ミュージカル『20世紀号に乗って』

ブロードウェイの名作『20世紀号に乗って』NEWS増田貴久主演で上演!舞台挨拶&観劇レビュー

ミュージカル『20世紀号に乗って』
ミュージカル『20世紀号に乗って』写真提供/阿部章仁、井野敦晴

まず始めに、今作は、主演の増田さんの良さが最大限活かされた作品であることをお伝えしておきます!(以下、親しみも込めて愛称である「まっすー」と呼ばせていただきます)
そして、かく言う私は、特別まっすーが好き(推し)なファンというわけではなく(失礼な意味はなく)好きでも嫌いでもないフラットな状態で、一ミュージカルファンとして今作を観させて頂きました。
これまでの私のまっすーに対する印象は「アイドルグループの中でも歌が上手い人、バラエティ番組にもよく出ていて明るい人」というイメージでした。もちろん、ダンスを踊ったり、ドラマに出演されていることも知っていましたが印象は強くありませんでした。

ミュージカル『20世紀号に乗って』
ミュージカル『20世紀号に乗って』写真提供/阿部章仁

が、しかし!!!作品を観ていくうちに、まっすーの明るさ、快活さ、ポジティブさ、エネルギッシュさがぴったりな役柄と、彼の伸びやかな歌声、ダンスやアクロバットをはじめとするパフォーマンスやポテンシャルの高さにどんどん引き込まれ、くるくる変わる表情や満面の笑顔、ユーモアセンスにいつの間にかこちらも笑顔になっていて、観終わる頃にはすっかりまっすーが好きになっていました(笑)!
演者としての魅力に溢れ、ミュージカル俳優として素晴らしい才能を発揮されていて、演出・振付のクリス・ベイリーさんが今作で再タッグを組みたくなる理由がわかりました。
ゲネプロ前の舞台挨拶でクリスさんは、まっすーについて「素敵なエネルギーをカンパニーに振りまいている!フロントマンとして中心にいる必要があるが、それ以上に頑張っている!」と座長ぶりを絶賛していました。また、まっすーはクリスさんに対し「1,2個聞いたつもりが20も30も答えやヒントをくれ、細かく丁寧に教えてくれる!知識力や情報量も多く、優しく導いてくれる」と信頼している様子でした。会見はお二人を中心に他のキャストの皆さんと笑顔溢れる内容で、カンパニー全体の空気感の良さが舞台に反映されているようでした。

ミュージカル『20世紀号に乗って』ミュージカル『20世紀号に乗って』写真提供/阿部章仁

今作はトニー賞5部門を制覇したブロードウェイの名作で、日本では1990年に初演され、5年ぶりに上演となる作品です。 
舞台は世界恐慌を脱出した1930年代初頭のアメリカ。まっすー演じるオスカー・ジャフィーはかつてはブロードウェイの花形プロデューサーでしたが、多額の借金を抱えて落ち目にいました。しかし、ポジティブなオスカーはある作戦を思いつき、マネージャーのオリバーと宣伝担当のオーエンとともに、世界一と謳われる豪華客室を備えた高級列車「特急20世紀号」に乗り込み、再起を図っていきます。
オスカーは野心家で1度ならず4度も失敗しており、普通なら諦めてしまいそうな状況でも、未来に失望することなくチャレンジし続ける姿や鼓舞する言葉には勇気をもらえます。また、オスカーは周りを巻き込むタイプですが、まっすー自身の人柄もあるのか憎めないキャラクターとなっています。華やかでドタバタ感溢れるストーリーは難しいことを考えずに素直に楽しめる内容でした。飽きさせない展開と凝った舞台演出、静と動のバランス、キャストやダンサーの皆さんの掛け合いやテンポが良く「ミュージカルは面白い!」と思わせてくれる、わくわくする作品でした!
ポップでエネルギッシュなダンスや歌はカロリー消費量が半端ないほど全身全霊で表現され、キャスト一人一人が本当に活き活きしていてパワーに溢れていました。

ミュージカル『20世紀号に乗って』
『20世紀号に乗って』/阿部章仁

ここで、主演のまっすー以外のキャストの方も素敵だったのでご紹介しますね。
ヒロインであるオスカーの元恋人リリー・ガーランド役は宝塚歌劇団出身の珠城りょうさん。大女優になる前のあか抜けない眼鏡姿から、ハリウッドの大女優になり華やかなドレスを着こなすお姿まで色んな表情の珠城さんを楽しむことができます。とにかく珠城さんの手足の長さやスタイルの良さ、長身を活かした数々のお衣装は舞台映えし見応えがありました。特にブロンドの髪に白のロングドレス姿はマリリンモンローを彷彿とさせるようで、指先から背中まできめ細やかで透明感のある美肌には同性ながら見惚れました。最後のお衣装も麗しくお似合いでしたがネタバレになるのでここではお伝え出来ず残念ですが…ぜひ劇場でお楽しみください!

