2016.9.26

スタジオライフ「BLOOD RELATIONS」観劇レビュー


スタジオライフ「BLOOD RELATIONS」舞台写真
スタジオライフ「BLOOD RELATIONS~血のつながり~」舞台写真
 

劇団スタジオライフ『BLOOD RELATIONS~血のつながり~』がシアターモリエールで上演中。

 
スタジオライフといえば『トーマの心臓』『アドルフに告ぐ』『夏の夜の夢』など文学的ロマンあふれる舞台で人気の劇団だが、今回の作品は通常行われている本公演とは趣を異にし、海外で生まれた秀逸な戯曲を東京の小劇場で上演する「The Other Life」シリーズの一つ。いわばスタジオライフのB-SIDEだ。登場人物の数も本公演よりはぐっとコンパクトに、今作の場合は7人。家族という密閉された箱の中でドロドロと渦巻く愛憎の物語を、ミニマムなキャストで濃密に見せる。

『Blood Relations』はカナダ発の戯曲。19世紀の末にアメリカで起きた凄惨な殺人事件、リッヅィー・ボーデン事件をモチーフに採り、その容疑者でありながら無罪を勝ち取ったリッヅィーという女性のその後をサスペンスフルに描く。これまで日本でもいくつかの劇団が手掛けているが、女性を中心に展開されるこのストーリーを全て男優のみで演じるのはスタジオライフならでは。女たちが内に秘めた嘘と真実、欲望、葛藤、絶望までを、男優たちがどのように体現するかが見ものだ。

劇団スタジオライフ『BLOOD RELATIONS~血のつながり~』
スタジオライフ「BLOOD RELATIONS~血のつながり~」舞台写真

 
物語はリッヅィー・ボーデン(青木隆敏)とその友人のとある女優(松本慎也)による、事件の回顧から始まる。親友同士でありながらピリついた空気の中で牽制し合い、しかも何やらただならぬエロティックな関係性を醸し出す二人の女の佇まい。リッヅィー役の青木から時折こぼれ出る、静かにドスの利いた地声がいい。「リッヅィー、あなたが殺したの?」あの日この家で一体何があったのか――。紡がれる無駄のない台詞たちは、客席全体を「一言も聞き漏らすまい」との緊張に包んでゆく。

二人の会話劇にいざなわれ、舞台はいつしか事件数日前のボーデン邸へと。女優がリッヅィー役に、リッヅィー本人がメイドの役に扮し、事件のあらましを再現していく劇中劇。いかにも舞台戯曲らしいこうした巧みな構成によって、小さな舞台はどんどん奥行きを増していく。そして明かされる事件の核心。冒頭のシーンではリッヅィーをやや翻弄していたかに見えた女優が、物語が進むにつれ彼女の心の闇へと引きずり込まれていく。松本の演技のグラデーションにも注目だ。

癇癪持ちで、利己的な理由から家族に殺意を抱くリッヅィーというダークヒロイン。であるにも拘わらず、観劇していると、作者・演出家ともにある種の敬意と共感を持って彼女に引き寄せられていることがよく分かる。きっとそこに本作の不気味なパワーがある。
が、それを許さないかのような、リッヅィーの姉・エンマ(大村浩司)や義母・アビゲイル(石飛幸治)といったベテラン勢演じる役柄のエレガンスがまた素晴らしい。二人ともリッヅィーから見れば嫌な女だが、役者の魅力も相まって、彼女らの気持ちのほうに寄り添いたくなる観客は多いのではないか。登場人物の誰に親しみを覚えるかによって、観客に残されるインパクトは全く別の色合いになるだろう。多くの優れた戯曲がそうであるように、観終えたあと感想を交わし合う甲斐のある一本だ。

そうしたことを思うとき、これを「The Other Life」として小劇場で上演した意味がよく分かる気がした。暗くて恐ろしいストーリーではあるが、役者の体温が伝わってくるほどの緊迫空間の中で駆け抜ける2時間を、ぜひじっくりと味わってみてほしい。

『BLOOD RELATIONS~血のつながり~』は10月2日(日)まで、新宿・シアターモリエール。なお上演はWキャストで行われる。

(文:上甲薫)

公演情報

スタジオライフ公演 THE OTHER LIFE VOL.9
『BLOOD RELATIONS ~血のつながり~』

[作]シャロン・ポーロック [翻訳]吉原豊司 [演出]倉田淳
[出演]青木隆敏 松本慎也 久保優二 山本芳樹 曽世海司 石飛幸治 ほか

[日程]2016年9月15日(木)~10月2日(日) [会場]新宿シアターモリエール

スタジオライフ公演 THE OTHER LIFE VOL.9
『BLOOD RELATIONS ~血のつながり~』! 公式サイト

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