2018.8.8  14

【制作コラム002】「自由席」を、真に「自由な席」にするために(後編)


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【制作コラム002】「自由席」を、真に「自由な席」にするために(後編)
【制作コラム002】「自由席」を、真に「自由な席」にするために(後編)
 

【制作コラム002】「自由席」を、真に「自由な席」にするために(後編)

 
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1)ゲネプロ(できれば場当たりも)を観て、確保しておきたい座席をお客さんの選択肢からはずす

お客さんがいらっしゃる前に、残しておきたい席や座らないでほしい席が「お客さんの選択肢に入らない」ような準備をして、「せっかく選んだ席を動かなくてはいけなくなった」というストレスを最小限に抑えます。そのためには制作がゲネプロ(本番通りに実施するリハーサル)を観ることがマストです。いくら稽古を観ていても、劇場と稽古場の環境は違います。お客さんが観る環境下で先に観ておくことでできる準備があります。その前提で。

できれば場当たりも客席に入れたらベストです。場当たりの段階で見つかった問題は、クリエイターの協力によって解決できる可能性があります。作品を変えるというと抵抗があるかもしれませんが、クリエイターが伝えたいことが伝わらない状況が生まれているのであれば、それを放置するのはクリエイターも不幸です。

観切れ席」を例に考えると、見えてはいけないものが見えてしまっているとか、最前列のお客さんにしか見えない、みたいな問題は、伝えるタイミングが早ければ小さな修正で劇的な改善ができることもあります。なにも観づらい席をすべて「観切れ席」として販売停止する必要はないのです。解消することもできるのです。

 
「遅れ席」と「観切れ席」
「見切れ席」と「遅れ席」

制作も準備することがたくさんありますし、場当たり段階では客席ができていないこともあるでしょう。それでも「場当たりを観ることで未然に防げる問題があるかもしれない」ことは頭に置いておいた方がよいと思います。

ゲネプロでも、客席のいろいろな席に実際に座って、見え方やお客さんの動線をチェックします。そしてゲネプロが終わったら、「観切れ席」も「遅れ席」も布をかけたり外したりして、一度座ったお客さんに席の移動をお願いする、という可能性を極力排除するための客席調整をします。

特別な事情のお客さん用のお席については、「特別扱い」がほかのお客さんをいやな気持ちにさせないような工夫をします。外したり布をかけたりが難しい位置であっても、先客がいるように見えればほかのお客さんが座る可能性は減るはずです。座席のパンフレットを外しておく、あるいは逆になにかを置いておく、といったちょっとしたことで可能だと思っています。

 

2)お客さんとコミュニケーションをとる

場当たり・ゲネプロを通じて想像できる対策をとったとしても、それでも想像を超える事態は起こりえます。布をかけていた列にいつの間にかお客さんが座ってらしたり、たたんでおいた補助席を自主的に出して座られていたり…。

「パンフレットの置いてあるお席からお選びいただいております」「観やすい○列目のお席にまだ余裕がございます」といったアナウンスをお客さんに届く声量・タイミングで発信しても、気づかないうちに座られていたり、「ここの布がかかっている列に座りたい」と直接ご要望をいただくこともあります。

そんなとき、私はしっかりお客さんと会話をします。

なぜお客さんはそこに座りたいと思ったのかを伺えば、お客さんのご要望に応えられるほかのお席をご提案できる可能性があります。あるいはそこのお席をそのままお使いいただいて、確保する座席の方を変更するという判断ができるかもしれません。「座りたい席に座れなかった」という印象は、できるだけ小さくしたいものです。

 

3)スタッフを客席に入れる

制作が本番を観ない現場、というのは珍しくありません。上演中もご来場者集計や次の回の準備、遅れていらした方の誘導など、制作にはたくさんの仕事があります。それでも私は、制作はゲネプロだけでなく本番も観たほうがいいと思います。実際にお客さんが座っている状態でお客さんと一緒に観ることは、様々な気づきを与えてくれます。

とはいえまさか毎回客席に入っていたら上演中のお仕事が進みませんので、受付スタッフや演出助手などが観劇できるように手配し、終演後に気づいたことをシェアしてもらうことも有効です。観やすいと思っていたお席でも観づらい場面があったり、今回のテーマとは少しずれますが、空調の効き方やお客さんの反応など中にいることでわかることはたくさんあります。

 

4)たまには自分もお客さんになる

お客さんとして、自分もいろんなお芝居を観に行くことをお勧めします。お客さんとして行くと感じる便利さ・不便さ、自分が受けて嬉しかった対応・がっかりした対応、お客さんとして行ったときに自分はどこに座りたいと思ったか、などなど。いろいろな劇場に足を運んで、いろいろな制作者のやりかたやお客さんの行動を観察して、感じたことを自分の中にストックしておくのです。

私の周辺では「制作不足」と言われて久しく、現役制作者は多忙を極めていることも予想されます。ひとつの現場が終わったらすぐ次の現場、みたいなこともよくあります。それでも、お客さんと直接的なコミュニケーションをとる立場にいる制作者は、お客さんの感覚を自分の中にも持っていてほしいと思います。そのためには、お客さんとして観劇することがなによりだと思うのです。


今回は「自由席を自由席にするために」というテーマで考えてみましたが、そもそも自由席・指定席・一部指定席(ハイブリッド型)のどれを採用するのか、自由席にしても客席に入るのは先着順なのか予約順なのかなどなど、座席のことだけとってもたくさんの考える切り口があります。そして、その答えも必ずしもひとつではありません。ここに書いたのは私のセオリーであり、もっと違う方法をとっている制作者もきっといることでしょう。

私は、制作という仕事はとても工夫のしがいのあるクリエイティブな職種だと思っています。今後も、出演者でも技術スタッフでもない「制作」「プロデュース」という視点から情報発信をしていけたらと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 
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(文:大森晴香)

この記事を書いたのは

大森晴香
おおもり はるか|専門学校で舞台俳優の勉強をしたのち、応用演劇への関心から大学へ進学、学業の傍ら当日運営として活動。卒業後は人事系経営コンサルティング会社の営業職を4年弱経験。退職後はフリーの制作として活動。
2012年2月、時間堂に専属プロデューサーとして加入。全国ツアー、海外小説の舞台化、専有スタジオ十色庵の開設、劇団法人化に中心的に関わる。2016年末に時間堂が解散したのちは、小劇場から商業演劇まで、さまざまな演劇団体に制作協力やコンサルタントとして関わる傍ら、スタジオ十色庵の運営を続けている。
https://twitter.com/haruharuharu306

 

 

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