ミュージカル『20世紀号に乗って』
『20世紀号に乗って』/阿部章仁

ベテラン戸田恵子さんは、主人公オスカーが20世紀号に居合わせた乗客の一人で、物語のカギを握るレティシア・プリムローズという大富豪を演じます。上品なラベンダーのお衣装とお帽子が良くお似合いで、とにかくチャーミング!安定した美声とコメディエンヌぶりが舞台で一際輝いており、とても惹きつけられました。
舞台挨拶では、まっすーとお仕事をされるのは20年ぶりということで、座長として皆を引っ張る姿に頼もしさを感じ、母のように見守っていると仰っていました。また、まっすーの身体を気遣い、手作り弁当を差し入れしたというエピソードは、まっすーの実のお母様が焼きもちを焼く程だったそうです(笑)

ミュージカル『20世紀号に乗って』
『20世紀号に乗って』/阿部章仁

オスカーを支えるオリバー・ウェッブ役の小野田龍之介さん、オーエン・オマリー役の上川一哉さんは破天荒なオスカーに翻弄されながらも、息の合ったコンビネーションとコミカルで軽妙なやり取り、そして確かな歌声で舞台を盛り上げていました。
他にも20世紀号に乗り合わせた乗客や車掌さん、エッフェル塔役のダンサーさんなど、個性溢れる魅力的なキャストが沢山登場するので注目してみてください!

ミュージカル『20世紀号に乗って』
『20世紀号に乗って』/阿部章仁

今作は演者や脚本はもちろん、音楽や舞台装置等の総合演出も含め、素敵なミュージカルでした。
突出すべきはオーケストラの演出です。私はこれまでも生演奏付きのミュージカルをいくつか観てきましたが、そこではプラス面とマイナス面を感じていました。多くの場合、オーケストラは舞台と客席の間の半地下に配置されていました。生演奏は嬉しいですが、最前列の客席と舞台の間に位置するため、通常より舞台との距離が遠くなり、最前列の醍醐味であるキャストとの近さを味わえないことにモヤモヤを感じていました。また、半地下のため少しだけ指揮者の後頭部が見えてしまったり、近すぎるがあまり音が気になり舞台に集中できないなど前方席であればある程、舞台を観ている間オーケストラの存在がちらちら気になっていました。しかし、今作の配置は高級列車のBGMを奏でるオーケストラという位置づけで、舞台上に自然に溶け込み、豪華にステージを彩っているように感じました。

「Life is like a train!」人生は列車の旅のよう…と歌う曲は特に印象的で、他のどの曲も入りが自然で歌詞も聞き取りやすく、声の重なりが美しく終始心地良いミュージカルでした。
ぜひ、皆さんもこの感動を劇場で味わってみて下さい‼︎

(文:あかね渉

公演情報

ミュージカル『20世紀号に乗って』

【脚本・作詞】アドルフ・グリーン/ベティ・カムデン
【作曲】サイ・コールマン
【原作】ベン・ヘクト/チャールズ・マッカーサー/ブルース・ミルホランド

【演出・振付】クリス・ベイリー
【演出補・共同振付】ベス・クランドール

【出演】
増田貴久、珠城りょう、小野田龍之介、上川一哉、渡辺大輔、戸田恵子

可知寛子、斎藤准一郎、武藤寛、横沢健司

植村理乃、小島亜莉沙、坂元宏旬、咲良、篠本りの、田川景一、田口恵那、東間一貴、長澤仙明、MAOTO、増山航平、吉田萌美、米島史子、玲実くれあ

【日程】
2024年3月12日(火)~3月31日(日)
東京・東急シアターオーブ

2024年4月5日(金)~10日(水)
大阪・オリックス劇場

公式サイト
https://www.musical-onthe20th.jp/

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