舞台『死ねばいいのに』新木宏典&阿岐之将一

心をぶつけ合う生の芝居 観劇後の余韻に考えさせられる良作『死ねばいいのに』観劇レビュー

舞台『死ねばいいのに』
舞台『死ねばいいのに』撮影:深田大介

心をぶつけ合う生の芝居 観劇後の余韻に考えさせられる良作『死ねばいいのに』観劇レビュー

最近はみんなが楽しめるエンターテイメント作品ばかり観ては、ハイテンションな気持ちのままレビューを書くことが多かったけど、本作『死ねばいいのに』は観劇後の余韻に考えさせられることが多く、寝付くまで舞台の光景を思い出しては『…よかったなぁ』と唸っていました!

舞台『死ねばいいのに』
舞台『死ねばいいのに』撮影:深田大介

ぶっちゃけ『死ねばいいのに』というタイトルに、観たいという気持ちは全く起きませんでした。いやぁ~、嫌な言葉ですよ「死ねばいいのに」なんて。それでもタイトルのインパクトは無視できず公演情報をチェックしたら、なんと原作はあの京極夏彦さんで演出もシライケイタさんじゃないか!両人はその界隈では知らない人がいないほどの信頼感がある。これは確かめねば…と吸い込まれるように劇場に足を運んだわけですが、ホントに行ってよかった!

舞台『死ねばいいのに』新木宏典&阿岐之将一
舞台『死ねばいいのに』撮影:深田大介

劇場に入るや否やビックリ!空中に家具が浮いてるような青い景色が目に入り、トリックアートのような写真が投影されているのかな?と思いきや、ソリに乗ったら滑れそうなぐらい急な八百屋舞台に家具が配置されていた。え!ここで芝居するの?役者大丈夫?家具とか倒れない?と心配になるぐらいの傾斜に、すでに心が落ち着かない自分(笑)その視覚的な情報から、非日常的なことが起こるのかなぁとぼんやり予測をしていると、静かに渡来健也(新木宏典)が姿を現わし投げかける、「死ねばいいのに」。発せられる言葉の印象が安っぽく聞こえたのは自分の先入観のような気がするけど、タイトルにもなるこの言葉が、この先幾度となく投じられてはどす黒い色を生み出していく。

舞台『死ねばいいのに』
舞台『死ねばいいのに』撮影:深田大介

STORY

死んだ女のことを教えてくれないかー
三箇月前、自宅マンションで何者かによって殺された鹿島亜佐美。彼女と関係のある6人の人物の前に、渡来健也と名乗る無礼な男が突然現れる。
健也との交わらない会話に、苛立ちや焦燥を顕にする6人だったが、彼の言葉にハッとさせられる。問いかけられた言葉により暴かれる嘘、さらけ出される業、浮かび上がる剥き出しの真実…。渡来健也との対話の先にある「死ねばいいのに」という言葉が導く結末とはー。

 
殺された鹿島亜佐美のことを聞いて回るというシンプルな構成だけど、徐々に渡来の印象が変わった。原作を未読の自分は、新木さん演じる渡来の格好や態度、言葉使いからヤカラの印象を受けたり、名探偵ホームズのように謎を解決していくようなカッコいい姿に見えたかと思えば、自分を映し出す鏡のようにも、また時間と共に悪魔にも見えて…演技が変わったというわけではなく、そう観客に想像させる展開で、受け取り方も共感できることも様々だろうなぁと、作品の面白さに心を揺さぶられていました。

舞台『死ねばいいのに』
舞台『死ねばいいのに』撮影:深田大介

育ちが悪い、頭が悪い、敬語が使えない、態度悪いとはじめから提示してはズケズケと相手の領域に入っては、相手の言葉の揚げ足を取るような会話を繰り返す。揚げ足を取るというと賢い印象だけど、頭が悪いからこそ相手の矛盾した言葉や、複雑な思考を受け取れずに本質を抉るようなシンプルな言葉を返す。思わずムキになる相手。もしかしたら小説では、相手はこんなに声を荒げてないんじゃないかなと、心をぶつけ合う生の芝居にニヤニヤしていました!

舞台『死ねばいいのに』
舞台『死ねばいいのに』撮影:深田大介

役者は誰が良かったはなく、みんなが良かった!これ意外とレアだと思っていて、大抵の作品は誰かが突出してたり、そうじゃない人がいたり(良くも悪くも)。本作に関しては全員が肩を並べた事で、日の当たらない人たちが浮き彫りになり、渡来の立ち位置も明確になったような気がした。

舞台『死ねばいいのに』
舞台『死ねばいいのに』撮影:深田大介

ミュージカルでは味わえないストレート舞台の魅力を十分に感じた本作!小説を読んで本作を想像したことがある人は、役者や演出の解釈が入ったことで生まれる登場人物の面白さを感じられるだろうし、また本を読むのが苦手な人も、分厚い本を執筆する京極さんの作品を2時間で観られることも気軽でいいと思います!ぜひ劇場で!!

 
詳細は公式サイトにて。
http://stage-shinebaiinoni.jp

(文:かみざともりひと

公演情報

舞台『死ねばいいのに』

【原作】京極夏彦『死ねばいいのに』(講談社文庫)
【脚本・演出】シライケイタ(劇団温泉ドラゴン)
【出演】新木宏典
    津村知与支 宮﨑香蓮 伊藤公一 阿岐之将一 魏涼子 福本伸一

2024年1月20日(土)〜28日(日)/東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

公式サイト
http://stage-shinebaiinoni.jp
<公式X>
https://twitter.com/stshinebaiinoni
<公式Youtube>
https://www.youtube.com/channel/UCuse44R7X8v5d0YqLd2-z3w

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