2021.11.24  4

近藤芳正Solo Work『ナイフ』reboot 特別インタビュー/2022年1月21日から水戸・豊橋・東京・兵庫・山口で上演



近藤芳正Solo Work『ナイフ』reboot 特別インタビュー
近藤芳正Solo Work『ナイフ』reboot 特別インタビュー
 

2020年6月上演予定だった近藤芳正Solo Work『ナイフ』は、稽古に入ろうという矢先コロナ禍で上演中止、そして長きにわたる公演延期を強いられました。一年半の雌伏の時を経て、いよいよ2022年1月に水戸・全国での公演に向けて動き出しました。主演の近藤芳正さんに、この一年を振り返ってもらいつつ、新たな抱負と決意を語っていただきました。

 

まさかの公演中止から延期に

近藤 「中止の知らせを聞いたときは道を歩いていたのですが、本当にがっくり来ました。一瞬、ぼーっと町の中で立ち止まってしまいました。予想はしていたんですが、やっぱりかと思ったら、そうなっちゃいましたね。」

──昨年6月に上演予定だった『ナイフ』。2019年から数回の身体的ワークショップを重ねながら、台本も何回も検討会を行い納得するものに仕上げ、本格的な稽古に入ろうとする矢先のことでした。その後も緊急事態宣言は続き、演劇公演は夏までは事実上、上演不能な状態に陥りました。

去年行った事前稽古の様子
去年行った事前稽古の様子

近藤 「それでも自分なりの演劇の可能性を探って、Zoomで「12人の優しい日本人を読む会」を開催したり、本多劇場で「DISTANCE」という無観客・有料配信の一人芝居をしたりとその時ならではの挑戦をしてみました。でも、お客さんと接していないということが、何か足りないお祭りをやっているような不思議な感覚で、「これは違うな」とも感じていました。」

──そんなさ中、近藤さんは京都に住まいを移すことにしたそうですが?

近藤 「コロナって、思うようにならないことの連続だったわけですが、個人的にも大きな変化がありました。結婚し住まいを京都に移したこともあり、予期せぬ人生を送っています(笑)。そんな環境の変化やコロナ禍で、色々と考えることもありました。ずっと演劇に熱中していたのに、舞台から離れることも考えました。結婚をしたことで、愛情を育てるとか、友情をはぐくむとか、今までおろそかにしがちだったことに改めて対峙しているという気持ちです。」

──演劇に対する姿勢には変化があったんですか?

近藤 「今までは、仕事の評価イコール自分への全評価と思ってがむしゃらにやっていましたが、それは一部でしかないんだなと思っています。今は、自分にも演劇にも非常にフラットな心境です。また地方都市における演劇の存在の小ささも、東京とはずいぶん違っていることもショックでした。そういうことに対して、具体的な自分なりの接し方は分かっていませんが、いい意味で新鮮です。そして冷静になって、自分なりに気持ちを整理しています。」

 

再始動(リブート)に向けて

近藤芳正
近藤芳正Solo Work『ナイフ』reboot 特別インタビュー

近藤 「昨年中止になった企画で、再スタートしたのは『ナイフ』だけなんです。公演が中止になるというショックが辛いので、コロナの影響が続くだろう時期の企画も遠慮してきました。そんな中での再始動になります。」

──再始動となりますが、どんな心境なのでしょうか?

近藤 「《弱者の味方》の立場で物語が描かれていることが、重松作品の魅力だと思っています。作品には、常に何かにあがいている人々が描かれています。
『ナイフ』のどの登場人物も、大きな勇気があるわけでないし、正しい選択をしているわけでなくおそるおそる頑張ってあがいている人たちです。でもちょっとでも前に進んだことで、それまでにない風景を見ることができた。そんな小さな勇気を大事に思わせてくれる作品です。
今回僕は、『ナイフ』に登場する三人、父親、母親、息子を演じわけるわけですが実際上手く行くかどうか、稽古場であがき、舞台でもあがいて演じるんだと思います。コロナという答えがわからない時代の中、誰しもがあがきながら生活をしていると思います。そんな中でも、少しでも前へ進もうとする『ナイフ』の登場人物と、それを一人芝居で演ずる私の挑戦から、明日につながる何かを感じていただけたら嬉しいです。」

