ミュージカル『ゴースト』

あの不朽の名作が5年ぶりに蘇る!ミュージカル『ゴースト』観劇レビュー

世界中で愛され、大ヒットを記録した映画『ゴースト/ニューヨークの幻』のミュージカル版、ミュージカル『ゴースト』が2026年8月、東京・シアタークリエを皮切りに開幕。9月からは愛知、大阪、福岡、北千住と全国各地で上演されます。

2018年の日本初演、2021年の再演に続き、5年ぶり3度目の上演となる今回は、主人公・サム役の浦井健治さん、オダ・メイ役の森公美子さんが続投。そこに星風まどかさん、竹内夢さん、鈴木拡樹さん、太田基裕さんら新キャストを迎え、新たな『ゴースト』が幕を開けます。

こちらの記事では、Wキャストそれぞれの魅力に加え、取材会の様子もお伝えします。

あらすじ

温厚で誠実な銀行員のサム(浦井健治)は、芸術家である最愛の恋人モリー(星風まどか/竹内夢)と幸せな日々を送っていた。ある夜、外出先から家路を辿る道中、モリーは「あなたと結婚したい」とサムに打ち明ける。これまで彼女が避けていた突然の結婚の話題にサムは戸惑いを隠せない。

愛の言葉を求めるモリーに、曖昧な答えで濁すサム――その時、暗がりから一人の暴漢が二人に襲いかかり、揉み合いになる。動転し狼狽するモリーの声が響き渡るなか、一発の銃声が夜の路地を引き裂いた。

男を追いかけるも取り逃したサムが、モリーの元へ戻ると、そこには彼の名前を呼び続け縋り泣くモリーと、血だまりに沈む自分の姿があった――。

ホワイトとブルーの空間、スケルトンのドアの真ん中で「GHOST」の文字が揺らめくセット。爽やかで清涼感があり、美しくもありながら、どこか無機質で、この世とは違う世界が表現されているようでした。

シアタークリエというコンパクトな空間で、最初に登場したシンプルなセットがここまで自由自在に動き、まったく違うシーンへと移り変わっていくとは想像できず、驚かされました。
流れるようにスムーズなセット展開で、サムとモリーのお洒落な新居や電車のシーン…さらに、ドアをすり抜けたり、足が浮いているように見えたりと、ゴーストならではの仕掛けまで次々と登場します。新鮮な舞台構成や見せ方に、次は何が起こるのかと目を奪われました。

特に印象的だったのが、影に取り込まれていく幕を使った演出。不気味な雰囲気を漂わせながらも、どこか美しく、秀逸でした。そこに生演奏の迫力と美しいメロディ、役者陣の存在感が加わることで、作品の世界がより立体的に浮かび上がっていました。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

主人公・サムを演じるのは、2018年の初演から、2021年の再演を経て続投している浦井健治さん。さすが初演から演じているだけあり、安定感はもちろん、舞台を楽しむ余裕も感じられます。

歌唱力が素晴らしいのはもちろんですが、ギターを弾きながらモリーをからかうように愛の歌を歌うシーンや、森公美子さん演じるオダ・メイとのシーンでは、浦井さん自身が肩の力を抜いて楽しんでいる様子が伝わってきて、その姿からも浦井さんらしいユーモアを感じます。

そして、なんと浦井さん、今年だけでもミュージカル『破果』、『最強のふたり』、舞台『鬼滅の刃』其ノ陸「柱稽古・無限城 突入」など、まさに出ずっぱり。舞台稽古や本番の合間には朗読劇やコンサートもこなされているのですから、その多忙ぶりには驚かされます。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

モリー役の星風まどかさん。以前、ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』などでもそのお姿を拝見していましたが、今回改めて「綺麗すぎやしないか!?」と、その美しさに驚かされました。

というのも今作では、Tシャツにジーパン、パーカー、スニーカーといったラフな装いが多いのですが、普通なら野暮ったくなってしまうスタイルも、星風さんが身にまとうと、「シンプルで洗練された大人の女性」の装いに見えてしまうから不思議です。それは、驚異的な小顔に抜群のスタイル、そして艶やかな肌を持つ星風さんだからこそ!どこにでもいそうなカジュアルスタイルが、たちまちセンスの良い女性の装いへと変わり、舞台上でひときわ輝いていました。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

