若手俳優が集結して宮本研作品に真っ向勝負! 文学青年部 旗揚げ公演『美しきものの伝説』3月20日から日暮里d-倉庫で上演
文学青年部『美しきものの伝説』若手俳優が集結して旗揚げした文学青年部による公演『美しきものの伝説』が3月20日(金・祝)から日暮里d-倉庫で上演される。
『文学青年部』は、戦後日本文学を現代人の視点で上演している笛井事務所が立ち上げた20代男性のみのユニット。「戦後」とも「日本文学」とも少し距離のある若い世代が、自分たちの「今」を作る礎となった時代をどう解釈し、どう表現するかを追求していく。
旗揚げ公演の演目に選んだのは宮本研の『美しきものの伝説』だ。
赤旗事件・大逆事件で弾圧を受けた社会主義者たち。
残された者はそれでも新たな時代を求め、文筆活動・演劇などで民衆を動かそうとしていた。
新たな国の形、新たな恋愛の形、思想、言論・・・。求める自由のために悩み、衝突する人々。それでも理想を夢見ながら、やがて来る激しい波に飲み込まれるまで切ない時代を精一杯生きた美しきものたちの物語。
エントレでは稽古場に伺い、演出の的早孝起と、10人の出演者にインタビュー取材し、本作の魅力を聞いた。
文学青年部について教えてください。
「笛井事務所の奥村さんから《若い男性だけの団体を立ち上げたい》という話がありました。若い人たちとお芝居を作ること、男性だけでお芝居を作ることにちょうど興味を持っていたので、2人で組んでやっていこうということになりました。『こういうものは、こういう事だよね』という定型化・ステレオタイプ・ルール付けだけでおさまりたくないと思っているんですが、ある意味《男性だけ》と絞ることで自由になる部分が出てくるんじゃないかと考えています。今、自分たちが考えていること、取り巻いているものなどを考え直して、表現していきたいなと思っています。」
本作『美しきものの伝説』について教えてください。
的早
「1968年に初演された宮本研さんの作品です。時代としては大正元年から大正12年までを描いていて、そこにいる社会活動家と演劇をしている芸術家、この2つのコミュニティにいる人たちが、どのように挫折して、それでも立ち向かって、大正という時代を少しでも前に進めようと走り回っていく。彼らを描いた群像劇です。
今、稽古をしているみんながとても柔軟な発想と表現をしてくれているので、きっと若い人にも楽しんで頂けると思います。」
稽古をしてみていかがですか?
「モナリザ(平塚らいてふ)役とルパシカ(小山内薫)役をやらせて頂きます。吉田尚弘です。人生で初めての女性役なのでそこを気にしつつも、もう一つのルパシカは演劇を語る役なんです。演劇論を堂々と話すというのはすごく恥ずかしいことなので、そこが頑張りどころかなと思ってやっています。台本のレベルがすごく高くて後はやる僕ら次第ですが、楽しんで頂けると思います!」
宮田「早稲田を演じます、宮田大輝です。本来は沢田正二郎さんの役なんですが、実際に沢田正二郎さんのあだなが早稲田だったそうなんです。早稲田は21歳か22歳くらいで、僕よりはちょっと下なんです。熱意をもって行動している人たちばっかりで、今とは時代も違うしやっていることも違うんですけど、同じように夢を持って頑張っている。歴史的なものを知っていたほうがわかりやすいと思いますが、それを知らなくても、今に通じる部分がすごくあるので、生で観て楽しんで頂けると思います。」
由井「暖村(荒畑寒村)を演じる由井柾です。暖村はムードメーカーにもなっているアツい役なので、そのあたりを出していきたいです。稽古は面白いです!難しい文字とかもあるんですが、そこを理解しつつ、新しい発見もあるので楽しいです!現代の若い人が見てもわかってもらえるように頑張ります!」
稽古をしてみていかがですか?
