『PRETTY-WOMAN-The-Musical』

幸福度MAX!最高にハッピーなミュージカル『プリティ・ウーマン』観劇レビュー

2026年1月~3月東京・東急シアターオーブ、大阪・オリックス劇場でミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』が上演されます。

今作は、1990年に大ヒットした映画『Pretty Woman』を原案に、『キンキーブーツ』『キューティー・ブロンド』、『ヘアスプレー』など、数々の名作映画をミュージカル化してきたジェリー・ミッチェルが演出を手がけ、ブライアン・アダムスが音楽を担当し、2018年にブロードウェイで初上演され、世界各国で上演中のヒットミュージカルです。
 今回、ジェリー・ミッチェル率いるブロードウェイのクリエイティブチームによるミュージカルで、初の日本キャスト上演となります。オリジナルキャストは、主人公ヴィヴィアンを星風まどかさんと田村芽実さん、若き実業家エドワードを城田優さんが演じます。そのほかメインキャストとして、ヴィヴィアンの友人キットをエリアンナさんと石田ニコルさん、謎の存在ハッピーマンをspiさんと福井晶一さん、エドワードのビジネスパートナーであるスタッキーを寺西拓人さんが演じます。

今記事では、囲み取材の様子とキャスト違いでの観劇レビューをお届けします!(①星風まどかさん、spiさん、エリアンナさん回 ②田村芽実さん、福井晶一さん、石田ニコルさん回)
『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

あらすじ
企業買収ビジネスで成功を収める実業家エドワードは、仕事で滞在していたロサンゼルスで、ハリウッド大通りに立つ自由奔放な女性ヴィヴィアンと偶然出会う。

日々の生活に追われながらも、自分の力で道を切り開いてきた彼女は、見る者の心を捕らえる存在感と、自然と引き寄せられるような魅力を備えていた。そんなヴィヴィアンに、軽妙なかけあいで心のガードを外されてしまうエドワード。
一夜限りの関係と思われたが、共に過ごすうちにエドワードは彼女の飾らない無邪気さや、時折見せる芯のある姿に心を奪われていく。

そして翌朝、社交行事や取引先との会食を控えていたエドワードは、彼女に「期間限定のパートナー」として共に過ごすことを提案する。
「取引」として始まったはずの関係は、やがて互いの心を溶かし合い、二人の物語を動かしていく・・・。

エンディングからカーテンコールへ、あの名曲が流れ出す瞬間まで本当に最っ高!なハッピーエンドでした。胸いっぱいの幸せに包まれ、気づけば涙がこぼれていました。やっぱり、多くの観客が求めているのは、こういう真っすぐで王道、そして心から幸せになれる物語なのだと思います。

オープニングでは、ステージいっぱいに「HOLLYWOOD」の大きな文字が現れ、賑やかで華やかな幕開けに一気に心が躍ります。そこへハッピーマンが登場し、「君の夢は何?」と観客に問いかける—この瞬間から、物語の世界へぐっと引き込まれます。
『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

取材会でハッピーマン役のspiさんは、「開始5秒で、観にきて良かったと思わせます。観にきてくださる方の人生が一夜にして変わってしまう、そんな作品になればいいなと思って、頑張ろうと思います」と語っていました。その言葉通り、ハッピーマンを象徴するカラフルで個性的なジャケットをお洒落に着こなしたspiさんがステージに現れ、歌い出した瞬間に一気に心を掴まれました。
私が思うspiさんの最大の魅力は「眼」。大きな体から放たれるキラキラとした瞳と強い眼力で夢を語り、自由に軽やかに歌い踊るハッピーマン役は、はまり役だと感じました。ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』でも抜群の存在感でしたが、今作でも登場した瞬間から空気を変えるインパクトがあり、エネルギーに満ちた演技と歌声に、圧倒的なパワーを感じました。城田さんとspiさんが並ぶと、背の高さも相まって、とにかく舞台映えするなぁと感じました。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

一方、Wキャストの福井晶一さんが演じるハッピーマンからは、“安定感”と“安心感”が伝わってきました。ハッピーマンは劇中で、ホテルの支配人やオペラの指揮者、ピアニストなど、さまざまな役柄へと姿を変え、七変化を披露します。その中でも、二人が泊まるホテルの支配人姿はとりわけお似合いで、説得力がありました。福井さんならではの貫録と包容力があり、自然とその場を預けたくなるような温かさを感じました。着ていくドレスがない、社交ダンスが踊れないと落ち込むヴィヴィアンに、さりげなくドレスを手配し、ダンスの先生となって導き、レディとしての振る舞いを教えていく。その頼もしさのおかげで、ヴィヴィアンは少しずつ成長し、自信を身につけていきます。ヴィヴィアン役の田村さんが、泣きながら鼻をかむ場面のやりとりや、社交ダンスで「オレ!」と賑やかに踊る場面は特に印象的です。ヴィヴィアンへの接し方に滲む、丁寧さの中にあるユーモアが魅力的でした。また、エドワードとヴィヴィアンの関係がすれ違いそうになる場面では、さりげなく二人を支え、ピンチを救う存在として機能しています。その距離感が絶妙で、“出過ぎないフォロー”が心地よく、人柄の良さを感じさせます。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

