よってらっしゃい! みてらっしゃい! 朱く燃える騒ぎ屋家業十何人、ここに降臨! 劇団朱雀『OMIAKASHI』観劇レビュー


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

“100年に1人の天才女形”として頭角を現し、人々を魅了し続けている俳優・早乙女太一さんが2代目座長として率いる「劇団朱雀」。
伝統ある大衆演劇の魅力を大切に残しながら、現代的な感性や表現を取り入れ、観る人の心を掴んで離さない魅惑的なブラッシュアップを重ねてきました。

3年ぶりとなる今回の公演では、これまで三部制で行われていた上演スタイルを変更し、第一部【芝居】、第二部【舞踊ショー】として構成。より派手に、色鮮やかに、そして親しみやすく進化を遂げ、烈火の如く燃え上がります!!

第一部 芝居『大江戸早業稼業』

早業一刀(早乙女太一)が率いる、江戸で人気の軽業一座・一刀座。その座員である六助(須賀健太)の腕には百合の模様の痣がある。幼い頃の記憶はなく、身寄りのないところを一座に助けられたと語るが、その痣の噂を聞いて一刀座にやってきた伊賀栗山之亮(喜矢武豊)ら侍たちは、六助の腕と彼が持っていた守り袋を見て目の色を変える。孤児だと思っていた六助は、さる大名のご落胤ではないかというのだ。六助の正体、侍たちの目的、一座の命運や、いかにーーー。

 
というのが、ネタバレをしない範囲での、あらすじです。物語の全貌はぜひ、劇場で。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

脚本を担当したのは、劇団☆新感線の座付き作家・中島かずきさん。
今回は早乙女太一さんから、「『オーシャンズ11』のような痛快エンターテインメントを」とリクエストされたようですが、痺れるほどのロマンを感じるセリフの数々と、勢いの中に遊びのある物語運びは流石でした。
そして、「軽いノリだけれど戦闘力はピカイチの兄貴分(太一さん)」「香る只者ではない雰囲気を裏切らない格好の良さ(友貴さん)」「危なっかしさはあるけれど芯は熱い漢(須賀さん)」など、配役のハマり具合も絶妙で気持ちが良かったです。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

須賀健太さんが演じる六助と、富岡晃一郎さんが演じる人間に劣らぬ頭脳を持つねずみ・チュー太の種族の違いを超えた“絆”がとにかくエモーショナルで、六助を想ってチュー太が取る行動すべてに対してヒーローショーを見ている気分で応援したくなる! 一生懸命さが愛らしいチュー太も、富岡さんにぴったりの役だと思いました。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

ひとつ教えていただきたいのですが、浜中文一さんには、「出来ないこと」というのは存在するのですか…? コメディ作品における悪役の難しさを感じさせない芝居の軽快さ、そして二部の舞踊ショーでも、キレのある踊りと、世界観に合わせて声を使い分ける器用な歌に圧倒されました。初参加とは思えないほど劇団朱雀との相性がとても良くて感激。
そういえばゲネプロのさいのお芝居で、主要登場人物の皆さんの最高にカッコいい口上の場面、浜中さんが太一さんの役名を大きな声で名乗りまして。後ろを向き、肩を震わせて笑う浜中さんと、「それ俺の!!」と叫ぶ太一さんの図に笑ったのですが、あれは多分アドリブでは…ない…ですよね?(笑) アットホームな雰囲気だからこそのハプニングも、良い笑いの種になっていて、面白かったです。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

2019年の『劇団朱雀 復活公演』にも参加経験のある喜矢武豊さん。ボケにもツッコミにもまわれる、安心感がハンパない存在。悪役側でありながら、都合よく振り回されて困惑顔の喜矢武さんは何度見たって楽しいですし、ショーでは、歌って踊れるマルチな実力を遺憾なく発揮されていました。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

客席を使った演出も多く、観客も舞台となる町の一部として巻き込まれてる感覚が楽しいお芝居! 文字数の関係でここでは語り切れず悔しいのですが、レギュラー出演の方々も、今回から初参加の方々も、皆さん個性豊かで良い味がいたしました。

第二部 舞踊ショー


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

これまでの「劇団朱雀」の公演は、第一部【早乙女太一さんの女形を中心とした舞踊ショー】、第二部【日替わり芝居】、第三部【現代的な音楽も多数使用した舞踊ショー】という構成でした。それが今回から二部制に変わるということで、朱雀を愛するファンにとってはかなりの衝撃でしたし、“大衆演劇”らしい何かしらが失われてしまうかもしれないという心のざわめきに襲われた声を何度も目撃しました。(私もそのひとりです)
ですがそんな皆さんに、これだけはお伝えしておきたい。「その心配は、杞憂だ」と。

結論から言えば、今まで第一部と第三部で魅せていただいていた舞踊ショーが合体して構成されたのが、今回の第二部。つまり、前半部分は太一さんの女形による踊りが占め、中盤に皆さんが大好きなあのコール&レスポンスが待っていて、皆でお祭り騒ぎをする、という流れになっていました。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

