし、それは素晴らしいことだと思う。結局また読み合わせを最初からしていくから、土台は全員一緒というか、皆で新しい視点でこの作品と向き合えてるなという実感があります。
筒井:実は再演を一番望んでたのは亀田さんなんです。観たら多分悔しがると思います(笑)
ーー稽古のフィードバックの際、必ず演出席から立ち上がられるのが印象的でした。
大澤:僕はここ(演出の椅子)でずっと座りながらやってるような偉い人じゃない。役者と一緒に作ってるっていうこと。僕はこっちで見させてもらい、みんなでそのシーンを振り返っていくときは、やっぱりみんなと同じところに立って一緒に話すスタイルがいいと思うんです。
筒井:大澤さんの現場ってみんな誰1人置いていかない、全員で話し合って作っているというイメージ。役者たちも萎縮することなく大澤さんにこうじゃないかなって提案もできるし話し合えるし、かつ穏やかな現場っていうイメージがあります。切羽詰まっていても穏やかです。
それが実現できるのはすごいと思っています。それが稽古場での大澤さんの立ち方や意識で、大澤さんの性格が現れていると思います。
ーー穏やかなのに稽古場での熱量の高さがビシバシ伝わってきました。
大澤:みんな芝居が大好きすぎるんですよ(笑)

 


左から宮菜穂子、大澤遊(『BIRTHDAY』稽古場より)

左から大澤遊、阿岐之将一(『BIRTHDAY』稽古場より)

左から山崎静代、大澤遊(『BIRTHDAY』稽古場より)

左から石山蓮華、宮菜穂子(『BIRTHDAY』稽古場より)

最後に、この作品の見どころや、メッセージをいただけたらと思います

大澤:やっぱり、男女逆転しての出産っていうところが物語の1個の柱としてはあるんだけど、男女の性差の問題として取り上げてるというよりは、みんなが選択できる多様性を提示している作品なんだっていうところを、楽しんでもらえたらいいなと思っていて。
ジェンダーの問題を超えて、それぞれの、人としての幸福って何だろうみたいなことを、最後に考えられるような作品になるんじゃないかなと僕は思ってます。それが伝わるといいな。
筒井:ジェンダーの問題ってほおっておくと、権利の主張に行きがちですよね。思いやり合って、お互いを理解してあげて、補い合えればいいのになって私は思っています。
大澤:その通りです、ほんとに。
筒井:それこそ下手すると、男性が妊娠出産って、言葉を選ばなかったらキワモノ的な話に捉えられちゃうんです。だけど、今回のパターンみたいに妻の体に負担をかけちゃいけないから「僕が」っていう夫婦も、そんなに遠くない未来に出てくるんじゃないかなって気がしています。

筒井未来
大澤:『BIRTHDAY』ではその選択のひとつを見せてるだけで、それぞれ皆にいろんな選択肢があって何を取るか、それは、個人で選ぶかもしれないし、パートナーと一緒に選ぶという選択もあるだろうし、その可能性をいっぱい持っておくと、それを楽しめる。そんな世の中になっていくといいなって思ってます。

大澤遊
ーー終始和やかに、楽しそうに創作について語るお二人から、今作への思い入れや意欲が伝わってきた。新しい『BIRTHDAY』が新宿シアタートップスで幕を開ける。ぜひ劇場に足を運んで楽しんでいただきたい。

『BIRTHDAY』稽古場より

後列左から石山蓮華、山崎静代、大澤遊、小田島創志、前列左から宮菜穂子、阿岐之将一
(※1)本多劇場グループnext『ダム・ウェイター』は2021年3月下北沢 小劇場楽園にて上演。演出:大澤遊、制作:筒井未来。主催者はKANATA LTD.Co., Ltd.
(※2)海外戯曲シリーズ第3弾。イギリス発のブラックコメディ。翻訳:小田島創志、演出:大澤遊、企画制作:筒井未来。2024年4月下北沢 「劇」小劇場にて上演。
(※3)ウエスト・エンドは、イギリスの首都ロンドンにおける地区名。劇場や歌劇場なども多く、ニューヨークの”ブロードウェイ”と対照させ、ロンドンのミュージカルを”ウエスト・エンド”(West End theatre、ウエスト・エンド・シアター)と称することもある。
STORY
エド(夫)とリサ(妻)にまた子供が生まれようとしている。
妊娠しているのはエド。
NHS(国民保険サービス)管理下の病院で帝王切開に臨もうとしているが、
病院は人員不足でなかなか対応してもらえない。
ようやくやってきた助産師のジョイスにイライラする2人。
そこに研修医のナターシャが現れ、「胎児の首にへその緒が巻き付いてる」と告げる。
エドは無事に出産できるのか・・・

本作は7月24日から東京・新宿シアタートップスで上演される。
詳細は公式サイトで。
https://www.honda-geki.com/birthday

(文:二ツ森恵美 監修:エントレ編集部)

公演情報

本多劇場グループ×海外戯曲シリーズ第4弾 『BIRTHDAY』

【原作】Joe Penhall
【翻訳】小田島創志
【演出】大澤遊
【出演】阿岐之将一(ワタナベエンターテインメイト)・宮菜穂子・山崎静代(吉本興業株式会社)・石山蓮華

2024年7月24日(水)〜7月30日(火) /全10公演
7月24日(水)19:00
7月25日(木)14:00/19:00
7月26日(金)14:00/19:00
7月27日(土)15:00
7月28日(日)13:00
7月29日(月)14:00/19:00
7月30日(火)14:00

会場
東京・新宿シアタートップス

公式サイト
https://www.honda-geki.com/birthday

チケットを探す
http://confetti-web.com/@/birthday-hondageki

公式X
https://twitter.com/honda_geki_p

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