2020.3.2  5

顔の美醜はどこから来るか 令和座『FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-』観劇レビュー


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令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
 
 
 改元の年に誕生した令和座。劇団の旗揚げ公演は、『エレファントマン』に着想を得た顔を巡る物語である。

自他から恣意的に美醜が判断される顔。人はその良し悪しによって、充実し幸せな人生が送れるかが左右されると思ってしまう。また性格を含めた内面性やそれまでの生き方が、顔に顕れるとも言われる。いずれにせよ、顔は人間性を推し量る第一材料となりがちである。いかに人は顔に囚われているかが描かれた作品であった。

 
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」

 人口200人あまりの小さな山奥の集落。ここには、顔に傷やアザのある者たちが肩を寄せ合って暮らしている。仮面を被り独自の儀式を行う村人は、顔の美醜へのこだわりが強い。顔の左半分に黒く大きなアザがあるカノン(松本真愛)は、美容整形手術でアザを取り除き、コンプレックスを解消したいと思っている。だからこそ村でただ一人、アザがなく周囲からも美人に見られる白濱優香(中村玲菜)を激しく虐げる。

令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」

魔女狩りのごとく迫害された優香は、山奥でホームレス暮らしを余儀なくされている。美しい顔を紙袋で隠すように命令された彼女は、みじめな状況に置かれているのは自らのせいであり、当然だと思い込んで受け入れている。生きる価値がない醜い者だと、自己規定しているのだ。そして村にはもう一人、顔面が奇形で生まれてきたフィム(赤塚幹夫)がいる。醜悪さが際立つフィムは、鍵がかかった小屋に監禁され続けてきた。

令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」

それでいて村の重要な財源は、フィムの生体データを売ることで成り立っている。優香とフィムを見た目で迫害する村人たちは、内面までもが醜い。対して、他者への心優しさを失わずに生き続けている優香は、フィムに分け隔てなく接する。俳優になって世界中で活躍する夢を抱き続けるフィムも、純真な心の持ち主だ。

 
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」

 そんな閉鎖された村落に、2人の医療従事者がやってくる。彼らの仕事は、村人の身体を調査して都会に報告すること。大学病院で医療研究をしていた三澤謙吾(近江秀一)は、真面目で倫理的な正しさを重んじる人物。三澤は、迫害されている白濱を保護しようと務める。対する徳永和正(実熊倫礼)は、この村での勤務は左遷された結果だと感じている。そのことに不満を抱く徳永は、もう一度都会の仕事に就くことを虎視眈々と狙う野心家。

令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」

2人はフィムと出会うが、上昇志向が強い徳永が本作では重要な役割を担う。組織に従順な三澤は都会に報告しようとするが、徳永はそれを阻止する。どこにもいないフィムのような存在からは、貴重な研究データが得られる。徳永はそれを独占して一儲けしようと企むからだ。世間を斜に見て常に人を小ばかにする徳永は、何事も自分の利益や出世の道具に使うことしか考えていない。徳永の貌には特にアザなどない。それでも醜悪に見えるのは、彼の内面を含んだ人間性が顔に集約されて顕れるからだ。実熊の演技は、顔の美醜がどこから来るのかと、顔の多様性を説得力を持って表現した。

ラスト、登場人物全員が仮面を被る。人は誰しもが何かの目的や思惑を持っており、それぞれに顔という名の仮面を付けて生きていることを示す。 

 
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
 

 小さなイベントスペースに山奥の村落を表現するべく、三方の壁一面を木の葉で埋め、切り株を設定した舞台空間。西洋の道化風の仮面も独特で手が込んでおり、丁寧に作品を創っていることが伝わる。

令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」

中でも、顔面奇形児のフィムが目を引く。演じた赤塚はカーテンコールも含めて、グロテスクなマスクを頭から被ったままであった。見た目の異形さに反して、弱々しい声と控えめな挙動のフィムは、さながら映画『犬神家の一族』でのスケキヨ。赤塚は作品世界に徹する役割を果たした。

令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」
令和座「FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-」

小劇場演劇は、等身大の人間が交わす日常会話劇が主流になって久しい。それに反して本作は、強烈な劇性を押し出す作風であった。旗揚げにして、劇団の路線がはっきりと打ち出されていたと言えよう。

 
 
(文:藤原央登)

このレビューを書いたのは

藤原央登
ふじわら ひさと|劇評家。1983年大阪府出身。劇評ブログ『現在形の批評』主宰、演劇批評誌『シアターアーツ』編集部。小劇場を中心に現代演劇の批評を行っている。https://twitter.com/hisato_fuji

 


 

公演情報

令和座『FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-』

【作・演出】浅間伸一郎
【美術】はじり孝奈

【出演】中村玲菜、近江秀一、実熊倫礼、赤塚幹夫、松本真愛

2020年2月20日(木)~2月24日(月)/東京・cafe & bar 木星劇場

公式サイト
FACE -百億の顔とエレファントマンの孤独-

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