2016.1.13  37

断ち切れぬ故郷との関係性/劇団鹿殺し「キルミー・アゲイン」観劇レビュー


舞台「キルミーアゲイン」舞台写真
舞台「キルミーアゲイン」舞台写真 写真:和田咲子

【!】このレビューにはネタバレ箇所が含まれています。あらかじめご了承ください。

 

 
劇団鹿殺しが結成15年を迎えた。ふなっしーならぬ「たにっしー」が登場するパロディやギャグが詰め込まれ、キャスト全員が人魚姿になって歌い踊られる「おニン魚クラブ」が舞台をショーアップする。
その一方で、菜月チョビの力強い歌声が物語に重厚さを与える。この両者の幅の中に、「15年」「村から都会へ」「自己再生」といった事柄が投げ込まれている。そのことが集団のこれまでの総括と今後も演劇をやっていくことの覚悟を抱かせられる。

 

現在と過去が幻想世界でくるまれた劇構造

舞台「キルミーアゲイン」舞台写真
舞台「キルミーアゲイン」舞台写真 写真:和田咲子

田舎のとある村にある「たにし劇場」。そこに、藪中健(大東駿介)が東京から戻ってくる。

彼は村さ来という劇団を率いているが、東京での活動に限界を感じている。村ではダム建設が持ち上がっている。建設が実現すれば、村は水底に沈んでしまう。それを阻止するべく、小屋主の市川たにし(河野まさと/劇団☆新感線)が演劇を通じた反対運動を計画している。

題材は人間と共に生活し、村のために尽力したと言われる人魚を描いた「人魚伝説」だ。藪中はその脚本を担当するために帰ってきたのである。藪中と高校時代の同級生のである河本大(オレノグラフィティ)、後輩の山根亮太(細貝圭)、そして演劇部OBの大蔵聡(丸尾丸一郎)らと「人魚伝説」の稽古を進める。その過程で、15年前、吹奏楽部と合同で作品を創っていた高校時代の出来事が挿入される。現在と過去を往還しながら、劇中劇の形で製作されてゆく「人魚伝説」。

そしていつしか、「人魚伝説」の世界が虚構の壁を食い破って現実世界に侵食する。幻想性も加味した劇構造になっている。時制の移行は、移動する壁や暗転と明転の切り替えによる登場人物の着替えで見せる。
この点、菜月チョビの演出はスピーディーで無駄がない。

 

物語の核を担う吹奏楽の存在

舞台「キルミーアゲイン」舞台写真
舞台「キルミーアゲイン」舞台写真 写真:和田咲子

劇団の特徴である吹奏楽の生演奏も本作には盛り込まれている。特徴的なのは、吹奏楽が単なるバックミュージック隊ではなく、高校生役として劇にうまく取り込まれている点だ。彼らは15年前、村を襲った嵐による鉄砲水で亡くなった者たちである。そして、鉄砲水が来る直前にたにし座を離れ、生き残った藪中らが自らの責任を感じていたことが分かる。その時、死者である楽隊が奏でる音は彼らの存在を現在に示すと同時に、ダム建設によって消え去ろうとする村の言葉にならない言葉であることが了解されるのだ。
 
したがって物語は、うしろめたさと共に罪を抱えて過ごしてきた薮中たちが、忘れえぬ記憶といかに向き合い自己再生するかに収斂してゆく。自分たちの問題に決着をつけないままに、吹奏楽部たちの記憶が眠る地を水没させたくない。それがダム建設への反対理由なのだ。
 
直前まで一緒に居たのに、藪中たちは生き残り吹奏楽部のメンバーは死んだ。生死を分かつ行動は偶然なのか。そこには、自らの意志はどのくらい働いているのか。藪中たちが立ち上げた劇団が「村さ来」と名付けられているように、故郷への逃れ難い想いを抱える登場人物たちの姿に、ここまで集団を維持し展開するには並大抵のことではなかったろう鹿殺しの15年が重なってくる。市川たにしが発する「美化をするな」という旨の台詞が、これまでの活動における自己批評のように聞こえ、とりわけ印象的だった。
 
20日まで本多劇場、28日~31日まで大阪・ABCホールで公演

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(文:藤原央登)

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公演情報

劇団鹿殺し「キルミー・アゲイン」
【作】丸尾丸一郎
【演出】菜月チョビ
【音楽】入交星士×オレノグラフィティ
【出演】菜月チョビ、丸尾丸一郎、オレノグラフィティ、橘 輝、鷺沼恵美子、浅野康之、峰 ゆとり、
近藤 茶、木村アヤナ、メガマスミ、椙山聡美、大東駿介、細貝 圭、河野まさと(劇団☆新感線) ほか

2016年1月9日(土)~1月20日(水) /東京・本多劇場
2016年1月28日(木)~1月31日(日) /大阪・ABCホール

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