ノサカラボ 『罠』

誰もが飲み込まれる舞台 ノサカラボ 『罠』の世界観/大阪公演が開幕

ノサカラボ 『罠』
ノサカラボ 『罠』

誰もが飲み込まれる舞台 ノサカラボ 『罠』の世界観/大阪公演が開幕

世界の名作ミステリーを舞台化していくプロジェクト”ノサカラボ”初の長編舞台『罠』が大阪公演初日を迎える。この作品はフランスの劇作家ロベール・トマが1960年に書き下ろした傑作サスペンス。1960年代のフランス、アルプス山脈を望む美しいリゾート地・シャモニーを舞台に、わずか6名の男女で繰り広げるスリリングなミステリーだ。

主人公ダニエルの妻エリザベートが新婚3カ月で失踪。警察に捜査を依頼するもなかなか手がかりが見つからずダニエルは憔悴状態。ある時、神父に付き添われて妻が戻ってきたと思ったらその人物は会ったこともない女だったー。

ノサカラボ 『罠』
ノサカラボ 『罠』

主人公・ダニエルを演じるのは原 嘉孝さん。憔悴状態でやけ酒をし疲れ切った顔で登場。その場で起きていく展開に頭を抱え、体をねじり顔を歪ませ。始めから終わりまで全身で受け取り、全身表現する姿が印象的でした。(”表現”という言葉は適切ではないかもしれません。顔つきや手足の動きが、その場に身を委ねているように自然で、”表現”を超越しダニエル本人に憑依したような凄みを感じました。)膨大なセリフ量と浮き沈みする展開の中、原さんの狂気じみた気迫と集中力に飲み込まれそうになりました。

ノサカラボ 『罠』
ノサカラボ 『罠』

ダニエルの”妻”を名乗る女を演じるのは元宝塚歌劇星組男役の麻央侑希さん。品のある佇まいの中に鋭い眼差し。落ち着きはらった様子と怪しく高笑いする2面性が時に怖く見えました。

その”妻”を名乗る女をダニエルの家に連れてくる神父役には高田翔さん。紳士な振る舞いと落ち着いた口調が印象的で、それだけに時折見せる神父の歪んだ笑顔や急に怒り出す様子がとても不気味で怪しい人物。

そしてこの事件を捜査する警部役に(的場さんの印象とはかけ離れたチャーミングな警部だったので、途中まで気づかないところでしたが)、的場浩司さん。穏やかな語り口調、どっしりと構えた出で立ちでなかなか腹の内を見せない、つかみどころがない人物。果たしてこの人は何度も窮地に立たされるダニエルの味方なのか…。

捜査を左右する重要な証人として現われる放浪の芸術家役には横島 亘さん、看護師役には釈由美子さん。横島さんは作品にユーモアと安心感を、釈さんは物語後半に強烈なインパクトを与えています。

ノサカラボ 『罠』
ノサカラボ 『罠』

何が嘘で何が真実かー
誰もが怪しく見えてきて、観客も現場を目撃してしまった一人として、登場人物の一挙手一投足にまで神経を使い、目で追ってしまうほどの緊張感が走ります。

ミステリー小説が現実空間に現れたようなリアリティ。舞台とはいえ、小説の地の文のようなナレーションがついてきそうな空気感。こちら側にもずっしり、どっしりと迫ってくる展開がとても見ごたえがありました。急に起こる怪しい動きや、会話の”間”の違和感。あらゆるところに張り巡らされた伏線と、何度も“ええー!”と心の中で叫んでしまうような展開。最後に暗転する直前の画は、時が止まったような衝撃が襲います。ずっと罠にかけられていたのか?というようなまさかの結末にも注目。

ホームページの公式サイトにもこだわりが。芝居でも徹底していますが、サイトでも細部まで世界観が作りこまれており、作品に流れるどこか冷たく重い空気感が思い返されます。

ノサカラボ 『罠』
ノサカラボ 『罠』

このカンパニーの出演者の作品、原さんの出演作品、ノサカラボの作品。
各々の今後の作品が気になって仕方ない、そんな芝居愛を感じる ”衝撃で” ”濃密な” 時間でした。

舞台『罠』、大阪公演に足を運んでみてください。

公演の詳細はこちら。
https://nosakalabo.jp/wana2022/

(文:真来こはる

公演情報

ノサカラボ 『罠』

【原作】ロベール・トマ
【翻訳】小田島恒志、小田島則子
【演出】野坂実
【出演】原嘉孝、麻央侑希、高田翔、横島亘、釈由美子、的場浩司

2022年10月22日(土)~30日(日)/東京・ニッショーホール
2022年11月2日(水)・3日(木・祝)/大阪・松下IMPホール

公式サイト
https://nosakalabo.jp/wana2022/

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