じんわりと沁みてくる台詞や空気感 観劇後はなんだか「ちょっと優しくなれる」作品 舞台『Bug Parade』観劇レビュー

舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

じんわりと沁みてくる台詞や空気感 観劇後はなんだか「ちょっと優しくなれる」作品 舞台『Bug Parade』観劇レビュー

本作の主人公・春翔は何度も選択を迫られます。こっちだと思って選んだ先で、必ず鳥のフンが落ちてきたり、ガムを踏んだりイヤなことが起こる。 そんな春翔を演じるHey! Say! JUMPの八乙女光さんは、彼が選択するたびに揺れ動く内面や、その背景にある心の細やかさを丁寧に表現していました!


舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

Bug Parade
舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

宣伝ビジュアルではカラフルな衣装が印象的で、どこかアングラ的な雰囲気が漂っており、実験的な作品なのかなと想像をかき立てられました。実際の舞台美術はアンティーク調で、どこか懐かしさを感じさせる趣あるものでした。その一方で、キャストのビジュアルは落ち着いたトーンに統一されていて、特に春翔は髪を下ろし“地味さ”が際立っていました。 でもこの控えめな存在感こそが、観客にとっての共通項。彼の目線で語られる物語に、自然と引き込まれていきました。

Bug Parade
舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

Bug Parade
舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

「おかしい」と言われたことをきっかけに、どんどん自分の中に潜っていく春翔。その繊細な心の動きに、かつての自分を重ねてしまう瞬間がありました。 今でこそ、ある程度ブレなくなったけれど、若い頃は何気ない一言に深く傷ついたり、勝手に悩んだり…そんな経験、誰にでもあるんじゃないでしょうか。 この作品は、そうした過去の自分にそっと寄り添ってくれるような優しさもありました。
舞台では LEDディスプレイ を使い、鏡の演出やカメラ映像を取り入れた演出がされており、「今ここにいるのに、どこか他人事のような感覚」や「目の前に映る自分が自分じゃない感覚」を春翔を通じて想起させられました。自分自身が体験したあの不思議な感覚を、舞台という形で触れられたことが個人的にはとても印象深かったです!

Bug Parade
舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

Bug Parade
舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

囲み取材で「芝居好きが集まったカンパニー」と紹介されていた通り、演出にはあえて余白が設けられていて、役者たちが本気で遊び(試行錯誤し)ながらこの期間中も作品を育てていくような気配が漂っていました!本作はとても小さな世界を表現していますが、飽きさせない楽しい演出の工夫も多々ありました。登場人物はなんと約70人!すべてを把握しきるのは難しかったですが、それもまた再観劇の楽しみになりそうです。リピーターの方、ぜひ細部の発見を教えてくださいね!

Bug Parade
舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

観劇後はなんだか「ちょっと優しくなれる」作品でした。じんわりと沁みてくる台詞や空気感が、観客ひとりひとりの過去や現在にそっと触れてくれるような印象。 特に「自分の選択がいつも間違ってる気がする」「人と比べて自分は変なんじゃないか」と感じたことがある人には、きっと心に残る作品になると思います!

(文:かみざともりひと

舞台『Bug Parade/バグ・パレード』

【作・演出】小沢道成

【出演】八乙女光、伊勢佳世、⻑井短、内村颯太、ぎたろー、 竪山隼太、篠井英介

【東京公演】2025年4月14日(月)~5月5日(月祝)/東京グローブ座
【大阪公演】2025年5月10日(土)~5月12日(月)/COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

公式サイト
https://bug-parade.com/

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