2017.5.26

体当たりで心にガツンとぶつかってくる! 原嶋元久 主演舞台「ALL OUT!! THE STAGE」観劇レビュー



「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 撮影:志田彩香
「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 撮影:志田彩香
 

まさにALL OUT!!「ALL OUT!! THE STAGE」観劇レビュー

 
「ALL OUT!!」は、県立神奈川高校(通称ジンコー)のラグビー部を中心に、主人公・祇園健次やチームの成長、ライバルチームとの交流、それに関わる大人たちの様子を描いた雨瀬シオリ氏原作の漫画である。
「ALL OUT!! THE STAGE」は、この漫画をもとに、脚本・演出を西田シャトナー氏が手がけた、おそらく世界初のラグビー演劇だ。

「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」ブルーシアター入り口のポスター 撮影:志田彩香
「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」ブルーシアター入り口のポスター 撮影:志田彩香

客席に足を踏み入れると、舞台上にポツンと置かれたラグビーボールが目に止まる。
筆者はラグビーにはそれほど詳しくはないが、高校時代にラグビー部がグラウンドで練習していたのを見たことがあったため、ラグビーはゲーム開始時に中央に置かれたボールを蹴るということは知っていた。
つまり、開演=キックオフということなのだろう。

ラグビーボールの形が正確な球体でないことは知っていたが、改めてその形を見るとやはりヘンテコだ。
ラグビーボールの形が正確な球体でないことは知っていたが、改めてその形を見るとやはりヘンテコだ。

「2.5次元」という言葉が普及してからしばらく経つが、筆者にとってこれがはじめての《2.5次元体験》。
結論から言うが、この「ALL OUT!! THE STAGE」は2.5次元という言葉では片付けたくない、と感じた。

それは、主演の原嶋元久さんをはじめ、すべての役者が役に乗り移ったように、確実にこの世界に生きていたからだ。

「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 主演の原嶋元久 撮影:志田彩香
「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 主演の原嶋元久 撮影:志田彩香

ラグビーというスポーツは、ボールを持っている人間が主役だと言われている。野球のようにポジションや打順で主役と脇役の区別が明確になるのではなく、いわば誰でも主役になりうるスポーツなのだ。
それと同様に、「ALL OUT!! THE STAGE」も、ほぼすべての役にフォーカスするシーンがあり、この演出もラグビーらしさを表しているように感じられた。

また、激しい動きのせいもあるのだが、役者全員が汗をかいていて、その汗はまぎれもない本物だからこそ、舞台での出来事がよりリアルに感じられる。誰にでもその人だけが背負うバックグラウンドがあり、そのどれもが重みのある人生であることに気づかされるのだ。

「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 撮影:志田彩香
「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 撮影:志田彩香

そして、やはりいちばんの見所は、試合シーン。体の使い方はもちろん、照明や音の効果も相まって、実際に試合を見ているような気分になる。
舞台装置はいたってシンプルなのにもかかわらず、である。

ほぼ人の力だけでここまで再現できるものかと驚いた。

「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 撮影:志田彩香
マイム指導にいいむろなおき氏を迎え、本格的な体の使い方で見る者を圧倒する。

斬新な表現にあふれた迫力のある舞台で、もちろんその点も素晴らしいのだが、その中の一部分にピントを合わせてみると、実際の部活動やスポーツをした際に見られるようなシーンが随所に盛り込まれていることに気がつく。

ネタバレになってしまうので詳しくは言えないが、たとえば試合後に両チームのキャプテンがお互いを称え合う様子。ある人は喜びの表情を浮かべ、またある人は下を向いてうつむく様子。もし観劇する人が過去にスポーツや部活動の経験があるならば、懐かしいとさえ感じるかもしれない。それほどにリアルなのだ。

このように、マクロの目線とミクロの目線の両方で楽しめるのもおもしろいと思った。

「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 撮影:志田彩香
「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」 撮影:志田彩香

もしかすると観劇前では、イケメン俳優たちがキラキラと舞台を彩っているのを楽しむ舞台、というイメージを持つ人も少なくないのかもしれない。もちろんそれも魅力のひとつではあるだろう。

しかし、「ALL OUT!! THE STAGE」の魅力はそれだけではない。
緻密な計算による動きとタイミングの練習を、ここまでの完成度にあげるために、役者やスタッフがどれほど努力したのか、想像するだけでぐっとくる。それはスポーツにも通じるものがあると思う。もはや1公演ではなく、1試合と呼びたいくらいだ。

「ALL OUT!! 」とは、「全力を出し切る」という意味だそう。
文字通り、すべてを出し切って、体当たりで心にぶつかってくる舞台だった。

「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」フォトセッションより 撮影:志田彩香
「ALL OUT!! (オールアウト)THE STAGE」フォトセッションより 撮影:志田彩香

 
本作は6月4日(日)までZeppブルーシアター六本木で上演される。

 
このレビューを書いたのは

志田彩香
千葉県生まれ。報道写真家の祖父の影響で、写真を始める。
武蔵野美術大学卒業後、アシスタントを経て、2016年 フリーランス。
ホームページ

 

公演情報

「ALL OUT!! THE STAGE」

原作:雨瀬シオリ【講談社月刊『モーニング・ツー』連載】
脚本・演出:西田シャトナー

祇園健次:原嶋元久
石清水澄明:伊万里有
赤山濯也:佐伯大地
八王子睦:松風雅也

大原野越吾:大原海輝
江文優:宮下雄也
松尾年乃助:山口大地
賀茂雷太:樋口裕太
伊勢夏樹:藤戸佑飛

御幸篤:石渡真修
平唯一:土井一海
久川久美男:水沼天孝

花館充男:小西成弥
堀川謙弥:上田堪大
和田敏郎:滝川広大

籠信吾:萩野崇

2017年5月25日(木)~6月4日(日)/Zeppブルーシアター六本木

(c)雨瀬シオリ・講談社/「ALL OUT!! THE STAGE」製作委員会

公式サイト
「ALL OUT!! THE STAGE」

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