【観劇レビュー】ひどい展開になればなるほど笑えてくる極上のブラックコメディ! 映画「スリービルボード」を手掛けたマクドナーの最新作「ハングマン」
舞台「ハングマン」 写真撮影:引地信彦ひどい展開になればなるほど笑えてくる極上のブラックコメディ! 映画「スリービルボード」を手掛けたマクドナーの最新作「ハングマン」観劇レビュー
パルコプロデュース「ハングマン」観劇してきました!
今年観た映画の中でも、1.2を争うほどの衝撃をもらった「スリービルボード」。その脚本、監督を手掛けたマーティン・マクドナーの最新作! ローレンス・オリヴィエ賞 2016 BEST PLAY受賞の超話題作!
「スリービルボード」でも魅せた脚本の凄さ。かなり期待して観に行きました。
今回は、絞首刑執行人=ハングマンの話です。
舞台「ハングマン」 写真撮影:引地信彦
「俺だって腕はいい!ピアポイントと同じくらいに!!」
1963年。イングランドの刑務所。ハングマン=絞首刑執行人のハリー(田中哲司)は、連続婦女殺人犯ヘネシー(村上航)の刑を執行しようとしていた。しかし、ヘネシーは冤罪を訴えベッドにしがみつき叫ぶ。「せめて ピアポイント(三上市朗)を呼べ!」。ピアポイントに次いで「二番目に有名」なハングマンであることを刺激され、乱暴に刑を執行するのだった。
2年後。1965年。イングランド北西部の町・オールダムにある小さなパブ。死刑制度が廃止になった日、ハングマン・ハリーと妻アリス(秋山菜津子)が切り盛りする店では、常連客(羽場裕一・大森博史・市川しんぺー・谷川昭一朗)がいつもと変わらずビールを飲んでいた。新聞記者のクレッグ(長塚圭史)は最後のハングマンであるハリーからコメントを引き出そうと躍起になっている。そこに、見慣れない若いロンドン訛りの男、ムーニー(大東駿介)が入ってくる。不穏な空気を纏い、不思議な存在感を放ちながら。
翌朝、ムーニーは再び店に現れる。ハリーの娘シャーリー(富田望生)に近づいて一緒に出かける約束をとりつけるが、その後姿を消すムーニーと、夜になっても帰って来ないシャーリー。そんな中、ハリーのかつての助手シド(宮崎吐夢)が店を訪れ、「ロンドン訛りのあやしい男が『ヘネシー事件』の真犯人であることを匂わせて、オールダムに向かった」と告げる。娘と男が接触していたことを知ったハリーは・・・!
謎の男ムーニーと消えたシャーリーを巡り、事態はスリリングに加速する。
マクドナー作品の独特な世界を演出したのは、「ウィー・トーマス」(2003年・2006年)、「ピローマン」(2004年)、「ビューティー・クイーン・オブ・リナーン」(2007年)に続き、長塚圭史。俳優としても舞台に立ちながら独特な世界観に不気味さとスリリングさを助長させていました。
さらに翻訳は、自身も数多くのマクドナー作品を翻訳・演出してきた小川絵梨子が手掛け、イギリスの地方と都会との差をうまく台詞で表現し、真っ黒なユーモアとスリリングな会話にドキドキさせられました。
舞台「ハングマン」 写真撮影:引地信彦
個性豊かなキャラクターたちが、舞台のパブでひたすらにビールを飲みながら、軽妙にそれでいて残酷な会話からどんどんと緊迫した状況へと転がっていき、ドラマティックな暴力へと繋がっていく。それでもなお繰り広げられるユーモア。
ありえないような状況にリアリティを出してくれる台詞や、人物描写。言葉のトリック。
笑えるはずもないところで笑わしてしまう言葉のセンスに驚かされました。
舞台「ハングマン」 写真撮影:引地信彦
とにかく、ひどい展開になるのだけれども、笑わずにはいられない。そして、ひきつりながらも笑ってる間に物語はラストへ向かっていき、
悪とは、正義とはなんなのか、人間とは、死ぬということはなんなのか、ということを考えさせてくれます。
世界で今、最も注目されてる脚本家の最新作。マーティン・マクドナーの真骨頂のブラックコメディを、是非、体感してみては。
(文:橋本昭博)
舞台「ハングマン」
【作】マーティン・マクドナー
【翻訳】小川絵梨子
【演出】長塚圭史
【出演】田中哲司 秋山菜津子 大東駿介 宮崎吐夢 大森博史 長塚圭史 市川しんぺー 谷川昭一朗 村上 航 富田望生 三上市朗 羽場裕一
2018年5月12日 (土) ~13日 (日) /埼玉・彩の国さいたま芸術劇場
2018年5月16日 (水) ~27日 (日) /東京・世田谷パブリックシアター
2018年6月15日 (金) ~17日 (日) /京都・ロームシアター京都 サウスホール
2018年6月21日 (木) ~22日 (金) /北九州・北九州芸術劇場 中劇場
公式サイト
舞台「ハングマン」