SPY×FAMILY 2025 Stage  製作:東宝 遠藤達哉/集英社

スリリングだけれどカッコイイ 偽装家族の誕生にワクワク! ミュージカル『SPY×FAMILY』観劇レビュー

SPY×FAMILY 2025 Stage  製作:東宝 遠藤達哉/集英社
製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

こんにちは、あるいはこんばんは、みなさま。
この記事を開いてくださいまして、まことにありがとうございます。

(このレビューは、ダブルキャスト、交互出演の中から、ロイド役:森崎ウィンさん、ヨル役:和希そらさん、アーニャ役:泉谷星奈さん、ユーリ役:吉高志音さんver.を観劇して、執筆しています。)

…と、観劇で得た印象的なセリフを前置きさせていただきましたが、最初に正直に話しますと、実は私は『SPY×FAMILY』のことは完全にミリしら。唯一知っていたこととすれば、
\アーニャ、ピーナッツが好き!/
以上です。

こんなに激薄な事前情報だったとしても楽しめるのか。あえてそういうスタンスで観劇させていただきました。
結論から言います。
「とてつもなく、原作漫画orアニメが見たい!!!」

まず本作は、ものすごく時間経過が丁寧に描かれています。そもそもロイド、ヨル、アーニャが “偽装家族” であることすらふわっとしか知らなかった私からすれば、3人の経歴や特殊能力、そして何故家族を演じることになったのかというドラマが、ほぼ1幕丸々使って描かれているので、「なんとまぁ親切設計!」と思いつつも、「(課されたミッションに対して)尺、足りますか…?」という余計な心配も終始頭をよぎりました。
結果はぜひ劇場でご覧いただきたいのですが、このミュージカルはアニメでいうと1クールの途中くらい、「仮初めの家族の始まりの物語」だと思っておいたほうが、いいかもしれません。

とにかく登場人物全員、キャラが濃ければ、抱えている使命も濃い。
森崎ウィンさんが演じるロイドは、西国組織WISE〈ワイズ〉に所属するスパイであり、コードネームは〈黄昏(たそがれ)〉。世間には、精神科医として身分を偽装しています。


製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

カッコ良くないわけがない経歴ですが、本当にカッコ良かったです(奪われし語彙力)。スパイとしてのシュッとしたカッコ良さ、アーニャの“ちち”としての優しさ、ヨルの“夫”としてのピュアさ、都度挟まれる心の声も相まって、ひと役でいくつも味がする、とても魅力的な役だと思いました。森崎さん自身が、良い意味で元々の色をあまり強く持っていない方という印象があるので、淡々と義務をこなして適材適所の色に擬態していく感じがいかにもスパイとしての説得力があるなと思いましたし、家族を持つことで少しずつオーラが明るくなっていく感じが、とても素敵だなと思いました。

任務のために子供を必要としていたロイドによって選ばれた少女・アーニャ。私が拝見したのは泉谷星奈さんだったのですが、あまりにも可愛い! 漫画の絵がそのまま飛び出してきたような、思い描いていたアーニャが歌って踊って、走り回っていて感激でした。


製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

アーニャは人の心が読める超能力を持った少女。とはいえ天才かといえばそうではなく、子供らしい無邪気さがあり、大人達が振り回されている感じが可愛い。演じている泉谷さんは現在8歳という情報を見たのですが、細かい動線や振り付け、歌をしっかりこなしつつ、大人達のユーモアある芝居にも伸び伸びと乗っかる余裕さえ感じました。しかも今回が初舞台ということで、将来が有望すぎる女優さんです。ワクワク!!

和希そらさんが演じるヨルは、仮初めの家族を構成するために重要な“はは”に選ばれた女性。温厚な性格だけれども、本来の姿は〈いばら姫〉という名の殺し屋。


製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

オン・オフのギャップがカッコ良いのはご想像の通りなのですが、何より足ワザ・手ワザのオンパレードが最高! 和希さんの身体能力の高さとスラッとした手足の美しさをこれでもかと見せていただけまして、なんだかごちそうさまです。〈いばら姫〉登場の瞬間から何かしらの元は取れた気がしたのは私だけではないはず。そして声! 普段の和希さんのハスキーボイスはいずこへ?という柔らかいお声にびっくりしました。あの方、絶対まだ隠し持っている声帯があると思う…(震)。
ヨルもロイドと同じように、いろいろな表情が見られる、とても素敵な役。戸惑いながらも、懸命に任務を遂行していく姿が可愛らしかったです。

