舞台『ドラマプランニング』

timelesz原嘉孝が熱量MAXで魅せる!ドラマ制作の激闘と葛藤『ドラマプランニング』観劇レビュー

2025年9月26日(金)10月5日日(日)まで東京・本多劇場にて、原嘉孝さん主演舞台『ドラマプランニング』が上演されます。

舞台『ドラマプランニング』 撮影:Wataru Yoshida

2008年に山田能龍さん、いとうあさこさんを中心に旗揚げされた劇団「山田ジャパン」。独特のユーモアと人間ドラマで描く作風が持ち味です。主宰・山田能龍さんはNetflix『全裸監督』など多くの話題作を手掛けてきました。
そんな山田さんが今回、最新作の舞台として選んだのは“ドラマ制作現場”。あらゆる職種が交錯する現場で巻き起こる人間ドラマを、リアルかつユーモラスに描きます。主演は、オーディション番組「timelesz project ―AUDITION―」で新メンバーに選ばれたtimeleszの原嘉孝さんです。

こちらの記事では、開幕前取材会、ゲネプロの様子についてお届けします!

あらすじ
令和7年。混迷を極めたテレビ業界の余波を受け、バタつくドラマ制作の現場。
制作会社の若手プロデューサー・青野貴則(原嘉孝)は、自身が惚れ込んだ漫画の映像化で初のチーフ作品を担当することになる。原作者の許諾・キャスト・製作陣と盤石の布陣を整え自信満々でスタートを切る青野。しかし、想定外のトラブルが次々と舞い込んでくる。そして極めつけには主演俳優の名物マネージャーから「この脚本のままいくのであれば、うちの主演は降ろさせます」と言われてしまい…。

取材会では、出演者の皆さんが元気良く大きな声で挨拶され、会場全体にはつらつとした空気が広がっていました。中でも主演の原嘉孝さん、いとうあさこさんは、とびきりの笑顔で場を照らし、陽と陽が重なったような多幸感に包まれた取材会となりました。

原さんはゲネプロ、そして舞台初日の前日に30歳の誕生日を迎えたそうで、舞台上でサプライズのお祝いを受けたとのことです。舞台のことで頭がいっぱいだったため、自分の誕生日をすっかり忘れていたそうで、ハッピーバースデーの音楽が流れても自分のこととは気づかず、いとうさんや共演者と一緒にノリノリで踊っていたとか(笑)。

抱負を尋ねられると「悔いのない人生を!この1年を過ごしたいです!今作は30歳を迎えて最初の仕事であり、timelesz加入後、初の主演舞台でもあるので、一際気合いを入れて臨みます!timeleszの一員となり、僕だけの人生じゃなくなりました。メンバー、ファンの存在もあるので頑張ります!」と力強くコメントされていました。夢だったアイドルグループに加入し、役者としても主演舞台に立つ原さんからは、まさに勢いとオーラを感じました!

また、今をときめくtimeleszの一員である原さんが主演ということで、彼のファンである secondz(ファンの総称) の方々も多く劇場に足を運ぶことが予想されます。取材会では、「僕は7年くらい舞台で育ててもらいました。僕がきっかけで初めて舞台に来る方も多いと思うので、舞台の楽しさを感じてもらい、舞台の良さを広められたり、実際に劇場に来る人の分母を増やせたら嬉しいです」と語り、山田ジャパンや演劇そのものを背負う覚悟をのぞかせました。アイドルとしての華やかさにとどまらず、舞台人としての真摯なまなざしが印象的でした。

小劇場作品というと、独特のクセが強かったり、時には内輪ノリ的で観客が置き去りになるような印象を持つこともあります。ですが、今作にはそうした 癖や難解さはまったくなく、舞台初心者から熱心な演劇ファンまで、幅広く楽しめる内容になっていました。

物語自体がシンプルに面白い上に、役者陣の個性とパッションが加わり、笑いの絶えない場面も多く盛り込まれています。それだけでなく、思わず胸に迫るようなシーンもあり、観客の心を揺さぶる瞬間が随所にありました。

また、ドラマ制作の裏側を描いていますが、エンタメ業界に携わる方にはリアルな視点として響き、それ以外の方にとっても自分の仕事や日常に置き換えて共感できる普遍性があり、観客それぞれに“自分ごと”として受け取れる作品でした。
主催・脚本・演出の山田能龍さんは、今作は前々から温めてきた題材で、主演の原さんには前回の山田ジャパンに参加された1年半前から「スケジュールを空けておいてくれ」とオファーしていたとのこと!並々ならぬ思いの強さを感じました。ちなみに山田さんは、原さんが直前まで出演されていたTBSドラマ『イグナイト-法の無法者-』の脚本も書かれており、ご縁を感じます。