近藤芳正
近藤芳正

──原作者重松清さんは、近藤さんをテレビで見て「私の小説の中の登場人物がいる」と思っていたと言い、近藤さんは重松作品を読むたびに「自分がこの小説にいる」と感じたといいます。だからこそ実現した企画でもあるし、最初からベストなキャスティングでもあります。近藤さんは一人芝居の魅力について次のように語ってくれました。

 

一人芝居って気持ちいい

近藤 「大変は大変だけど、気持ち良いのも確かです。だって一人で責任とれるし、自分のミスを自分で見世物に出来るかもしれないし(笑)。一人芝居を初めて演じたのは、水戸芸術館で2015年の『わたくし、マルヴォーリオは――』なのですが、やってみたらこれが楽しかった。自分自身一人っ子なので人との関わり方が下手で、俳優という職業で人と関わり方を学んできたのに、また一人を選んじゃったわけです。」

『わたくし、マルヴォーリオは――』
水戸芸術館ACM劇場プロデュース『わたくし、マルヴォーリオは──』2015年2月

──『ナイフ』は、一人芝居で、しかもずっと出ずっぱりとなる作品ですが、60歳になった近藤さんには体力的には辛くないでしょうか?

近藤 「毎日四股を踏んだり、呼吸法を試したりして鍛えています。今は以前よりも身体が利くし、感情的にもフラットになって落ち着いています。それにコロナで自分が色んなものをそぎ落としていって、無駄なものが無くなっていると感じています。昨年の公演中止前に、フィジカルトレーナーと一緒にやったワークショップには手応えがあったし、稽古していくともっと色んなモノを見つけられる思っていて稽古が楽しみです。人生訓にしている津川雅彦さんの「起きたことが正解」という言葉を頼りに、頑張ります。」

 

近藤芳正さんと水戸という街

『斜交』
水戸芸術館ACM劇場プロデュース『斜交』〜昭和40年のクロスロード〜 2017年11月

近藤 「僕の演劇にとって、第二の故郷といって良いほどのご縁のある町です。最初、水戸芸術館にはツアー先として寄らせていただいてました。以前活動していた自分の集団「劇団ダンダンブエノ」も招へいしていただけたし、水戸芸術館のプロデュース公演にも参加させていただいてます。何かとご縁が深いんです。この『ナイフ』も、当初は自分で企画を考えていたんですが、一人芝居だし、ご縁の深い水戸芸術館でお願いできないかと相談して、実現に至りました。」

 

水戸の街のお気に入りは?

近藤 「市内には個人経営のレストランや居酒屋が沢山あって、これがまた個性的で美味しいんです。そこで知り合ったお客さんが、公演を観に来てくれたりして、温かい人が多いなあというイメージです。今も、水戸に行ったら必ず寄るお店がいくつもあります。また水戸芸術館も、地方都市にありながら全国に回せる企画も多く作っており、文化振興にも力を入れている街だなあと思っています。」


諦めないで最後まであがき続ける、演劇作りとはそういう一面があります。60歳にして一人芝居、しかも全役演じ分けという挑戦をする近藤さん、そしてこの状況下での挑戦。どれも決してハードルが低いものではありませんが、そんな近藤芳正さんの挑戦も見届けたい『ナイフ』。
この時代だからこその挑戦を目撃しに来ませんか?
近藤芳正SoloWork『ナイフ』は、茨城県水戸市の水戸芸術館を皮切りに豊橋、東京、兵庫、山口で上演します。

 
右から近藤芳正、水戸芸術館演劇部門 芸術監督 井上桂
水戸芸術館演劇部門 芸術監督 井上桂、近藤芳正

 
詳細は公式サイトで。
https://www.arttowermito.or.jp/sp/knife/
 

 
文:井上桂(水戸芸術館芸術部門 芸術監督) 提供:水戸芸術館

 

 

公演情報

近藤芳正Solo Work『ナイフ』reboot

【原作】重松清「ナイフ」
    (新潮文庫『ナイフ』所収)
【脚本・演出】山田佳奈(□字ック)
【フィジカルコーチ】大石めぐみ
【出演】近藤芳正

2022年1月21日(金)~23日(日)/水戸・水戸芸術館ACM劇場
2022年1月29日(土)、30日(日)/豊橋・穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
2022年2月4日(金)〜6日(日)/東京・東京芸術劇場シアターイースト
2022年2月11日(金・祝)/兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2022年2月13日(日)/山口・山口情報芸術センター[YCAM]スタジオA

 
公式サイト
https://www.arttowermito.or.jp/sp/knife/

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