もちろん、カジュアルな装いも素敵ですが、サムとのデートで着用されていた花柄のワンピース姿は、さすが元宝塚トップ娘役!と思わせられる華やかさとエレガントさを感じました。
そして、星風さんの魅力は外見的な美しさに止まりません!演技は決して大げさではなく、自然体…それでいて、モリーの心の動きが伝わる繊細さがあり、自然と感情移入してしまいます。
特に、サムを失ったモリーの苦しみや切なさは、演技だけでなく歌にも濃密に表現されていました。昼も夜も戻ってこないサムのシャツを愛おしそうに抱きしめ、一緒に行った店を思い出しながら、ひとりロフトに佇み、想い出を歌う場面。震える唇と潤んだ瞳が照明に照らされ歌う姿は切なく、それでいて美しい…胸を締め付けられるようなモリーの姿に、思わず涙がこぼれました。

そして2幕オープニングの「あきらめないで」を歌う場面では、また違った星風さんの魅力を感じることができます。「あなたを見失わずに」「一人じゃない」「自分の明日は自分で決めるの」「夜は必ず明ける」――そんな言葉とともに、歌声には力が宿り、瞳にも光が戻っていきます。細い身体からは想像できないほど伸びやかな歌声が、劇場いっぱいに響き渡ります。

「優しくて愛情深くてチャーミング、芸術的才能を持つ大人の自立した女性」というモリーの人物像に、星風さんがぴったりと重なり、その存在に説得力を感じました。

そして、浦井健治さん演じるサムとの組み合わせも抜群!
抱き合うシーンでは、星風さんが少し背伸びをする姿も愛らしく、キスシーンも含め、二人が並んだときの身長差やバランスが絶妙です。浦井さんと星風さん、お二人の重なり合う美しい歌声と、大人の恋人同士ならではの空気感は、観ているこちらまで自然と「この二人、素敵だな」と思わせてくれます。二人の組み合わせは安心感があり、互いの魅力を引き立て合っていました。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

星風さんとWキャストを務めるのは、グランドミュージカル初挑戦となる竹内夢さん。フレッシュで喜怒哀楽がはっきりとした演技で、モリーの感情がストレートに伝わってきました。歌声は思っていた以上に大人っぽく、包み込むような安らかさを感じます。

序盤、二人が理想の部屋に住み始める新居のシーンでは、
「夢に見ていたことをこの手でつかみ取れる、やっと」
「望んでいたものが目の前にある」と、瞳を輝かせながら歌い合うサムとモリー。「今ここで」二人が巡り合えた奇跡を喜び、これからもずっと一緒に生きていく未来を思い描く二人の姿は、幸せそのものです。抱き合い、キスを交わす姿からも、互いを大切に思う気持ちが伝わってきます。
もちろん、性格的に合わない部分もある二人。それでも譲り合い、すり合わせながら、「二人で生きていく」ことを選んだのだと感じられます。
だからこそ、サムの「完璧なシャボン玉が弾けてしまうんじゃないか」という言葉が胸に残ります。幸せすぎるからこそ、その幸せが壊れることを恐れてしまうサム。そして、「愛してる」と頑なに言わない彼に、モリーは不安を感じ、怒ってしまいます。
そんなモリーの機嫌を取ろうと、おちゃらけながらギターを弾き語るサム。その姿には、二人の愛おしい日常が垣間見え、思わず微笑んでしまいました。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

