音楽劇『ジェイド・バイン』

アンドロイドの世界、人間の熱で今伝えたいメッセージ 音楽劇『ジェイド・バイン』観劇レビュー

音楽劇『ジェイド・バイン』
音楽劇『ジェイド・バイン』

アンドロイドの世界、人間の熱で今伝えたいメッセージ 音楽劇『ジェイド・バイン』観劇レビュー

舞台は20XX年。そこは自動二足歩行アンドロイドが実用化され、人々の暮らしに受容されている時代の話。一体の旧式アンドロイドに付けられた「ジェイド・バイン」という名前。
これはジェイド・バインと共に過ごした彼の家族の話ー。

本作、音楽劇『ジェイド・バイン』は黒崎真音さんが原作原案・音楽監修・主題歌、花奈澪さんが脚本、伊勢直弘さんが演出を担当。ビジュアルはアニメの実写、2.5次元のようですが黒崎さんによって生み出されたオリジナル作品。自由で魅力的なキャラクターに溢れています!

音楽劇『ジェイド・バイン』
音楽劇『ジェイド・バイン』

主人公、ジェイド・バインを演じたのは前川優希さん。倉庫に眠っていたアンドロイドで、ある日修理されハリソン家にむかえられます。彼の使命は「リリーの”そばにいること”」。旧式のアンドロイドのため最新式のように動きは滑らかでなく表情も乏しい。身体を部分的に動かすことで機械の動きを表現していて、それはオープニングのダンスやはけ際までも徹底。前川さんの技術に驚かされました。徐々に表情が豊かになっていき、心がほぐれる優しい笑顔や、可愛らしいポーズも見どころです。

音楽劇『ジェイド・バイン』
音楽劇『ジェイド・バイン』

ハリソン家のリリー・ハリソンを演じるのは今回原作考案、音楽監修も担当している黒崎真音さん。舞台上で立っているだけで周りにお花畑が広がるような可憐な女性。周囲の目を盗んでポテトチップスを食べたり、ネグリジェの様な室内着でお茶目にくるくる回ったり。オーキッドが惚れてしまうのも頷けます。

アンドロイド製造会社の若き社長、そしてリリーの夫のオーキッド・ハリソンには君沢ユウキさん。病弱なリリーを支えながら仕事もできる大人な男性。君沢さんのほほ笑み、安定した優しい声はもう包容力の塊でした。

音楽劇『ジェイド・バイン』
音楽劇『ジェイド・バイン』

医師でオーキッドの幼馴染、ダリア・ローダンテ役の花奈澪さん、ダリアについているアンドロイド・イベリス役の村田充さん。花奈さんは台詞回しがとてもきれいで、村田さんは何が起こっても微動だにしない立ち姿、二人とも冒頭から存在感がありました。この二人がハリソン家の物語にどう絡んでくるのか注目です…

音楽劇『ジェイド・バイン』
音楽劇『ジェイド・バイン』

他にも警察側の反橋 宗一郎さん、千葉 瑞己さん、深澤 大河さんの3人の濃いキャラクターも外せません。反橋さんは迫力のある声と貫禄でぶっきらぼうな刑事を、千葉さんは立ち姿がきれいなのが印象的で、頭がきれるサイバー課のエリート。深澤さんは金髪がトレードマークのお調子者だけど”やる時はやる”部下を演じています。オーキッドの会社の研究員ケナフ(沖野晃司さん)の白衣がくしゃくしゃなところやちょっと胡散臭い感じ、劇中で披露されるZAQさんのピアノ演奏など…ここでは書ききれないほど、一人ひとりが個性的かつ魅力的なキャラクター。恐らく劇中では描かれていない背景や細かい設定もたくさんあるはずで…。それをにじませる演技や逆に”作っている”と感じさせない一人ひとりの自然な”作りこみ”も流石です。

音楽劇とは

音楽劇『ジェイド・バイン』
音楽劇『ジェイド・バイン』

音楽劇とは、観てその意味が分かりました。劇中歌が多く、登場人物の自己紹介や心情がナンバーの中で語られます。YouTubeでも登場人物の紹介ナンバー(キャラクターPV)が投稿されていて予習にも復習にもぴったり。観劇前にも後にもジェイド・バインの世界が楽しめます。オープニングのキャッチーなナンバーは冒頭からワクワクします!

機械(アンドロイド)の生きがい、人間の強さとは

ある事件が起こり、ジェイドは自分の生きる意味を考えながら生活することになりますが、それは他のアンドロイドも同じ。最新式のアンドロイド・ロータス(松村 龍之介さん)が”アンドロイドになにができる”と歌う場面は、ジェイドに少しずつ感化されて心が動き始めていく様子が描かれており、松村さんの声の伸びやかさと感情のこもった歌声にぐっときました。
人間は年をとるし、機械にも期限がある。
でもいつの時代もなくならない大切なもの、それは”心”。
誰かに心に残れば、それは永遠なんだー。
デジタル化が進んだ最先端な20XX年のファンタジーの話。アンドロイドの世界で、機械とは相反する人間のあたたかい”心”の尊さが浮き彫りになっていきます。

音楽劇『ジェイド・バイン』
音楽劇『ジェイド・バイン』

花奈さんが「劇場でしかできない”舞台”はきっと贅沢品」とコメントしていますが、心が動かされることの尊さと、それを生で感じることのできる”劇場”という場、観ることができる機会を今まで以上に大切にしたいと思いました。

終盤には観ている方まで力が入るような立ち回り、結末が待っています。

劇場やアーカイブ配信でぜひ観劇してみてください。
https://jadevine-stage.com/

(文:真来こはる

公演情報

音楽劇『ジェイド・バイン』

【原案・音楽監修】黒崎真音
【脚本・ディレクション】花奈澪
【演出】伊勢直弘

【出演】前川優希 / 黒崎真音 / 君沢ユウキ、谷佳樹 / 松村龍之介、志村玲於(SUPER★DRAGON) / 反橋宗一郎、千葉瑞己、深澤大河 / 花奈澪、沖野晃司、ZAQ / 杉本新(THE SIXTH LIE) / 村田充 ほか

2022年11月17日(木)~11月23日(水)/東京・シアター1010

公式サイト
https://jadevine-stage.com/

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