新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』撮影:⽯澤瑤祠

何度も心を揺さぶられ、目が離せない! 新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』観劇レビュー

新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』撮影:⽯澤瑤祠新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』撮影:⽯澤瑤祠

新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』観劇レビュー

いや〜楽しかった!何が起きるかわからない展開や演出に、何度も心を揺さぶられ、目が離せませんでした。 新宿花園神社に突如現れる紫テント。その中に足を踏み入れると、そこは劇場とはまったく違う空間。外のサイレンやバイクの音がそのまま聞こえ、テントの隙間からは夜空が覗く、まさに現実と非現実のはざまに浮かぶ異空間。その特異な空気感に自然と引き込まれました!この空間を新宿梁山泊の皆さんがゼロから作り上げていることにまず驚きましたが、今回はなんと安田章大さん自身も、劇団員と一緒になって設営に参加されたとのこと。自ら客席を組み立てるスーパーアイドル!?驚きを通り越して、思わず笑ってしまいました。でもその“覚悟”のようなものが、芝居の中でも確かに感じられました!

新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』撮影:⽯澤瑤祠
新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』撮影:⽯澤瑤祠

『アリババ』は、アパートに暮らす夫婦・宿六と貧子の物語。名前からして“ろくでなし”と“貧しい子”という自虐的な設定ですが、社会の底辺で生きる人々の姿が、過激な演出と共に描かれていきます。 宿六は、裸足で馬を追いかけたり、う◯こを警官に投げつけたりと、まさに奇行の連続。けれどそれを演じる安田さんは、アイドルの姿など微塵もなく、むしろ“滑稽でみっともなく、でも必死に生きている男”そのものでした。演出の金守珍さんが「体がキレキレ!」と語っていた通り、肉体的にも全力でぶつかってくる芝居に圧倒されました。
一方の『愛の乞食』では、生命保険会社の営業マン・田口という全く違う役柄に。最初は冴えないサラリーマン風ですが、途中から片足を失った憲兵に“化ける”シーンでは、その存在感が一変。幻想の世界に迷い込んだかのような、不気味で妖しいオーラを放ち、同一人物とは思えないほど。 近年いくつかの舞台で安田さんを拝見しましたが、個人的にはこのアングラな世界の中で自由に暴れるような演技が、断トツで好きでした。

そして、梁山泊の俳優陣もまた強烈でした。どこか壊れてしまった人たち、社会からはみ出してしまった人たちが多く登場しますが、誰もが必死に、時にバカみたいに愛を求め、誰かに必要とされたいと願っている。その“叫び”が、とても切実に響いてきます。
正直、内容はわからないところもたくさんありました!(笑)

でも、わからないのに心をつかまれる、むしろもっと知りたくなる、そんな作品ってそう多くありません。混沌の中に浪漫があり、意味不明なはずなのに、情緒や切なさがしっかりと根を張っている。すごい体験でした。

新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』撮影:⽯澤瑤祠
新宿梁⼭泊『愛の乞⾷』『アリババ』撮影:⽯澤瑤祠

ゲネプロではちょっとしたトラブルもありましたが、それすらも演出の金さんの熱量を間近で感じられる貴重な機会になりました。テント公演は何が起きてもおかしくない——けれど、そのすべてを巻き込んで突き進むエネルギーがあった!

(文:かみざともりひと

新宿梁⼭泊 第 79 回公演 唐⼗郎初期作品連続上演
『愛の乞⾷』『アリババ』

作:唐⼗郎
演出:⾦守珍

出演:
安⽥章⼤、⾦守珍、⽔嶋カンナ、藤⽥佳昭、⼆條正⼠、宮澤寿、柴野航輝、荒澤守、宮崎卓真、原佑宜、
寺⽥結美、若林美保、紅⽇毬⼦、染⾕知⾥、諸治蘭、本間美彩、河⻄茉祐、芳⽥遥、町本絵⾥、森岡朋奈、
とくながのぶひこ

2025年6⽉14⽇(⼟)〜7⽉6⽇(⽇)/新宿 花園神社境内 特設紫テント

公式サイト
https://www.s-ryozanpaku.com/

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