そんなラブラブな二人のシーンから、がらりと場面転換。舞台はNYのウォール街へと変わります。
「人生は戦い抜くか逃げるか」「油断するな」「もっともっともっともっと」
そんな言葉が飛び交う中、マネーゲームに従事し、戦うように忙しなく働くビジネスマンたちの姿が描かれます。愛に満ちたサムとモリーの世界から一転、そこにあるのは、弱肉強食の世界です。そこに登場するのが、銀行マンのサムとカール。サムの親友カール役は鈴木拡樹さんと太田基裕さんがWキャストで演じます。
お二人ともスーツを着こなし、シュッとした姿はまさに「仕事ができる男」感満載。
鈴木カールは、いい奴のときと嫌味な顔との振れ幅が大きく、その差に驚かされます。特に嫌味な表情を見せるときのクズっぷりがすごくて思わず唸ってしまうほど(笑)

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

一方の太田カールは、スマートでスタイリッシュ。鈴木カールに比べるとややマイルドさがあり、同じカールでもまた違った印象を受けました。

1幕最後は、サム、モリー、カールが三者三様に「これが人生」と歌い上げるシーン。3人それぞれの想いが歌に乗り、圧巻の歌唱に思わず引き込まれました。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

そんな「人生」をともに歩んでいこうとしていたサムとモリーですが、二人の間には「愛している」という言葉をめぐる、ささやかな心のすれ違いもありました。
サムは「愛は言葉にしなくても伝わる」と思っている一方で、モリーは「愛している」からこそ、その言葉を聞きたいと求めます。序盤の新居でも同じようなやり取りがありましたが、そこで微笑ましく感じた場面も、その直後に起こる悲劇を思うと、より切なく感じられます。

サムは突然命を奪われ、幽霊となってしまうのです。
「俺は死んでない。死ぬには早すぎる。死ぬ準備ができてない」その言葉が胸に刺さります。死ぬことなど、誰も準備できているわけではありません。愛する人のそばにいるのに、自分の言葉や声で想いを伝えるという、当たり前だったことができなくなってしまう。「愛は言葉にしなくても伝わるはず」と思っていたサムが、今度はその想いを言葉にすることさえできない。その皮肉が、あまりにも辛く胸に突き刺さりました。

ゴーストと言えば誰もが思い浮かべる、あの名シーン。サムを失い、悲しみに暮れるモリーが、ラジオから流れる思い出の曲を聴きながら陶芸するシーンです。

とても美しい場面ですが、愛しい眼差しでモリーを見つめながら、そっとバックハグするサムの姿には、胸が締めつけられます。触れたくても触れられない。愛の言葉も、彼女への忠告も、自分の声で伝えることができない。
そばにいるのに、何も届かない。そのもどかしさと苦しさが、静かに伝わってくるシーンでした。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

今作は「生死」をテーマに扱っているため、どうしても真剣で重苦しいシーンも多くあります。そんな空気を一気に変えてくれるのが、森公美子さん演じるインチキ霊媒師・オダ・メイ。彼女の登場によってユーモアが加わり、舞台のエンタメ感が一気に増します。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

森さんは、浦井さんとともに初演、再演に続く再再演。今回もオダ・メイの強烈なキャラクターで、舞台を大いに盛り上げます。
派手な真っピンクのドレスにゴールドのヘッドバンド、ゴージャスなアクセサリー。さらに、ヘッドバンドには森さんと同じくらい大きな目のデザイン、紫の羽という、強烈なインパクトのあるいで立ちで登場します。ほかにも派手派手なヒョウ柄の衣装など、森さんだからこそ着こなせる超個性的なファッションも見どころです。

霊媒師とはいっても特殊な能力があるわけではなく、水晶を見ながら、それらしいことを言ってお金を稼ぐインチキ霊媒師。ところが、そんなオダ・メイには、幽霊になったサムの声が聞こえるのです。

森さんと浦井さんのシーンは、二人のやり取りが軽快で、長年培ってきた二人ならではの空気感も感じられます。浦井さんがいたずらっ子のような無邪気な顔で楽しんでいるのも印象的でした。

キャラクターの強烈さに加え、圧倒的な歌唱力も相まって、森さん演じるオダ・メイは唯一無二の存在感を放っていました。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