主演の原さんの魅力を聞かれた山田さんは、「見た目も芝居も存在感があり、センターを背負って演じるに値するカッコいい奴、人間的分厚さがあります‼︎」とべた褒めされていました。原さんが、飛ぶ鳥を落とす勢いのアイドルグループtimeleszへ加入したのは想定外だったようで「ラッキーでした」とほほ笑んでいました。山田さん見る目がありますよね。

劇団の旗揚げメンバーでもある、いとうあさこさんは原さんとは俳優として2度目の共演となります。原さんの舞台に向かう精神、真面目さ、真剣さ、遊びがあるところに「惚れた!」と仰っていました。

いとうさんは取材会の写真撮影中、カメラマンの「ありがとうございます」に対し、「こちらこそ」と爽やかに答えてらっしゃり、人柄の温かさがにじみ出ていました。バラエティでの親しみやすい印象が強いいとうさんですが、舞台ではそのギャップに驚かされます。朗らかな笑顔の裏で、長い業界経験を持つ“曲者”の名物マネージャーを演じ、物語の台風の目となる重要な役どころを担っていました。

東京ダイナマイトの松田大輔さんは、山田ジャパン作品への出演が今回で4度目。奥様ともども seconds(timeleszのファンの総称) だそうです。
timeleszオーディションの頃から原さんを全力で応援しており、最終メンバー発表の際にはリアルタイムで見届けるためにお休みを取って待機していたというエピソードも。原さんが選ばれた瞬間、飛び上がって喜んだという“原ちゃん愛”あふれるお話を聞かせてくれました。
今回松田さんが演じたのは、エグゼクティブプロデューサー・植村。彼の発する一言一言がオチのようで、場内にはたびたび笑いが起こっていました。

植村はドラマを成功に導くため、さまざまな人と顔を合わせ、連携を取る立場です。貼り付けたような愛想笑いに、「まぁまぁまぁ」「悔しいです」「ってことですよね」といった、場をやり過ごすための口癖を多用します。ごまかしのテクニックを使う彼は、調子良く軽薄にも見えますが、それは理不尽な制作現場を生き抜くための処世術であり、情熱をすり減らしていった末の姿でもありました。
「もぅ感情なんてないよ」と漏らす彼の本音を聞き、かつては意見を持ち、熱を持っていたであろう人間が、経験を重ねるうちに自らに麻酔を打ちながら仕事を続ける――その姿に、社会人としての苦しさを感じました。

他にも、業界人と呼ばれる、個性豊かなキャラクターたちが次々と登場します。「こういう人いそう〜」と思わず笑ってしまう場面も多々ありました。

たとえば、キャスティング担当が新人女優を自分の好みや関係作りのために候補に入れたり、主題歌を担当するアーティストと関係を持ってしまった上に、女性関係のいざこざで降板を申し出されたり…
「おいおい、何やってんだよ」と嘆きたくなるような状況が次々と起こります。

エレベーター前までのお見送りや、厄介で疲れる人の対応後の大きなため息など、テレビ業界独特の習わしや、社会人あるあるが随所に散りばめられており、脚本の巧みさを感じました。

キャラクター設定も秀逸です。主演俳優は普段は気怠い雰囲気を漂わせながらも、役者としての責任を全うする男気を見せ、ラウール君のようなアンニュイな魅力もありました。また、原作者の“先生”の風貌やスタッフとのやり取りもテンポ良く、台詞ひとつひとつにリアリティがありました。

AKB48在籍時から舞台に多数出演し、卒業後も映像作品で活躍の場を広げている清水麻璃亜さん。本作ではAP(アシスタントプロデューサー)関口役を務め、作品の解説や進行の役割も担います。
清水さんの演じるAPは、現場では部活のマネージャーのような働きをしています。劇中では、ドラマ制作現場のさまざまな役割や制作工程を観客にわかりやすく解説してくれるため、観客は専門用語や制作の流れを迷わず理解でき、作品にぐっと入り込めるのが印象的でした。