そのほか、注目人物といえば…
朝夏まなとさんが演じる〈黄昏〉の上司・シルヴィア。


製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

とにかく足が長い(知ってた)。あと声が良い(でしょうね)。登場した瞬間に場の空気を変える存在感(ありがとう)。圧倒されまくりました。原作ミリしらですけれど、とてもピッタリな配役であろうことがひしひしと伝わって来ました。

そして、ヨルの弟・ユーリ。幼少期に両親が亡くなっており、母親代わりに育ててくれたヨルへの感情が激重(苦笑)。


製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

私が拝見したのは吉高志音さんだったのですが、急に現れた姉の夫・ロイドに向ける敵対心がギラッギラの瞳から溢れすぎていて笑いました。どうやら原作ではアーニャに“おじ”と呼ばれているらしいですね。見たいなぁ。仲良くケンカしていて欲しいなぁ(笑)。

あとは、ほんの少しの登場のわりにはインパクトが強すぎる、山口乃々華さん演じるフィオナ。


製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

〈黄昏〉の後輩で、コードネームは〈夜帷(とばり)〉。ロイドに対してかなり強い恋心を抱いており、ヨルに嫉妬していることはわかったのですが、その他の情報がほぼ描かれていないので、もはや彼女が何者なのかを知るために原作を見たいまであります。個人的には、フィオナのような、勝手に様子がおかしいキャラ、嫌いではないです(笑)。


製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

アーニャが受験するイーデン校の寮長・ヘンリー(鈴木壮麻)の、目が合っただけで背筋をピンと張ってしまいそうなエレガントさと安定感抜群の低音ボイスに痺れ、“情報屋”としてロイド達をサポートするフランキー(鈴木勝吾)は、ひょうひょうとした有能感がまたカッコ良く、アーニャのスパイごっこにノッてくれる優しさもあり、なんとなく原作での状況が一番気になるキャラでもありました。


製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社

語り出すとキリがない魅力的なキャラクター達に、緻密なセット転換、そして生オケが合わさって、ミュージカル好きな方はもちろん、初めての方もとても観やすい作品だったのではないかなと思います。
そして何より心に残っているのは、ロイドとヨルとアーニャが楽しそうに手をつないで歩いて行く後ろ姿。誰がどう思おうと、彼らは素敵な“家族”であり、絆を強めるのに必要な要素は必ずしも“血縁”ではなく、大切なのは相手への“愛情”なのだなと感じました。
だって人は皆、誰にも見せない顔のひとつやふたつ、持っているものだから。
あなただって、そうでしょう。

本作は、埼玉・川越でのプレビュー公演を終了し、東京・日生劇場で上演。その後、大阪、福岡、山形、静岡、愛知でも上演されます。
詳細は公式サイトで!
https://www.tohostage.com/spy-family/

公演の魅力がギュッとつまった舞台映像版PVも公開されています!
ぜひご覧ください♪

 
(文:越前葵

公演情報

ミュージカル『SPY×FAMILY』

【原作】遠藤達哉(集英社「少年ジャンプ+」連載)
【脚本・作詞・演出】G2
【脚本・作詞・演出】かみむら周平

【出演】
ロイド・フォージャー(Wキャスト):森崎ウィン / 木内健人
ヨル・フォージャー(Wキャスト):唯月ふうか / 和希そら
アーニャ・フォージャ(交互出演):泉谷星奈 / 月野未羚 / 西山瑞桜 / 村方乃々佳
ユーリ・ブライア(Wキャスト):瀧澤翼 / 吉高志音
フィオナ・フロスト:山口乃々華
フランキー・フランクリン:鈴木勝吾
ヘンリー・ヘンダーソン:鈴木壮麻
シルヴィア・シャーウッド:朝夏まなと

加賀谷真聡(ドミニクほか) 依里(アクション吹き替え)

荒川湧太 岩崎巧馬 大津裕哉 大場陽介 小熊綸 小倉優佳 鎌田誠樹 木村朱李 栗山絵美 桑原柊 島田彩 高島洋樹 丹宗立峰 堤梨菜 早川一矢 深堀景介 本間健太 湊陽奈 宮野怜雄奈 森田茉希

【プレビュー公演】2025年9月20日(土)~28日(日)/ウェスタ川越 大ホール
【東京公演】2025年10月7日(火)~28日(火)/日生劇場
【大阪公演】2025年11月5日(水)~10日(月)/梅田芸術劇場 メインホール
【福岡公演】2025年11月17日(月)~30日(日)/博多座
【山形公演】2025年12月12日(金)~24日(日)/やまぎん県民ホール
【静岡公演】2025年12月20日(土)~21日(日)/静岡市清水文化会館マリナート
【愛知公演】2025年12月26日(金)~30日(火)/御園座

公式サイト
https://www.tohostage.com/spy-family/

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