イヤホンガイドで初心者でも安心!歌舞伎の音と美で魅了される『双仮名手本三升 裏表忠臣蔵』

提供:松竹株式会社

2025年最初の観劇作品として、新橋演舞場お正月公演『双仮名手本三升 裏表忠臣蔵』を観劇しました。本作は、古典歌舞伎の名作『仮名手本忠臣蔵』を「表」、現代に合わせた新たな場面を「裏」として構成されています。七代目團十郎さんが初演した「裏表忠臣蔵」の精神を受け継ぎ、登場人物の物語をより明確に描き出した作品となっています。

團十郎白猿さんの4役早替りに注目

市川團十郎白猿さんが、大星由良助、早野勘平、斧定九郎、高師直の4役を演じる本作。早替りの巧みさが見どころで、2役でも難しいのに4役をこなす團十郎さんの演技には目を見張るものがありました。特に後半では、相対する相手と入れ替わる場面もあり、「いつの間に!」と驚かされる瞬間が多数。舞台裏の工夫に思いを馳せながら、まるでマジックを見ているかのような感覚を楽しみました。

一体舞台裏はどうなってるんでしょうかね・・早着替えのレベルではない気がします(笑)。


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昼の部と夜の部で一つの物語

歌舞伎の公演は、昼と夜で異なる演目を上演することもあれば、昼と夜でつながりのある物語が上演されることがあります。本作は昼の部と夜の部を通して1つの物語が完成します。通しで観劇することで物語全体をより深く理解できますが、別日で観劇する場合は、昼の部→夜の部の順での観劇となるようにスケジュールを調整しましょう。本レポートは夜の部を中心にお届けしますが、昼の部のストーリーはイヤホンガイドで幕間に解説がありましたので、夜の部だけでも十分楽しむことが出来ました。


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登場人物の紹介(昼の部を含む)

ここで、登場人物について簡単にご紹介します。

塩冶判官(えんやはんがん)

正義感溢れる武士で、師直の執拗な嫌がらせ(パワハラ)に耐えかね斬りかかることに。その後、覚悟を決めて上意を聞くまでもないと、切腹し家老・由良之助に仇討ちを託します。

高師直(こうのもろなお)

権力を持つ人物で、判官の妻・顔世に恋心を抱きますが振られ、その怒りが判官への陰湿なパワハラに発展します。

おかる

早野勘平に会いたい一心で顔世の手紙を師直に届けます。自らの身を売って勘平のために仇討ちの資金を作ります。しかしその資金を持っていた父・与市兵衛(よいちべえ)が定九郎に奪われ命を落とすという悲劇に見舞われます。

早野勘平(はやのかんぺい)

主君の危機の際におかると逢瀬を楽しんでいたことを悔い、仇討ちへの参加を願うも資金不足。流れ弾で死んでしまったのがおかるの父だったと思い込み、切腹して命を絶ちますが、後に潔白が証明され仇討ちの仲間に名を連ねることが許される。

斧定九郎(さだくろう)

塩冶家の元家臣で、現在は師直側に付いています。由良之助の仇討ちの意思がないという噂を信じて警固を緩めます。

大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)

塩冶家の家老で、亡き主君の無念を晴らすため仇討ちを計画。忠臣の象徴として描かれます。

初心者でもイヤホンガイドがあれば安心!

歌舞伎に関しては、完全に初心者の私。今回は、忠臣蔵のストーリーを予習することから始めました。しかし、毎度ながら一番苦戦するのが、歌舞伎独特のお化粧により、誰が誰だか区別がつかなくなってしまう問題。。。(涙)。團十郎さんならわかる!と自信満々でしたが、今回も苦戦してしまいました。

そんな私を助けてくれたのは、「イヤホンガイド」です。もう~流石わかっていらっしゃる!という感じで、はい!今のは〇〇さんですよ、團十郎さんが出てきましたよ!と教えてくれます。初心者の方は、見栄を張らずにイヤホンガイトを活用されることを強くお勧めいたします。

今回は、夜の部のみの観劇でしたが、幕間の間に午前の部のあらすじなどもイヤホンガイドが教えてくれるので全体のストーリーも把握することが出来ました!ありがたやありがたや。

幕間後に市川右團次さんと市川右近さんが出てくるのですが、お二人が親子であることをイヤホンガイドが教えてくれました。そんなことも知ったうえで立ち回りを拝見するとなんだか感慨深いものがありました。

