ミュージカル「サムシング・ロッテン!」

客席を笑いとハッピーの魔法にかける!ブロードウェイ発、傑作コメディミュージカル「サムシング・ロッテン!」観劇レビュー

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」
ミュージカル「サムシング・ロッテン!」

客席を笑いとハッピーの魔法にかける!ブロードウェイ発、傑作コメディミュージカル「サムシング・ロッテン!」観劇レビュー

本作は、アメリカの演劇・ミュージカル界において最も権威ある賞とされるトニー賞で、2015年に9部門10ノミネート、うち1部門受賞という快挙を成した話題作の日本版。
演出・上演台本は、“コメディの奇才”と称され、映像分野でも次々とヒット作を生み出す福田雄一が手掛け、メインキャストには、日本のミュージカル界・音楽界を牽引する主役級の実力派俳優達が集結し、傑作コメディミュージカルの日本初演に挑みます。

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」
ミュージカル「サムシング・ロッテン!」

タイトルとなる「サムシング・ロッテン!」は、シェイクスピアの戯曲であるハムレットの一節“something is rotten in the state of Denmark.”(デンマークは、何かが腐っている)からの引用で、劇中にはこのように複数の戯曲、ミュージカル作品へのオマージュのみならず、キャスト陣が過去に出演した代表作や、わかればクスッと笑える芸能ネタが随所に登場します。歌にも台詞にもかなりスピーディに小ネタが織り交ぜられるので、全てを必死で拾おうとした私の脳は軽く渋滞!(笑)
舞台・ミュージカルファンであればあるほど、声を出して笑って楽しめる作品だと思います!

物語の舞台は、ルネサンス時代のイギリス。オープニングから、まるで本場のブロードウェイ・ミュージカルを観ているかのように華やかで愉快なダンスに心を奪われます。

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」
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本作の主人公であるニック(中川晃教)は、売れない劇作家。弟のナイジェル(平方元基)と共に劇団を経営しているのですが、どうもヒット作に恵まれず、悩んでいました。『もし、未来を見ることが出来たら・・・』と考えていたニック。助けを求めようと、予言者・ノストラダムス(橋本さとし)のもとを訪れます。ですがこの人、見た目からしてだいぶ胡散臭い。コミカルで面白い老人なのですが、いつも予言が微妙に違う。世界初の歌って踊る“ミュージカル”という新たな試みの提案までは良かったものの、ヒット確実と予言した作品のタイトルが「オムレット」。まさかの卵ミュージカルです(笑)
けれども、予言を信じるニックはだいぶ素直。どうにかして予言された“ミュージカル「オムレット」”を成功させようと奮闘する姿はとても輝きに満ち溢れていて、自然と応援したくなります。

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」
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そんなニックが憧れ、対抗心を抱くのは当時の人気劇作家・シェイクスピア(西川貴教)。派手な身なりでキレッキレのパフォーマンスを披露しての登場はライブさながら。彼を見つめる民衆達の半狂乱状態から、シェイクスピアという人物がいかに時代の寵児であったかがうかがえます。

しかし世間では天才と名高い彼も、人知れず悩みを抱えていました。それは、「ロミオとジュリエット」に続くヒット作を書かなければならないということ。そこで、以前からナイジェルの作家としての才能に密かに目をつけていたシェイクスピアは、なんとかして次回作のアイデアを盗み得ようと画策。別人になりすましてニックの劇団に潜入するのですが、その変装のクオリティと言動に、別人を装うには少し無理があって面白い。シェイクスピア本人は真剣にやっていることだとわかっているからこそ、どこか愛らしくて仕方がなかったです(笑)

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」
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一方、シェイクスピアに目をつけられているなど露知らず、ナイジェルは、兄が生み出そうとしている“ミュージカル「オムレット」”に思い悩んでいました。そんな時、街で出会った清教徒の娘・ポーシャ(清水くるみ)と恋に落ちます。ポエムが好きで、日々自らの頭に浮かんだ詩を綴り歩いていたナイジェル。ポーシャもまた、詩のこととなるとテンションが上がって早口になってしまうほど詩が大好きで、二人はすぐに意気投合したのです。

ですが、『詩なんて俗悪』と考える人も多かった時代。ナイジェルとの恋をポーシャの親が許すはずもなく、二人の恋は禁断のものに。それでもめげずに逢瀬を重ねる二人の、初々しくも強い想いとピュアな恋模様が本当に可愛いくて、正直、何時間でも観ていられそうでした!

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」
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そして、忘れてはいけないのが、ニックの妻・ビー(瀬奈じゅん)。彼女は、愛する家族を守るため、『私があなたの右腕になる』と力強く宣言をして、一生懸命身体を張って様々な試行錯誤をするのですが、その方法が、毎度突拍子がない!予想外な姿で登場する度に、客席から笑いを誘います。私も、その姿を観てまんまと笑わされた一人ですが、何よりふと我に返って、「ビー」がではなく「瀬奈じゅん」がそれをやっていると思うとまた二度可笑しい。本作の「最優秀七変化賞」(勝手に作りました)を、是非とも瀬奈さんにお渡ししたい(笑)

今回の物語に出てくる登場人物達には、皆それぞれ壁にぶつかりながらも、その困難をポジティブな考えで乗り切って行けるパワーがあります。だからこそ、観客もそのパワーに飲み込まれて、終始ハッピーな気持ちで彼らを見守り続けることが出来るのです。

そして、演出・上演台本の福田さんが、本気でミュージカルを愛しているのだなということが、舞台全体を通してひしひしと伝わって来ます。やはり、間接的にでもそういう創り手の「愛」を感じられると、観ている側も幸せな気持ちにさせられるのだなと改めて思いました。

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」
ミュージカル「サムシング・ロッテン!」

伸びやかで、聴いていて楽しい歌と、豪華なタップダンスを含めた美しいダンスシーンの数々。今年の観劇収めにしろ、来年の観劇始めにしろ、心晴れやかに、行く年を見送り、来る年を迎えられそうな最高のコメディミュージカルでした!

東京公演は、東京国際フォーラム ホールCにて上演中。12月30日(日)まで公演された後、大阪オリックス劇場で2019年1月11日(金)から14日(月・祝)まで上演されます。

(文:越前葵

公演情報

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」

【作詞・作曲】ウェイン・カークパトリック、ケイリー・カークパトリック
【脚本】ケイリー・カークパトリック、ジョン・オファレル
【演出・上演台本】福田雄一

【出演】
中川晃教、西川貴教、瀬奈じゅん、平方元基、清水くるみ、橋本さとし
青山郁代、池田紳一、井上花菜、可知寛子、小暮キヨタカ、小山侑紀、坂元宏旬、高橋卓士、高原紳輔、竹内真里、常住富大、丹羽麻由美、伯鞘麗名、福田えり、辺田友文、横山敬、横山達夫

2018年12月17日(月)~12月30日(日)/東京・東京国際フォーラム ホールC
2019年1月11日(金)~14日(月・祝)/大阪・オリックス劇場

公式サイト
ミュージカル「サムシング・ロッテン!」

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