個人の感想としては、大衆演劇という芸術を、「劇団朱雀」というジャンルを初めて観る人たちにとって非常に親切で、見やすい内容に再構築されたように思いました。そしてこれはいち観客としての感覚ではありますが、太一さんが持ちうる技術を凝縮させる構成にしたことで、結果として一番苦しいのは、太一さんご本人だと思うのです。女形からの早替えや超絶技巧の殺陣、そして歌唱…そのすべてが約1時間の中に詰まっている。
非常にチャレンジングなことだったと思いますが、その中には、出演者の方々の負担も考えながら、新規の観客が親しみやすい構成を心がけ、「劇団朱雀」を長年応援してきたファンの期待を裏切らない華を残そうとした、太一さんらしい努力と愛が感じられました。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

「神に捧げる灯り=OMIAKASHI」というタイトルにふさわしい神秘的な世界観で、導入から一気に心を掴まれたかと思えば、その後は、【美しい】と【楽しい】と【カッコいい】の最強コンボで、こちらの心臓を良い意味でズタズタに斬りに来る感じが最高です。
楽曲の選択も踊りの振付も全体的にスタイリッシュなものが多く、朱雀が新たなフィールドへ飛び立とうとしていることが伝わって来ました。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

鈴花奈々さんと友貴さんの踊りはだいぶご無沙汰だった気がして、個人的には新鮮でワクワクしました。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

渋い大人のカッコよさを見せつけてくださる、初代座長・葵陽之介さんのステージ。
第一部と第二部の幕間には、出演者による物販の手売りと共に、陽之介さんのミニトークコーナーがあるのですが、そこで見せるお茶目さのギャップがすごいので要注目です。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

劇団朱雀ファンにはお馴染み、富岡晃一郎さんが演じる「トミ子(通称:トミー)」。癖になる可愛さ。今回も某不思議の国の某女王様のようなビジュアルがたいへんキュートで、この後に挟まるトークコーナーの愉快さも相変わらずで安心しました。「トミ子さんに会えなかったら泣いちゃうゾ」と思っていたのですが、こちらも杞憂。無事にお目にかかれて嬉しかったです。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)

2020年の『ぎふ葵劇場 幕引き公演』に初参加をして以来、劇団朱雀にはもはや「常連」となった須賀健太さん。当時は、初めて経験するジャンルのお芝居や踊りに圧倒され、日々、“完全に燃え尽きた人”という状態にまで削られていた印象が強いのですが、今回は全体的に余裕が生まれているように見えて、頼もしさが増したように感じました。


劇団朱雀『OMIAKASHI』(撮影:小境勝巳、坂田貴広)
※なんとなく、太一さんと友貴さんの背格好(雰囲気)が似てきたと思うのは、私だけでしょうか。誰よりも身近にいるライバルであり、唯一無二の信頼をおける相手でもきっとある。この関係性の尊さを表すのにピッタリな言葉は、2026年時点で存在しない。

朱雀は、早乙女太一さん、早乙女友貴さんという両翼が揃ってこそ飛ぶ体制に入ることができて、その他の出演者や関係者の皆さま一人ひとりが羽となり、2人を支えることで空高く舞うことができる。そして観客は、朱雀が飛びやすいように背中を押す風である。このような関係性が、とても素敵な劇団だと改めて感じました。

3年ぶりの本公演! 劇場に行く皆さんはどうぞ、大いに笑って、拍手をして、踊って、騒いで、楽しんでください!!

早乙女太一さんの芸歴30周年を記念して2025年に上演された「『TOKYO INSIDE CLUB』/『OTOGI』 -TAICHI SAOTOME 30TH ANNIVERSARY STAGE-」の再演が決定! 今宵は如何なる魅惑のクラブへ招かれるのか、詳細が待たれます。

劇団朱雀『OMIAKASHI』は、東京・サンシャイン劇場で上演されたのち、大阪、福岡でも上演されます。
https://www.gekidan-sujaku.com/

(文:越前葵

公演情報

劇団朱雀『OMIAKASHI』

【総合演出】
早乙女太一

【出演】
早乙女太一

早乙女友貴 須賀健太(東京・大阪のみ) 浜中文一 喜矢武豊 富岡晃一郎
久保田創 岩崎祐也
安田桃太郎 熊倉功 益川和久 高岩芯泰
⻄野名菜 NanaCo Mai Watanabe Yui Watanabe Kurumi Shiina Lena Kekke 琉貴
鈴花奈々 葵陽之介

【東京公演】2026年4月10日(金)〜26日(日)/サンシャイン劇場
【大阪公演】2026年4月29日(水・祝)~5月10日(日)/COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
【福岡公演】2026年5月13日(水)~17日(日)/キャナルシティ劇場

公式サイト
https://www.gekidan-sujaku.com/

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