また、状況を俯瞰して見る彼女の冷静な目線は、観客に最も近い立ち位置でもありました。
原さん演じるドラマ制作の要、チーフプロデューサーの青野はドラマに関わる全ての人々を繋ぐバランサーです。彼はどんなに理不尽な意見にも耳を傾け、次々と起こるトラブルにも全て対応し、最後には「僕の力不足です」と頭を下げます。そんな彼に、彼女は問いかけます。
「とてもじゃないけど、“好き”だけではできない。……なんでそこまでできるんですか?」
それに対し青野は、「プロデューサーは理不尽と向き合う仕事だ。理不尽と仲良くなることが大切」と先輩プロデューサーとして静かに答えます。
さらにトラブルが起こるたびに「燃えてきたー!」と情熱を燃やし、「胆力が大事だ!」と笑顔で返す姿は、まさに “THE 原ちゃん!” 彼自身の明るさと強さが、そのまま青野という人物に重なって見えました。
TV業界のブラックさに疲れ、辞める決意を固めていた関口に対し、青野はふとした瞬間、「やっぱ関口、プロデューサーに向いてるよ」と、その努力を認め、素直に誉めます。
自分でも「うざいだろ」と自虐しながらも、ユーモアを忘れずに相手を思いやり、暑苦しいほど真剣に言葉をかける青野。どんなにピンチな状況でも前向きに、そして真っすぐに仕事に向き合う姿に、“こんな先輩がいてほしい” と心から思いました。

私が原さんを初めて拝見したのは、2023年に事務所の先輩・屋良朝幸さんも出演された舞台『天翔ける風に』でした。その時から、圧倒的な熱量と強い目力で舞台上に存在感を放ち、迫力あるダイナミックなアクションを魅せる実力派の俳優さんだと感じていました。

だからこそ、後にtimeleszオーディションに参加され、キラキラと輝くアイドルとして活動されている姿を拝見した時は驚きました。しかし同時に、「15年抱いていた夢」を叶え、主演舞台のステージに立つその姿は、以前にも増して眩しく、輝きを放っていました。

取材会と舞台を観劇し、スタッフや共演者の皆さんが“人間・原嘉孝”、“役者・原嘉孝”に惚れ込み、心から信頼を寄せているのが伝わってきました。それはきっと、原さん自身に周囲を引き上げ、惹きつけるパワーがあるからこそ。まさに「一つの現場に一人は原ちゃんがいてほしい」と思わせるような存在です。

また、下北沢の小劇場という空間が、“役者・原嘉孝”の魅力を存分に引き出していて、とても良かったです。
前回の山田ジャパン出演時には、町の中華屋さんで共演者の方々と演技論を語り合っていたそうですが、今回の現場では、アイドルグループに加入し人気を集めている原さんを気遣い、「さすがに今回は難しいかな」と話していたところ、「赤ちょうちんの居酒屋、大好きです!」と即答されていました。

人気アイドルになった今もなお、役者仲間と肩を並べ、赤提灯の下で熱く語り合う――そんな親近感と情熱を併せ持つ“熱い男・原嘉孝”でいてほしいと強く思いました。

大掛かりなセットやオーケストラの生演奏が彩るミュージカルも素晴らしいですが、演劇ならではの醍醐味はまた別です。本多劇場の距離感・大きさだからこそ、肉眼で役者の表情や細かな動き、ほとばしる熱量を感じられる――そんな臨場感が、この劇場で観る演劇の大きな魅力だと改めて感じました。劇中歌われる歌の歌詞も深く胸に響きますのでご注目ください!

大学時代、監督としての才能もあった青野が、プロデューサーを志すきっかけを話す場面も印象的でした。監督もプロデューサーも映像に関わる仕事ではありますが、その役割は大きく異なります。そんな中で彼は、「作るより、届けることが好き!」と気づいた瞬間、「音がした」と語っていました。その“ときめきの瞬間”があったからこそ、辛いことがあっても今の仕事を続けてこられたのだろうと感じました。
そのエピソードを聞きながら、私自身も「自分が仕事を目指したきっかけ」を思い返し、純粋な気持ちを思い出しました。

青野は途中、自分の仕事に対する向き合い方が「今は、あの頃の純粋な情熱ではないのかもしれない」と感じる場面があり、その表情にはどこか寂しさもにじんでいました。
けれどそれは、経験を重ねる中で、さまざまな状況や人の立場を理解し、広い視野で物事を見られるようになった証でもあるように感じました。

本作は、近年、漫画原作の映像化をめぐって報じられる数々のトラブルや悲しい出来事とも地続きにある、現実味のあるテーマを孕んだ作品でした。
原作者と脚本家の関係性、そしてその周囲で繰り広げられるドラマ制作の実情を、鋭くかつ丁寧に描き出しています。

原作者にとって、自らが生み出した作品はまるで“子どものような存在”。その大切な作品を他者に託すときの期待と不安――。脚本や演出によって、自分の伝えたかった思いとは異なる形で世に広まってしまうことへの悲しみや怖さが、痛いほど伝わってきます。

そんな原作者の大切にしたい“作品の世界”と、映像化によって視聴者にわかりやすく伝えたい・視聴率を獲得したいというドラマ制作側の思い。その狭間で、プロデューサーや脚本家たちは葛藤し、苦悩する姿が描かれます。