「音楽学校を演じる佐藤慶太です。音楽学校というのは中山晋平さんのあだなで、25歳の時に島村抱月さんが建てた芸術座というところに呼ばれて劇中音楽の作曲を依頼されるんです。そして彼が作曲した「カチューシャの唄」や「ゴンドラの唄」がすごくヒットしたんです。稽古場に男だけということで、この時代を一生懸命生きたものたちとして、自分たちも役の中で生きていけるように決意を持って稽古しています!」
飯川「四分六(堺利彦)という役を演じます飯川瑠夏です。僕は今20代で、四分六さんは40代なので、そこの説得力を出すのに苦労しています。女性も出てくる戯曲なんですけど、全員男でやるという試みも面白いですし、もともと僕は脚本も好きなんです。人間の熱い部分というか、芸術に関しても政治に関しても何かに向けて行動するというところがあるので、すごくやりがいを感じています。時代は大正時代の話なんですけど、《何か行動したい》という思いは今の人たちから見てもリンクする部分があると思うんです。特に的早さんはできるだけ今の人たちとつながるように、わかりやすく演出を付けてくれているので、とても面白くなると思います。」
稽古をしてみていかがですか?
Youtubeで観る海老原
「サロメ(神近市子)と学生(久保栄)を演じます、海老原悠希です。」
榎「伊藤野枝役の榎太誠です。」
海老原「昔の文学に触れることが今まで無かったので昔の言葉遣いに苦戦することもあるんですけど、逆に触れてこなかったからこそ、日本語の面白さを実感することができました。」
榎「これまで女性の役をやったことが無かったのでめちゃめちゃ楽しみっていうのと、共通点もたくさんあるのでこの役に興味があったんです。今回この役をもらえたので、今からすごく本番が楽しみです。演出家もやさしいので日々楽しく稽古させて頂いています。」
海老原「本作は昔の話なんですが、似たような社会条件は今もあると思います。今、この社会の中でいろんな仕事だったり、バイトだったり、学生だったりして葛藤している気持ちが似たような形で作品の中で描かれているので、若い方にも共感しやすいことはたくさんあると思います。」
榎「歴史の教科書とかだと堅苦しくて触れづらい感じがするんですど、今回はみんな若い人でやっていて、当時行われていたことをそのままライブ感を持ってやるんで、簡単に楽しんで観られると思います。」
佐伯「幽然坊(辻潤)と尾行を演じる佐伯鉄太郎です。初めての2役です。幽然坊はかなり特殊な役柄でして、これがどういう物語なのかを案内役を担いつつも、物語の中にも登場するんです。僕は伊藤野枝とクロポトキンこと大杉栄がどういう末路を辿るかを知ってしまっているので、楽しい反面、感傷的な気分にもなるという不思議な作品だなと感じています。難解なところもあると思いますが、それをわかりやすく作っていくというのが僕らの仕事なので、それを全うできたらと思います。」
稽古をしてみていかがですか?
「クロポトキンを演じる加藤卓海です。クロポトキンは大杉栄の劇中でのあだ名です。無政府主義を掲げて大正時代を駆け抜けた運動家なんです。劇中では主義主張が一貫しているんですけど、状況が変化していく中で、微妙な心境の変化が同じ言葉の中にも表れていたりしているので、味わい深いキャラだと思います。今の僕たちからすると古いと思える大正時代という題材ですけど、今僕らの感覚にもリンクしていたり、若干恋愛模様も入っていたりして、学べるところがたくさんあって持ち帰れるものがたくさんあると思います。男所帯で気楽でもありますし、男の人が女性を演じているのもその人の新しい一面が見えて楽しいですね。」
ナカムラ「先生をやります、ナカムラユーキです。先生(島村抱月)は賢い興行師ですね。著名な方なので嫌われないようにしたいですね。プロデューサー以外では、僕は一人だけみんなよりも年上なので、若さをもらってはつらつとやらせて頂きます。たぶん、逐一言葉の意味とかを理解しようとするとだだだっと言っちゃうと思うんですよね。ハツラツと動き回る昔の人を演じる若い子たちを見ているだけで面白いと思います。まあ、みんなよくわからずやっているところもあると思うので、そういうところも楽しんで頂けたらと思います。」
文学青年部『美しきものの伝説』稽古場より
本作は3月20日(金・祝)から東京・日暮里 d-倉庫で上演される。
詳細は公式サイトで。
(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ)
文学青年部『美しきものの伝説』
【作】宮本研
【演出】的早孝起(文学座)
【出演】飯川瑠夏 榎太誠 海老原悠希 加藤卓海 佐伯鉄太郎 佐藤慶太 宮田大輝 由井柾 吉田尚弘 ナカムラユーキ
2020年3月20日(金・祝)~3月22日 (日)/東京・日暮里 d-倉庫
公式サイト
文学青年部『美しきものの伝説』
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