自分の未来は、運命は、自ら立って掴み取る!ミュージカル「オン・ユア・フィート!」観劇レビュー
グロリア・エステファン:朝夏まなと自分の未来は、運命は、自ら立って掴み取る!ミュージカル「オン・ユア・フィート!」観劇レビュー
キューバ出身の歌手、グロリア・エステファンの半生をモチーフにしたジュークボックスミュージカル「オン・ユア・フィート!」観劇レビューをお届けします。
たとえ80~90年代に世界のヒットチャートを席巻した歌姫「グロリア・エステファン」という名前や彼女の曲の名前を知らなくても、その歌を聞けば「これか!」と思い出すラテンの香りがするパワー全開の作品です。
今作で主演のグロリアを演じるのは元宙組トップスターの朝夏まなと。その母親役の「グロリア」は一路真輝。それぞれ宝塚時代には同じ作品の同じ役を演じたこともある新旧宝塚元トップスターの共演も見どころです。
ふたりの「グロリア」
アメリカン・ドリームを掴んだ娘と、夢破れた母
(右から)グロリア・エステファン:朝夏まなと グロリア・ファハルド:一路真輝
グロリアはキューバ出身、作品では具体的な「戦争」の名前は出てきませんが、キューバ革命で祖国からアメリカへ亡命し、グロリアが幼い頃父のホセはベトナムへ出征しておりそこにテープで歌声を吹き込んで送っている、という彼女の生い立ちには戦争の影が見え隠れします。そして、戦争によって運命を狂わされたのは、孫娘のグロリアだけではないということも。
この作品の見所は歌やダンスもさることながら、祖母と孫娘、母と娘、母と祖母、という親子三代にわたるある意味確執とも呼んでいい関係性。
バンドの練習に参加したいけれど躊躇する娘、背中を押す祖母、拒絶する母。
グロリア・ファハルド:一路真輝
一見すると「娘を束縛する毒親」なのでは?おばあちゃんが応援して孫と結託するのっていつものパターン、お母さんが敵だよね!という古典的なキャラクター設定なのかと思いきや、なぜ祖母は応援してくれるのか、なぜ母は拘束しようとするのか。チャンスの神様は前髪しか生えていないというけれど、掴むために必要なものは、そしてなぜ彼女は掴むことができた/できなかったのか。そして、病に倒れて喋れない父への娘の本音。夫には語る母の本音。
グロリア・エステファン:朝夏まなと
そして掴み取ったものは、果たして本当に「成功」だったのか。一つのきっかけが雪崩のように決壊して、その先で本当に見えたもの。
ヒットチャートに乗せる「スター」としての成功も、親子関係も一筋縄じゃいきません。
でも人間色々ある方が、作品はいいものになるって決まってます。いろいろあるから、もう一度立ち上がろうと、がんばろうとそういう気持ちにさせられる。
ラテンのリズムに身を任せて
「舞台」ではなく「ライブ」です!
(右から)グロリア・エステファン:朝夏まなと エミリオ・エステファン:渡辺大輔
もともと舞台は「お行儀よく」観る文化なのでは・・・?と思われがちですが(いや実際そうした方がいい時もありますが!)今作に関しては冬の寒さを吹き飛ばすようなホットなダンス!歌!プロのラテンダンサーカップルによるダンス!生バンド!!とライブ会場のような盛り上がりぶりです。
冒頭、息子のナイーブが「もっと観ていちゃダメ?」と父親のエミリオに聞いていますが、本当、もっと観ていたい・聞いていたい作品です。
(左から)グロリア・エステファン:朝夏まなと エミリオ・エステファン:渡辺大輔
ちなみにカーテンコールはスタンディング&サイリウム持ち込みOKなのでまさしくライブ会場。観ていて楽しいとかかっこいいとかいいなと思ったことは盛り上げることが正解。いま客席にいる観客が入ることによってこの作品は完成するのではと考えます。
だって、観てもらわないと、聞いてもらわないと、真に作品は生まれないから。
(文:藤田侑加)
ミュージカル「オン・ユア・フィート!」
【脚本】アレクサンダー・ディネラリス
【音楽・歌詞・編曲】グロリア・エステファン、エミリオ・エステファン
【翻訳・訳詞・演出】上田一豪
【振付】TAKAHIRO、藤林美沙、金光進陪
【出演】朝夏まなと/渡辺大輔/青野紗穂、栗原英雄、久野綾希子/一路真輝
伊藤広祥、岡本悠紀、加藤潤一、当銀大輔、橋田康、ひのあらた、井上真由子、小嶋亜衣、小林由佳、コリ伽路、豊原江理佳、中村百花
2018年12月8日(土)~30日(日)/東京・シアタークリエ
2019年1月4日(金)~6日(日)/福岡・博多座
2019年1月9日(水)・10日(木)/愛知・刈谷市総合文化センター 大ホール
2019年1月17日(木)~20日(日)/大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
公式サイト
ミュージカル「オン・ユア・フィート」