さまざまな意見を受け、何度も書き直しを重ねた末に「これで行こう!」と決まった脚本。しかし、別の事情で再び書き直しを求められたとき――。脚本家が静かに口にした「これでいいんだと自己洗脳して、書き直しはするけれど、それは簡単じゃない。“小さな殺人”だ」という言葉が、胸に深く残りました。創作に命を懸ける人間の叫びが、静かに滲み出ていました。

周りに褒められて喜んでいたものの、それが本意でなかったと知ったときの落胆。表面的なやり取りに疲弊し、人間不信を覚えたり、仕事によっては言いなりになって自分を殺してしまうようなやるせなさ、ビジネスにおける予算や数字を追わなければならないプレッシャーと現実。こうした経験は、決して珍しいものではないのではないでしょうか。

撮影まで2ヶ月半、1ヶ月と本番が迫ってくる中で、意見がぶつかり合い、胆力だけでは難しい段階にきます。
青野はそれぞれに情熱があり、「良いドラマを作りたい!」という共通の目的を持ちながらも、分かり合えないもどかしさに苦悩します。

しかしやがて、その原因が“情熱の層の違い”にあることに気づきます。
そんな中、「全員で集まって話そう」という提案が上がりますが、経験豊富な松田はこう言います。
「そんなの無理に決まってる。今まで何度もダメになってきたんだ」と。

人間同士、どうしてもそりが合わないこともあります。
そのため、周囲が気を遣い、トラブルを避けるためにあえて直接会わせない、という判断がなされることもあるでしょう。
けれど、誰かが間に入ることで、事実が湾曲し、かえって話がややこしくなることもあります。

たとえば「役者がこう言っていた」という話が、実は本人の本心ではなくマネージャーの意見だったり――。
そうして、思いがねじ曲げられたり、意図とは違う形で伝わってしまったりするのです。

最終的に「全員での話し合い」は実行されます。
しかし、多くの意見が飛び交い、次第に収拾がつかなくなっていきます。
ついには「ドラマ企画そのものを中止しよう」という、最悪の事態にまで発展してしまいます。

それでも、意見が食い違っても最初から「無理だ」と決めつけず、“話すことの大切さ”を信じて対話を重ねていくことで、彼らは少しずつ解決へと歩みを進めていきます。

一つの作品が生まれ、世に送り出されるまでには、数えきれないほど多くの人が関わっています。
そこには、それぞれの思い、努力、情熱、そして時には犠牲や苦労、汗が積み重なっているのだと強く感じました。

多くの困難にぶつかりながらも、互いの思いをぶつけ合い、語り合い、粘り強く擦り合わせていく――。
その過程を経たからこそ、絆が生まれ、心を震わせるような“珠玉の作品”が生まれるのだと実感しました。

クライマックスでは、役者陣の思いと声量がぶつかり合い、その迫力はまさに圧巻でした。
原作者、脚本家、マネージャー、役者、キャスティング、プロデューサー、アシスタントプロデューサー――
ほぼすべての主要キャストに、「自分の想いを声を張り上げて伝える」場面がありました。

その台詞の一つひとつが本多劇場の空間に力強く響き渡り、それぞれのキャラクターが抱く信念や葛藤が観客に真っ直ぐ届いてきました。胸を打たれる瞬間の連続で、まさに魂がぶつかり合うような熱量を感じました。

脚本・演出を手がけた山田能龍さんは、「ドラマ制作の現場を描きながらも、“どんな人とも諦めずにコミュニケーションを取る勇気”を感じてもらえたら」と語っていました。

その言葉通り、青野はドラマ制作に関わる全員と真摯に向き合い、「全員の意見を反映させ、全員が納得できるドラマをつくりたい」という信念のもと、一人ひとりの声に耳を傾け、想いを伝え合うことを最後まで諦めません。

現実には、今作のような流れは理想論であり、実際には難しいことも多いでしょう。

それでも、作品の裏側にある人間ドラマや、人々が作品に込めた想いを観客に伝えたいという山田さんの想いと愛、
そして“どんな人とも対話する姿勢を忘れないでほしい”という大きなメッセージや願いを、強く感じました。

圧倒的なエネルギーと人間味あふれるドラマを、ぜひ生の劇場で体感してみてください!

(文:あかね渉

公演情報

舞台『ドラマプランニング』

脚本・演出 山田能龍

出演

原嘉孝
いとうあさこ
松田大輔(東京ダイナマイト)
永山たかし 
清水麻璃亜

公演期間:2025年9月26日(金)〜10月5日(日)
会場:本多劇場(東京)

公式サイト
http://yamadajapan.com/stage/drama-planning/

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