ミュージカル「メリー・ポピンズ」濱田めぐみ、柿澤勇人

全てのシーンが魔法みたい!最高にハッピーなミュージカル『メリー・ポピンズ』観劇レビュー

ミュージカル「メリー・ポピンズ」濱田めぐみ、柿澤勇人
ミュージカル「メリー・ポピンズ」Chim Chim Cher-ee 濱田めぐみ、柿澤勇人

全てのシーンが魔法みたい!最高にハッピーなミュージカル『メリー・ポピンズ』観劇レビュー

今年上演される数多くのミュージカルの中でも、制作発表時から高い注目を浴び続けてきた『メリー・ポピンズ』がついに開幕。
オーディションに3年もかかったという話からも、日本版『メリー・ポピンズ』を上演するにあたり、たくさんの時間がかけられ、難しい製作過程を乗り越えてきたことが伺えます。
日本のミュージカル界が一丸となって上演を実現した本作を、熱い期待を胸に観劇してまいりました!

ミュージカル「メリー・ポピンズ」平原綾香
ミュージカル「メリー・ポピンズ」Playing the Game 平原綾香

私が観劇させていただいた回は、平原綾香さんのメリー、柿澤勇人さんのバート。
柿澤さん演じるバートが煙突から登場し、かの有名な「チム・チム・チェリー」を観客に語りかけるように歌いながら、物語は始まります。

舞台は1910年のロンドン。バンクス家の新しいナニー(乳母)として空から舞い降りてきたメリーは、鞄から次々と手品のように家具や植物を出し、散らかった部屋も魔法であっという間に片付け、その姿にバンクス家のやんちゃな子供たち、ジェーンとマイケルはすっかりメリーの虜に。
バンクス家の舞台セットが登場するシーンは、まるで“飛び出す絵本”のような仕掛けになっていて、もうそれだけでも一つの魔法を見せてもらったような気分!

ちょうど春休みシーズンということもあり、客席は小さなお子様連れのご家族も多く、私の後ろの席に座っていた男の子は「すっげー!」と声を上げて驚いていました(笑)。その後も数々の魔法のような舞台セットや演出を目にするたびに子供たちの感嘆する声が聞こえ、バンクス家の子供たち同様、すっかり舞台の“魔法”の虜になっていた模様。その素直な反応にこちらの頬も思わず緩んでしまいました。

ミュージカル「メリー・ポピンズ」平原綾香
ミュージカル「メリー・ポピンズ」Cherry Tree Lane 平原綾香

もちろん大人の私だって、そのマジカルな演出には終始ドキドキ・ワクワクさせられっぱなし!「すっげー!」と声に出して言いたいところでしたが、言いませんでしたよ、大人ですから!その代わり、心の中ではずっと「うわぁぁぁ~…!」と叫んでおりました。もう、とにかく「うわぁぁぁ~…!」の連続なのです!

とくに「最高のホリディ」というナンバーがかかる公園でのシーンは、言葉では言い表せないほどの“彩鮮やかな”魔法をかけられること間違いなし!のイチオシの場面。一気に別世界へと連れて行ってくれる、“圧倒的な視覚的快楽”をぜひとも味わっていただきたいシーンです。

ミュージカル「メリー・ポピンズ」濱田めぐみ、柿澤勇人
ミュージカル「メリー・ポピンズ」Jolly Holiday 濱田めぐみ、柿澤勇人

『メリー・ポピンズ』の魅力といえば、誰もが一度は聞いたことがある名曲の数々、そして圧巻のダンスパフォーマンス!
劇中のキラーチューン、「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」(長い!)は目にも耳にも最高に楽しい場面。歌ばかりでなく、軽やかなダンスでも魅了する平原メリーにもご注目を。このビッグナンバーでは自然と客席から手拍子が湧き、曲のテンポが上がるにつれて舞台も客席もグッと熱量が上がり、曲の終わりにはショーストップになるのでは!?と思うくらい拍手が鳴り止まない状態に。劇場全体がひとつになった、なんとも言えない幸福感に包まれた瞬間でした。

ミュージカル「メリー・ポピンズ」濱田めぐみ、柿澤勇人
ミュージカル「メリー・ポピンズ」Supercalifragilisticexpialidocious 濱田めぐみ、柿澤勇人

二幕では最大の見せ場でもある、「ステップ・イン・タイム」で披露されるタップダンス!とにかくタップが凄い!タップがものすごい勢いで攻めてくるッ!!大人数で踊るタップの迫力、カッコよさを存分に感じられるシーンです。
そしてバートが壁を蔦って天井で真っ逆さまの状態でタップを踏む姿には、思わず口を開けて見入ってしまうこと間違いなし!重力さえも無視してしまう演出に、ただただ脱帽です。

ミュージカル「メリー・ポピンズ」平原綾香、大貫勇輔
ミュージカル「メリー・ポピンズ」Step In Time 平原綾香、大貫勇輔

マシュー・ボーンの振り付けでも話題になっている本作ですが、このエネルギー溢れるシーンを演じきったキャストのみなさまには大賛辞を贈りたい気持ちでいっぱいに。こちらのシーンも「スパカリ」同様、劇場全体でたいへんな盛り上がりとなりました!

