柿澤勇人「童心のピュアさを大事に演じたい」ミュージカル『メリー・ポピンズ』インタビュー
ミュージカル「メリー・ポピンズ」にバート役で出演する柿澤勇人
ミュージカル「メリー・ポピンズ」で煙突掃除屋の青年・バート役を演じる柿澤勇人さんに、作品の見所や役への想いを語っていただきました!
2004年にミュージカル化され、英ウエストエンドにて初演、2006年に米ブロードウェイ初演、その後も世界10ヵ国以上で上演されてきた名作、ミュージカル『メリー・ポピンズ』が、魅力的なキャストと共にいよいよ日本で上演されます。
2018年3月~東京・東急シアターオーブ、同年5月~大阪・梅田芸術劇場での公演に向けて行われた合同取材会で、本作で煙突掃除屋の青年、バート役を演じる柿澤勇人さんに作品の見所や役への想いを語っていただきました!
――NYに行かれたときに『メリー・ポピンズ』をご覧になられたそうですが、今回バート役での出演が決まったとき、どのように思われましたか?
「やべぇな」って思いましたね(笑)。21歳でニューヨークで観たときはまさか自分がやるとは思わなかったので・・・。
バートという役はダンサーがやる役、(ダブルキャストの)大貫くんみたいな人がやる役だと思っていたので、最初はピンとこなかったんです。でも、いざ決まったら、「これはやることいっぱいあるな・・・」と。特にダンス、タップにおいて。
「やったー!」っていうより、「やばい、やんなきゃ!!」って一気に追い詰められました(笑)。
――今回新たにタップダンスに挑戦されてみて、いかがですか。
難しいですね。見ていると簡単に音を出しているように見えるけど、力を抜いてやらないと(音が)出ないんです。「力を抜いて」と言われても、ただ抜けばいいだけではないし、コツがあるんだろうと思います。
僕が劇団四季にいたころ、浅利慶太先生に、「お前は歌と芝居の才能はあるけど、ダンスだけだったらクビにしてたよ」って言われたんです。それを言われてすごく怖くなっちゃって。ダンスは好きだったんですが、若かったので、「じゃあもうダンスのあるミュージカルやーめた」、みたいな感じで、タップのレッスンとか受けなかったんですよ。
やっておけば良かったな、って思いましたね。こういうのって1日2日で身に付くものではないから、今はもう必死にやるしかないですね。
――バートという役を演じるうえで、どんなところを大切に演じていきたいですか?
いい意味で“気楽さ”や“童心”を大事にしたいですね。“子供が持っているピュアさ”が一番大切なのかな、と現時点では思っています。
オーディションの中でもイギリスのスタッフから言われたんですが、大人になると(子供に対して)上からの目線で教えるように接するけれど、そうではない、と。子供たちに気付かせてあげるというか、うれしいことを言ってあげる、そういう役なんだよ、と。
子供たちに凧を上げさせるシーンがあるんですが、「これは君のシーンじゃない。子供たちのシーンだから、子供たちを楽しませてあげて」って。
“自分が一番”ではない。それって芝居の世界ではすごく深いことなんですよね。いろいろ勉強になることがいっぱいあるんじゃないかと思っています。
――メリーとバートの関係性はどう捉えていらっしゃいますか?
これもイギリスのスタッフに言われたことですが、子役の子供たちと同じように、昔はバートもメリーからいろいろ教わっていて、それもあって、メリーのことが好きになった―、と言っても“恋心”ではなくて。でも好きで好きでたまらないという……。
――それは“親友”のような好きさ?
でも親友には「キスして」とは言わないじゃないですか。
難しいですよね。お母さんに対してだったら、「キスして」とか言うのかな?子供心で「ママ、キスしてよ」って。そっちの方だと思いますね。
――バート役は大貫勇輔さんとダブルキャストですね。
大貫くんとは、『ロミオ&ジュリエット』(2013年に上演)でロミオと死のダンサーとして共演しましたが、当時は“スーパーダンサー”として見ていました。“死”はダンスでの表現だったので、今回初めて(同じ役として)芝居ができるのは楽しみです。
彼が製作発表で言っていたように、本当に“世界一踊れるバート”になるんじゃないかと思います。
ダンスに関しては教わって、夜な夜な(練習に)付き合ってもらって・・・、という感じで頼りにしています!
――共演されるメリー役の濱田めぐみさん、平原綾香さんについてはいかがですか?
めぐさんとは何作品も一緒にやらせていただいているので、とくに心配することはないかな。何かあっても、「大丈夫、大丈夫」って乗り切れる信頼感があるので。でもまた新たな役柄の上での関係性を創れるのは楽しみですね。
平原さんとは初めてですが、『ビューティフル』を観たときに、なんて歌の上手い人なんだろう、と思いました。さぞ(歌っていて)楽しいんだろうなぁ、って思いましたね。実際、ちゃんとお話ししたのは今日(21日に行われた製作発表)が初めてだったんですが、掴めない方ですよね(笑)。
――(笑)。出てくる言葉が奇想天外でおもしろいですよね。
さっき、「柿澤くんと一緒にやるの、すごい不安なんだけど」っていきなり言われて(笑)。「私のこと絶対好きじゃないでしょ?」「バートは『キスしてキスして』って言うじゃん、柿澤くん絶対そういうことしてこなさそう」って。
僕は人見知りでいきなりオープンにはできないタイプなので、「徐々に徐々にね、大丈夫ですよ!」ってお伝えして。不思議な方、っていうのが今日の印象です。(そういうところが)メリー・ポピンズっぽいですよね。
――『メリー・ポピンズ』は1960年代にミュージカル映画として制作され、長い間愛され続けている名作ですが、柿澤さんから見てこの作品の魅力はどこにあると思われますか?
