誰の中にもいる“どうしようもないふたり”の物語。ウンゲツィーファ『旅の支度』秋田・東京へ

「旅の支度」撮影：百瀬葉

ウンゲツィーファ『旅の支度』が8月30日(土)から秋田・東京の二都市で再演される。

いつも何かから少しズレてしまう不器用な人々の、生々しい葛藤や矛盾をすくい上げながらも、そんな日常の隙間からにじみ出る夢想や希望を「生活臭のする幻想」として描いてきたウンゲツィーファ。
2025年秋、人生にもがく姉弟を描く二人芝居『旅の支度』を秋田・東京の二都市で再演する。

本作は、2024年4月に上演された二人芝居で、第30回劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作に選出された。旅の支度をする姉と弟の一夜を中心に「切り離せないものと生きていくこと」を描く。

今回は、劇場ではなく、ウンゲツィーファが真骨頂とするカフェやギャラリーといった日常と地続きにある空間での上演となる。親密な空間演出によって、観客との距離を極限まで縮め、より濃密で没入感のある体験を目指す。
「二人芝居」は、ウンゲツィーファが最も得意とする演劇のかたちのひとつ。『旅の支度』では、その特性を活かし、限られた時間と空間の中に、キャラクターの記憶や感情の揺れを丁寧に描き出す。

秋田公演は、ココラボラトリーにて国際舞台芸術祭『踊る。秋田』Vol.10 ～秋～の参加作品として上演。
東京公演は世田谷区祖師谷のムリウイにて上演される。

『旅の支度』表面

ウンゲツィーファとは

劇作家・本橋龍を中心に活動する演劇ユニット。2024年で活動10周年を迎える。

リアルな日常描写と潜在意識にある幻象を、ひとつの舞台空間で重ね合わせ、複数のシーンやキャラクターが交錯することで、新たな景色や感情を生み出していく「撹拌（かくはん）される会話劇」として独自の作風を確立。

代表作『動く物』が平成29年度北海道戯曲賞大賞を受賞し、以降も2年連続で優秀賞を受賞。緻密な脚本と没入感のある演出で小劇場ならではの濃密な演劇体験を通じ、観客を「ここじゃないどこか」へと誘う。

主宰 本橋龍コメント

『旅の支度』は、2024年4月に「ウンゲ演劇集 ふたりぼっちの星」という部屋を舞台にした2人芝居のショーケース企画にて誕生した作品です。第30回劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作にも選出いただきました。ウンゲツィーファの中でも人気が高い作品です。

この度、『旅の支度』を単独の公演企画として再構成することになりました。しかも、旅公演として秋田と東京を回ります。
旅の支度はとても小さな演劇です。2人の俳優とコンパクトな美術で紡がれる、世界の端っこのアパートの一室での一晩のお話しです。
小さいからこそ、様々な人の心に収まる普遍性を持っていると思います。

今後も継続して上演を重ねていきたい、大切な作品のひとつです。
今回の旅を通してどのように作品が育っていくのか楽しみでなりません。

　
秋田公演：8月30日（土）、8月31日（日）ココラボラトリーにて。
東京公演：9月4日（木）～9月7日（日）ムリウイにて。
詳細は公式サイトから
https://ungeziefer.site/preparingforatrip/

（文：山中美幸　監修：エントレ編集部）