ミュージカル「メリー・ポピンズ」Step In Time 大貫勇輔
ミュージカル「メリー・ポピンズ」Step In Time 大貫勇輔

びっくりするような仕掛けや演出も素晴らしいのですが、物語にも気付かされることがたくさんあります。
『メリー・ポピンズ』はバンクス家を中心に“家族”を描いた物語。仕事に一直線で家庭を顧みることがなかった父親のジョージが、妻や子供たちの大切さに気付き、バラバラになった家族の絆を取り戻すまでが描かれています。(ここは大ヒット中のミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』にも通じるテーマだな、と思いました)

製作発表記者会見のときに、ホリプロの堀社長が「お父さんにこそ観てほしい作品」と仰っていたのが印象的でしたが、観終わったときにその真意がよくわかりました。この物語で一番変化を見せるのが“お父さん”です。働き盛りのお父さんたちにこそ、時間を作ってぜひ家族と一緒に観て楽しんでいただきたい作品です。

ミュージカル「メリー・ポピンズ」平原綾香
ミュージカル「メリー・ポピンズ」A Spoon of Sugar 平原綾香

バンクス家の危機を救ったメリーは、また空へと旅立ちます。優しくも厳しく、自分たちの成長を見守ってくれたメリーのことが大好きになった子供たち、そしてバート(バートもまた、かつてバンクス家の子供たちのように、メリーにたくさんの大切なことを教わった子供の一人なのです)とのお別れのシーンは切なく、胸がキュンとする場面。“完璧”なメリーは終始感情の起伏を見せることのないキャラクターですが、このお別れの場面だけは、人間らしい感情が露呈し、観ているこちら側も「メリー、行かないで!そして、この物語もまだ終わらないで…!」という気持ちにさせられました。

次にメリーに会える保障はどこにもない。でも、きっとまたいつか会えるよね。そのときまで、どうか元気でいてね―、そんな想いが伝わってくる柿澤バートの表情も印象的でした。

ミュージカル「メリー・ポピンズ」濱田めぐみ
ミュージカル「メリー・ポピンズ」Finale 濱田めぐみ

メリーが傘を差しながら、文字通り空を飛んで行くフライングシーンは最後の一大見どころシーン(このフライング、日本版が一番長い距離なのだそう!)。だんだんと小さくなっていくメリーの姿を見送りながら、メリーがかけたたくさんの魔法、そして人生を豊かにしてくれる金塊のような言葉たちに、「ありがとう!」という気持ちが湧き上がってくるのでした。

カーテンコールの最後の最後までたのしく盛り上がれる本作。以前、柿澤さんもインタビューで仰っていましたが、観終わったあとはきっと劇中のナンバーを口ずさみたくなるはず。幸せな気持ちで劇場をあとにすることができる、老若男女に(そしてふだんミュージカルを観ることのない方にも!)おすすめの作品です。

東京公演は5月7日まで、東急シアターオーブにて上演。
大阪公演は5月19日~6月5日まで梅田芸術劇場メインホールにて上演されます。

ぜひ、劇場で夢のような時間をお過ごしください!
(文:古内かほ

公演情報

ミュージカル「メリー・ポピンズ」

【出演】
メリー・ポピンズ・・・濱田めぐみ / 平原綾香
バート・・・大貫勇輔 / 柿澤勇人
ジョージ・バンクス・・・駒田一 / 山路和弘
ウィニフレッド・バンクス・・・木村花代 / 三森千愛
バードウーマン / ミス・アンドリュー・・・島田歌穂 / 鈴木ほのか
ブーム提督 / 頭取・・・コング桑田 / パパイヤ鈴木
ミセス・ブリル・・・浦嶋りんこ / 久保田磨希
ロバートソン・アイ・・・小野田龍之介 / もう中学生

*上記キャストはダブルキャスト。

石川剛/エリアンナ/小島亜莉沙/丹宗立峰/長澤風海/般若愛実
青山郁代/五十嵐耕司/石井亜早実/大塚たかし/岡本華奈
風間無限/工藤彩/工藤広夢/熊澤沙穂/斎藤准一郎/高瀬育海/髙田実那/田極翼/照井裕隆/中西彩加/華花/樋口祥久/藤岡義樹/藤咲みどり/三井聡/武藤寛
(全役50音順)

2018年3月18日~3月24日/東京・プレビュー公演 東急シアターオーブ
2018年3月25日~5月7日/東京・東急シアターオーブ
2018年5月19日~6月5日/大阪・梅田芸術劇場メインホール

公式サイト
ミュージカル「メリー・ポピンズ」

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