一番は楽曲の良さですね。『メリー・ポピンズ』を観たことがない人でも、聞いたことがある曲がいっぱいあると思うので。ストーリーも難しくなく…。でも、難しくないからこそやる側は難しいんですが。
観終わったあとにお客さんが「チム・チム・チェリー」なのか、「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」なのか、歌を口ずさみながら渋谷を帰っていく、というのが理想なんですが、そういう魅力がある作品じゃないかなと思っています。
――ストーリーが難しくないと逆にやる側にとっては難しい、というのは具体的には?
たとえばバートだったら、「子供心を持ってピュアにやる」。“本当にピュアにやる”のと、“ピュアっぽくやる”のって全然違うんですよね。
僕は今、シェイクスピアの『アテネのタイモン』という作品の稽古中なんですが、演出の吉田鋼太郎さんに、「酔っぱらって。あと15分後にやるから考えといて」と言われて、バーで酔っぱらう演技をしたんですが、「違う違う。それは酔っぱらってないんだよ。“酔っぱらってるっていう演技”をしてるんだよ」と。めちゃくちゃ難しいと思って。
だから例えば、エキセントリックな役って、「狂って!」って言われればいくとこまでいっちゃって、気を失っちゃえば簡単に狂っているように見えるかもしれないけど、そうではないシンプルなところって難しい気がしますね。
――作中の名ナンバーを歌えるのは楽しみですか?
バートの歌って音域的にキツいとか、歌い上げて拍手をもらう、っていう感じではないんですね。今日歌唱披露で歌った「チム・チム・チェリー」とかは、そこまで難しい音程のリズムではないんですよ。イギリスの音楽スーパーバイザーには、「歌いすぎないで」って言われました。
「これから『メリー・ポピンズ』が始まるからね。聞いてね」っていうの(物語への導入)を、「僕がやるから」っていうのではなくて、「ミステリアスに、語るようにやってほしい」と。でも、それって究極なんですよね。「ミュージカルで歌を語る」っていうことは。歌い上げるのは(声を)出しちゃえば済むことですから。「歌 うまいね」で終わっちゃうわけですから。
芝居、語りでバートをやらなくてはいけないので、そういう意味では楽しみですね。
――「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」は元気が出る魔法の言葉として劇中に出てきますが、柿澤さんご自身にとって「元気になる、自分を奮い立たせてくれる魔法の言葉」とは?
奮い立たせてくれるのは、やっぱり蜷川さん(蜷川幸雄)の言葉ですよね。「常に疑え、自分を」っていう。満足するな、ってことなんでしょうね。じゃないとどんどん追い抜かれるし、生きていけなくなるぞ、と。そういうふうに言ってくれる人ってなかなかいなかったので。
元気になる言葉ですか? 元気になるためにはお酒ばっかり飲んでいますね(笑)。
――最後に、本作の見どころを教えてください。
作品全体としては、歌の力は絶対にあると思いますし、家族のあったかい、美しい話なので、子供から大人まで楽しめる作品だと思います。「ミュージカルを観た!」って思えるような、ダンスも含め、盛りだくさんな作品です。こういう全部“てんこ盛り”みたいな作品はあるようでないかな、と思うので。
僕自身、そういう作品に出てこなかったというのもあるんですが、そういう意味で新しい柿澤を見せることができるかな、と思います。確実に大貫くんのバートとは絶対違うものになると思うので、「どっちもバートだよね」って言われるゴールをお互い見つけられたら理想ですね。
平原さん、めぐさんも違うメリーになると思うので、(それぞれの組み合わせの)“違い”を見比べて楽しんでいただけたらと思います。
パワフルな歌声と豊かな表現力、そして高い身体能力で観る者を惹きつけ、進化し続ける柿澤さん。
これまで演じてこられた尖った役柄とは一味違う、ハートフルな役で新たな一面を見せてくれそうです!
一般発売は12月16日から!
(取材・撮影・文:古内かほ)
ミュージカル「メリー・ポピンズ」
【出演】
メリー・ポピンズ・・・濱田めぐみ / 平原綾香
バート・・・大貫勇輔 / 柿澤勇人
ジョージ・バンクス・・・駒田一 / 山路和弘
ウィニフレッド・バンクス・・・木村花代 / 三森千愛
バードウーマン / ミス・アンドリュー・・・島田歌穂 / 鈴木ほのか
ブーム提督 / 頭取・・・コング桑田 / パパイヤ鈴木
ミセス・ブリル・・・浦嶋りんこ / 久保田磨希
ロバートソン・アイ・・・小野田龍之介 / もう中学生
*上記キャストはダブルキャスト。
石川剛/エリアンナ/小島亜莉沙/丹宗立峰/長澤風海/般若愛実
青山郁代/五十嵐耕司/石井亜早実/大塚たかし/岡本華奈
風間無限/工藤彩/工藤広夢/熊澤沙穂/斎藤准一郎/高瀬育海/髙田実那/田極翼/照井裕隆/中西彩加/華花/樋口祥久/藤岡義樹/藤咲みどり/三井聡/武藤寛
(全役50音順)
2018年3月18日~3月24日/東京・プレビュー公演 東急シアターオーブ
2018年3月25日~5月7日/東京・東急シアターオーブ
2018年5月19日~6月5日/大阪・梅田芸術劇場メインホール
公式サイト
ミュージカル「メリー・ポピンズ」
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