今作で印象的だったシーンは、ほかにもあります。
サムを亡くし、悲しみに暮れるモリーをカールは気遣い、彼女のもとを訪れます。そんな中、アクシデント(仕組まれたもの?)から、カールがサムの白いシャツを着るシーンがあります。
モリーが、友人であるカールの姿に、恋人だったサムを重ねてしまう。その二人の絶妙な距離感と、ふとサムを思い出してしまうモリーの切なさに、胸がグッとくる場面でした。

また、白やブルーを基調にした舞台に、衣装などで赤をアクセントとして取り入れているのも印象的でした。爽やかで清涼感のある世界の中に差し込まれる赤が、登場人物たちの感情や物語の変化を際立たせているようにも感じられます。

そして、電車のシーンも印象的です。騒々しい交通音が鳴り響く中、荒々しい動きとゴーストの力を操る様子が、パワーとパッションあふれるLockダンスやタップダンスで表現されます。ミュージカルならではの身体表現も見応えがありました。

さまざまなシーンを観る中で、今作から強く感じたのが、「人はいつ死んでしまうかわからない。だから、伝えられるうちに伝える」というメッセージです。

サムは、なぜ「愛してる」と言葉にして伝えなかったのでしょう。
言葉にすると軽々しく感じてしまうからなのか。それとも、言葉よりも行動で示したいタイプだったのか。その答えは人それぞれかもしれません。でも、そんなサムが幽霊になったことで、愛している人に直接、自分の声で想いを伝えることができなくなってしまう。
だからこそ、あのとき言葉にしていたら――。そんな「もしも」を考えずにはいられません。
「幸せすぎて怖い」と思えるほど大切な日々も、当たり前に続くとは限らない。
だからこそ、今を大切に、伝えられるうちに、自分の声で、自分の言葉で、大切な人に想いを伝えること。その重要性を、この作品から強く感じました。

ミュージカル『ゴースト』
写真提供/東宝演劇部

ゲネプロ前の囲み取材で、主演の浦井健治さんは、
「今作は、人間の核となる愛や、人とのつながりを描いている作品です。いつ上演しても心に響くものをお客さまにお届けできたら。明日の活力になる作品に仕上がっていると思います」と作品への思いを語られました。

森公美子さんは、開演数日前に起こった熊本地震の被災地支援のため、会場に募金箱が設置されたことを明かされました。「主人の実家が熊本なので、本当に気が気じゃなかった」と被災地に心を寄せ、「熊本頑張れと心から思っています」とエールを送られていました。
また、『ゴースト』という作品について、「『ゴースト』という作品は人の生き死に触れることがございますので、人によっては苦しいと思う方もいらっしゃると思いますが、死の世界をデフォルメしてきれいにまとめているので、お盆の時期に上演するのは正解なのかなと思っております。ですから皆さんぜひ、劇場に足を運んでいただければと思っております」と話されていました。

大切な人に想いを伝えること、そして今を生きることについて考え、行動したくなる作品でした。長年愛され続ける不朽の名作を、ぜひ劇場で感じてください。
(文:あかね渉

公演情報

ミュージカル『ゴースト』

【スタッフ】
脚本・歌詞:ブルース・ジョエル・ルービン
音楽・歌詞:デイヴ・スチュワート&グレン・バラード
演出:ダレン・ヤップ
共同演出:鈴木ひがし

【キャスト】
サム:浦井健治
モリー:星風まどか / 竹内夢
カール:鈴木拡樹 (シアター1010公演を除く) / 太田基裕
オダ・メイ:森公美子
辰巳智秋 / 元榮菜摘 / 飯塚萌木 / 輝馬 / 加賀谷真聡 / 伊宮理恵 / 大谷紗蘭 / 坂口杏奈 / 千葉恵佑 / 友部柚里 / 畑中竜也 / 焙煎功一 / 広瀬斗史輝 / 福永悠二 / 吉田彩美

【開催日程・会場】
2026年8月8日(土)〜30日(日)
東京都 シアタークリエ
2026年9月4日(金)〜6日(日)
愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
2026年9月11日(金)〜13日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2026年9月18日(金)〜20日(日)
福岡県 博多座
2026年9月26日(土)・27日(日)
東京都 シアター1010

公式サイト
https://www.tohostage.com/ghost/

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