城田優が演出する、愛に満ちた新生・ファントム ミュージカル「ファントム」観劇レビュー
ミュージカル「ファントム」フォトセッションより城田優が演出する、愛に満ちた新生・ファントム ミュージカル「ファントム」観劇レビュー
劇場に足を踏み入れた瞬間から、そこは街灯が美しく輝くパリの街。観劇予定の皆様には是非、開演10分前には客席に座っていていただきたいっ。場内アナウンスや出演者によるパフォーマンスが行われ、テーマパークでアトラクションに乗る前のような胸の高鳴りを感じました!
このレビューでは、ダブルキャストの中から、ファントム役:加藤和樹さん、クリスティーヌ役:愛希れいかさん、シャンドン伯爵役:廣瀬友祐さんver.で、新たに生まれ変わった不朽の名作の魅力を語らせていただきたいと思います!
ミュージカル「ファントム」愛希れいか
幕が開き、広がるのは賑やかなパリの街。そこに、透き通る歌声を響かせて、クリスティーヌ(愛希れいか)が楽譜を売り歩きます。愛希さんから溢れ出る透明感は、地上に舞い降りた天使のように華やかで、自然と物語の中に導かれていく心地よさがあります。
ミュージカル「ファントム」
ミュージカル「ファントム」
そんな彼女に訪れる、夢みたいな話。オペラ座のパトロンであるシャンドン伯爵(廣瀬友祐)が彼女の歌声を見初め、オペラ座で歌のレッスンを受けられるように取り計らうと声を掛けて来たのです。
憧れのオペラ座に行けるのだと心を躍らせ、弾けんばかりの笑顔で喜びを表現する彼女の姿を見て、見守るこちらも幸せな気持ちになります。
ミュージカル「ファントム」
一方オペラ座では、支配人のキャリエール(岡田浩暉)が解任され、新支配人にショレ(エハラマサヒロ)と、妻のカルロッタ(エリアンナ)が就任することが発表されていました。キャリエール役の岡田さんは、オペラ座に潜む怪人の秘密を唯一知っている心の葛藤を、渋く繊細に好演。
ショレとカルロッタ夫妻は野心家で嫌みっぽくはありますが、どこか恨みきれないコミカルさがあり、劇中幾度も観客の笑いを誘います。
ミュージカル「ファントム」エリアンナ
ミュージカル「ファントム」愛希れいか
ミュージカル「ファントム」加藤和樹
キャリエールを訪ねてオペラ座へやって来るクリスティーヌ。その若くて可憐な姿を見て嫉妬したカルロッタは、彼女を自分の衣装係に任命。しかしクリスティーヌは大好きな歌を衣装部屋で歌い続け、その清らかな歌声を聞いた“オペラ座の怪人”ファントム(加藤和樹)が清らかな歌声に惹かれて、秘かに歌のレッスンを行うようになります。
ミュージカル「ファントム」加藤和樹、愛希れいか
ファントムとクリスティーヌが心を通わせて歌う「♪You are music」のハーモニーは本当に美しく、優しく心に染み渡る至高のナンバー。加藤さんの安定感のある低音ボイスと、愛希さんの綺麗な高音の魅力が遺憾なく発揮されていました。
ミュージカル「ファントム」愛希れいか、廣瀬友祐
ある日、ビストロで開かれたコンテストで歌声を披露したクリスティーヌは、磨かれた華麗な歌声で他の参加者達を魅了し、思いがけぬ大役を射止めることに。そして、シャンドン伯爵からは愛の告白を受けます。
恥ずかしそうに、でも真っ直ぐとした瞳で想いを告げるシャンドン伯爵と、その告白を素直に喜ぶクリスティーヌ。軽やかなダンスに甘い囁き、幸せムードに包まれた場面。
廣瀬さんが演じるシャンドン伯爵は、紳士的だけど時に見せるピュアさとのギャップが可愛く、「こんな人に一目惚れされたい人生だったなぁ…」と切実に思いました。(いや、まだ諦めない!笑)
ミュージカル「ファントム」
クリスティーヌが、射止めた大役を演じる日。ここでもまた、嫉妬したカルロッタが彼女を罠にはめ、舞台は中止に。その無残な姿を見たファントムが、失意のクリスティーヌを自分の住処であるオペラ座の地下へ連れて行ってしまいます。
ミュージカル「ファントム」加藤和樹、愛希れいか
ファントムは、隠された顔は醜いけれど、中身は心が子供のまま身体だけが大人になってしまったような純粋無垢な人。“愛”という感情を知り、クリスティーヌを喜ばせようと必死に考え、とびっきりの笑顔を見せる姿が可愛らしい。
普段、ワイルドなイメージの加藤さんを拝見しながら、心の中でこんなにも「可愛い」を連呼したのは初めてです(笑)
同じ作品でも、演出家によってこんなにも毛色が変わってくるのかということを、今回強く思いました。
儚くて悲しい愛の物語だけれども、どこか世界観は柔らかくて温かい。ファントムが“人間”エリックとして持っている優しさや過去の記憶、苦悩や葛藤が鮮明に描き出され、強いメッセージ性を帯びて迫ってくるので、涙を流さずにはいられません。
加えて、本作に登場する“恋”模様は、応援したくなるほどにピュア。何度も言ってしまっていますが、本当に可愛い!男性達の無邪気さとクリスティーヌを大切にエスコートする紳士さを見ていると、演出の城田さんらしさが特に出ている場面なのかなぁと感じました。
ミュージカル「ファントム」加藤和樹、岡田浩暉
さて、地下にクリスティーヌを連れて行ったファントム。しかしその行動が、徐々に大きな悲劇を生むことになってしまい…。(結末は劇場で!)
感動的なラストシーンは絵画のように美しく、観劇後私は、魂が抜けたように客席を後にしました。
苦しかったり、微笑ましかったり、観ている側としても凄く感情の忙しい作品ですが、帰り道では口が勝手に劇中歌を口ずさんでいて、“音楽”が持つ不思議な力を改めて実感したような気がします。
本作は、東京・赤坂ACTシアターにて上演中。12月1日(日)まで公演された後、大阪でも公演されます。
詳細は公式サイトで。
囲み取材レポートはこちら!
城田優&木下晴香によるゲネプロ映像はこちら!
(撮影・文:越前葵)
ミュージカル『ファントム』
【脚本】アーサー・コピット
【作詞・作曲】モーリー・イェストン
【原作】ガストン・ルルー
【演出】城田 優
【出演】
ファントム(エリック):加藤和樹・城田優
クリスティーヌ・ダーエ:愛希れいか・木下晴香
フィリップ・シャンドン伯爵:廣瀬友祐・木村達成
カルロッタ:エリアンナ
アラン・ショレ:エハラマサヒロ
ジャン・クロード:佐藤玲
ルドゥ警部:神尾佑
ゲラール・キャリエール:岡田浩暉
少年エリック:大河原爽介・大前優樹・熊谷俊輝
安部三博、伊藤広祥、大塚たかし、岡田誠、五大輝一、Jeity、染谷洸太、高橋卓士、田川景一、富永雄翔、幸村吉也、横沢健司、彩橋みゆ、桜雪陽子、小此木まり、可知寛子、熊澤沙穂、丹羽麻由美、福田えり、山中美奈、和田清香
2019年11月9日(土)~12月1日(日)/東京・TBS赤坂ACTシアター
2019年12月7日(土)~12月16日(月)/大阪・梅田芸術劇場メインホール
公式サイト
ミュージカル『ファントム』