理性を失うほどの熱い恋 現代に蘇ったカルメン幻想曲 花總まり主演ミュージカル『ロマーレ』観劇レビュー
ミュージカル「ロマーレ」花總まり、松下優也 撮影:花井智子 理性を失うほどの熱い恋 現代に蘇ったカルメン幻想曲 花總まり主演ミュージカル『ロマーレ』観劇レビュー
今回の作品は、オペラと同じくメリメの小説「カルメン」を原作としたミュージカルで、2008年に上演された「Calli(カリィ)~炎の女カルメン~」を元として台本と音楽を一新したバージョンです。カルメンを演じるのは元宝塚歌劇団雪・宙組トップ娘役の花總まり! 相手役のドン・ホセは松下優也が演じています。
「カルメン」と聞けば、パッと頭に思い浮かぶのはやはりビゼー作曲のオペラ『カルメン』が筆頭ではないでしょうか。「オペラは見たことないけど、曲だけはテレビなどでなんとなく聴いたことある」という人も多いポピュラーな作品だと思います。が、オペラも原作小説も曲も知らなくても全く問題なし。むしろ「そこでは描かれていない」部分を掘り下げてます。
※以下はオフィシャル映像
物語の舞台は19世紀、スペイン・アンダルシア地方のセビリア(セビリアを舞台にした作品は多く、また映画のロケ地にもなっていていわゆる「スペインといえば!」のイメージといえばこの地域)ロマ族(ジプシー)を研究しているフランス人学者・ジャン(福井晶一)が「50年前にいたというロマのカルメンという女」を調査している時に出会ったカルメンを知る老人(団時郎)との昔語りで話は進んでいきます。
ドン・ホセに限らずスペインを舞台にした作品では男性キャラクターがかなり力強い、情熱的なステレオタイプなラテン男という描き方がされがちな印象ですが、今回の松下優也演じるドン・ホセはとっても繊細で真面目。
そしてカルメン役の花總まりは99年の宙組公演『激情-ホセとカルメン-』ではカルメン役を演じていた経歴がありますが、イメージとして王女や王妃系の役という印象・・・をバッチリ裏切ってくれています。男を捉えて離さない魔性の女をその立ち居振る舞い、目線、声色・・・その全てで熱演です。
どちらかというと今回はカルメンの方が年下の若い男を手玉に取っている女性、年上の女性にのめり込んで翻弄される若くてうぶで繊細なドン・ホセとそれぞれのキャラクターに肉つけがされていてストーリーにリアリティがぐっと出ています。
またカルメンに翻弄されるのはドン・ホセ一人ではなく、他に出てくる3名もそれぞれ全くタイプが違っていて一筋縄ではいかないようなキャラクター。男同士の文字通り「紅一点」を巡る熱い戦いも見所です。それぞれの男性に合わせてキャラクターをガラリと変えるそのカルメンの衣装も華やかで見応えあり!カルメン以外のキャラクターもその性格を端的に表現している衣装も今作品の見所の一つです。
ダンサー陣の大活躍にもご注目!
そんな少数精鋭のメンバーで上演されている今作品。ミュージカルといえば大人数のアンサンブルによるダンスが見応えのある作品もありますが、「ロマーレ」ではわずか5名のダンサーが文字通り「八面六臂」の活躍ぶりです。
配役表では「ジプシー」となってますが、いやいやジプシーだけじゃございません!ダンスも、時には物語中に場面場面のキーパーソンとして登場します。彼らの大活躍にもぜひご注目を。
”ファム=ファタル”を紐解く旅は、恋の結末か愛の結末を見る旅路か。
そんなミュージカルです。
現在本作は東京芸術劇場プレイハウスで上演中!
4月11日からは、大阪のシアター・ドラマシティでも上演されます。
(写真撮影:花井智子 文:藤田侑加)
ミュージカル「ロマーレ」~ロマを生き抜いた女 カルメン~
【演出・振付】謝 珠栄
【台本・作詞】高橋知伽江
【原作】小手伸也
【音楽監督・作曲】玉麻尚一
【作曲】斉藤恒芳
【出演】
花總まり 松下優也
伊礼彼方 KENTARO 太田基裕
福井晶一 団時朗
一洸 神谷直樹 千田真司 中塚皓平 宮垣祐也
2018年3月23日(金)~4月8日(日)/東京芸術劇場プレイハウス
2018年4月11日(水)~4月21日(土)/梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