イヤホンガイドについて補足ですが、イヤホンガイドでは観劇の邪魔にならないタイミングで説明をしてくれるのですが、その説明が現代的で驚きました。説明に「パワハラ」「デート」なども出てきますので、よりイメージがしやすかったです。


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舞台演出と歌舞伎ならでは『音』の魅力

鳴物とツケ

歌舞伎ならではの鳴物と舞台演出。歌舞伎では三味線以外の音楽全般やその演奏を「鳴物」と呼ぶそうですが、心情の移り変わりや緊迫した状況などを太鼓の音色などであらわされます。時にドキッとするような音の変化だったりします。

三味線などで表現されていることは、初心者ではなかなか気づくことが難しいと思いますが、こういったこともイヤホンガイドで教えてくれるので、理解が深まります。

そして、忘れてはいけないのが、歌舞伎と言えば舞台の上手から聞こえるこの音!「ツケ」。2本の木を板に打ちつけて音を出しますが、見得の瞬間を強調してくれたり、音そのものが表現されたりします。やはり、あの音を聞くと「歌舞伎に来たなぁ~!」という気持ちになりますね。

鳴物ではありませんが、大向こうを聞くことも楽しみの一つにしていたので、聞こえた時には「おぉ!来た~!」となりました。

幻想的な枝垂れ桜と大きな月

思わず「わぁ~」となったのが、枝垂れ桜と月を背景にした舞のシーン。思わず息を呑む美しさでした。このシーンは幻覚なのですが、新之助さんとぼたんさんの姿が幻想的な空間を作り上げ、観客を物語の世界に引き込みます。

宙乗りとラストシーン

宙乗りは2回目の体験でしたが、やはり迫力があります。前回は3階で今回は1階でしたが、宙乗りを堪能するには、やはり2階、3階席の方がおすすめです!1階席はもちろん見やすいのですが、宙乗りのタイミングに関しては、どうしても表情などが見えなくなってしまいますので、宙乗りを堪能したい場合は、1階ではなく2階席、3階席のセンターブロックの下手寄りの席を選びましょう!


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そして圧巻だったのがラストのシーン。「おぉっ!」と声が漏れるほどの見応えがありました。このシーンは多くを語るよりもぜひ、演舞場で体験していただきたいと思います。前方列の席の場合は、間違いなく浴びると思います!

歌舞伎観劇をさらに楽しむポイント

新橋演舞場ならではの楽しみ方として、お土産選びやお弁当購入もおすすめです。特にお弁当は売り切れになることが多いので、早めの購入がオススメです。2階の食堂もぜひチェックしてみてください。

初心者でも安心して楽しめる『双仮名手本三升 裏表忠臣蔵』。團十郎白猿さんの熱演、イヤホンガイドのサポート、そして舞台演出の魅力が詰まった本作は、歌舞伎の魅力を存分に感じられる作品でした。次回は昼の部も含めて通しで観劇してみたいと思います。


提供:松竹株式会社

(文:松坂柚希)

公演情報

昼の部

双仮名手本三升(ならべがきまねてみます)
裏表忠臣蔵
市川團十郎四役早替り相勤め申し候

竹田出雲 作
三好松洛 作
並木千柳 作
石川耕士 補綴・演出
藤間勘十郎 演出・振付
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夜の部

双仮名手本三升(ならべがきまねてみます)
裏表忠臣蔵
市川團十郎四役早替り宙乗り相勤め申し候

竹田出雲 作
三好松洛 作
並木千柳 作
石川耕士 補綴・演出
藤間勘十郎 演出・振付

〈出演〉

大星由良之助/早野勘平/斧定九郎/高師直
桃井若狭之助/清水大学/五十谷重左衛門
寺岡平右衛門
足利直義/佐藤与茂七
おかる
顔世御前/松野十平次
傾城浮橋/笠岡伝五右衛門
千崎弥五郎
大星力弥
大鷲文吾
矢間新六
幻想のおかる
幻想の勘平
母おかや
斧九太夫/織部安兵衛
薬師寺次郎左衛門/吉田周左衛門
原郷右衛門
塩冶判官/加古川本蔵
團十郎
右團次

種之助
児太郎


中村福之助
虎之介
歌之助
市川右近
ぼたん
新之助

九團次

男女蔵

※中村梅花は昼の部のみ、中村歌昇、市川男寅、市川右近、市川ぼたん、市川新之助は夜の部のみに出演します

◻︎初春大歌舞伎
公演日程:2025年1月3日(金)~26日(日)
会場:新橋演舞場

公式サイト
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/905

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