オープニングで作品世界に引き込まれたあと、観客をさらに深く物語へ連れていくのが、城田優さん演じるエドワードでした。
背が高く、スタイル抜群で、彫りの深い顔立ち、そして確かな歌唱力…欧米を舞台にしたミュージカル作品で、城田さんが重宝される理由は明白ですが、今作はその魅力が更に発揮された一作だと感じます。
映画版でエドワードを演じたリチャード・ギアにはダンディさを感じましたが、城田さんは実年齢こそ40歳ながら、見た目は30代に見えるほど若々しいので“ダンディ”さは薄目です。しかし、ひとたびステージに姿を現した瞬間の、圧倒的な「上質な良い男感」は別格です(笑)。おそらくオーダーメイドであろう、役柄にもぴったりの仕立ての良いスーツに身を包み、すっと舞台に立つ姿は実にスタイリッシュで、絵になる存在。ただカッコいいだけでなく、“只者ではないオーラ”を放ち、佇まいが美しく存在感があります。一目で「お金持ちのイケメン、しかも仕事ができる良い男」だとわかる説得力がありました。加えて、城田さんの演技はとても自然で嫌味がなく、文句なしにカッコいいです。

また、今作で城田さんは、主演を務めるだけでなく、日本版上演台本・訳詞にも初挑戦されています。主演だけでも相当な責任とプレッシャー、そして仕事量があるはずなのに、そこに翻訳まで担っているとは正直驚きでした。

囲み取材では、演出のジェリー・ミッチェルさんが「(翻訳家としても)彼は天才だ!」と大絶賛。「『キンキーブーツ』でもシンディ・ローパーさんは韻を踏んだ歌詞を書いていたが、日本語訳になるとアメリカ人の耳には“韻を踏んでいるように聞こえない”と感じることがある。でも、彼の訳詞はきちんと韻を踏んでいるんです。日本に来て11年になるが、彼がどうやってそれをやっているのか僕も分からない。ユーモアもあり、美しく、とても助けられました」と、興奮気味に語っていました。

さらに城田さんは、キャストと海外スタッフの架け橋となり、キャストに細やかなアドバイスを伝えたり、深夜までビデオチェックを行うなど、舞台を支える重要な存在だそうです。役としてのエドワードだけでなく、存在そのものが、限りなくエドワード像に重なって見えました。やはりエドワードを演じるには、抜きん出たビジュアルはもちろんですが、“中身も伴った良い男”であることが欠かせないと思います。その点で、城田さんはまさに条件を満たす存在です。城田優という俳優の資質が存分に生かされた今作は、間違いなく彼の代表作のひとつになるに違いありません。

にしても、エドワードがあまりにもパーフェクトヒューマンすぎて、正直ビビります(笑)。仕事面でシビアな面はありますが、見た目はカッコよく、スタイルも抜群。そのうえ学歴は大学院卒で、賢く仕事ができてしっかり稼ぐ男。酒は飲まず、女性への振る舞いもスマートで、オペラを鑑賞するような芸術的教養まで備えている。そして、ピアノまで弾けるんかい!という(笑)。

劇中では、ピアノが重要なキーアイテムとして用いられています。上質な空間演出の他に、その場での振る舞いやシーンが積み重ねられていきます。ピアノの上に土足で腰掛けるヴィヴィアンの姿は、彼女の自由さや型にはまらない生き方を象徴しているように感じました。

1幕後半には、エドワードとヴィヴィアンのラブシーンが描かれますが、それがまた何とも艶やかで、色っぽさと美しさを併せ持った場面です。ピアノ椅子に座るエドワードと、ピアノに腰掛けるヴィヴィアン。その身長差が驚くほど自然で、夕暮れの夜景を思わせる薄暗い照明の中、二人のシルエットが浮かび上がる構図は、計算され尽くされた美しさがありました。城田さんの逞しく男らしい体つきと、田村さん、星風さんの華奢な体型との差も、このシーンの魅力を一層引き立てています。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

コールガールのヴィヴィアンは、出会いの瞬間からエドワードに対してゴリゴリに値をふっかけ、強引に距離を詰め、自分のペースへと巻き込んでいきます。冷静で交渉ごとに長けたエドワードなら、彼女の誘いを断ることもできたはずですが、結果的には興味を抱き、関係を持っていきます。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

田村芽実さんが演じるヴィヴィアンは、行動の端々に媚や下心を感じさせつつも、あざとさの中にコミカルさとキュートさがあり、不思議と憎めない魅力を放っています。がさつで少しお下品なところもありますが、軽快なやり取りと屈託のない笑顔がとにかくチャーミングで、短い時間でエドワードが惹かれていく理由にも納得がいきました。

テンションが上がるとつい踊り出してしまう姿や、喜怒哀楽がはっきりと表に出るところも可愛らしさ満点。CDウォークマンで大音量の音楽を流し、ホテルの広いバスルームでノリノリに歌うシーンは、映画でも印象に残っていた場面なので、舞台でその空気感が再現されていたのが嬉しかったです。

カーペットに寝転んでフルーツをかじりながらテレビを見たり、ピアノの上に座ってしまったりと、品があるとは言えない自由奔放さや飾らない人柄が、エドワードには新鮮に映ったのかもしれません。一方で、ベルボーイにウインクして反応を楽しむような、男性を掌で転がす余裕やセクシーさも持ち合わせていて、そのギャップこそがヴィヴィアンの大きな魅力だと感じました。

お転婆でマイペース、少し品がないように見えるヴィヴィアンですが、物語が進むにつれて、その見え方は大きく変わっていきます。実はとても真面目で、約束をきちんと守り、家賃よりも遊びにお金を使ってしまう友人をたしなめたり、ブラックカードを持ち逃げしなかったりと、揺るがない価値観と誠実さを持った人物です。
エドワードのネクタイを結んであげるシーンのやり取りも、思わず胸がきゅんとする瞬間で、ヴィヴィアンの人柄が自然と伝わってきます。
「ネクタイの結び方はどこで覚えたの?」という問いに、「学生時代のがり勉君と!」と軽く返しながら、実はおじいちゃんに結んであげていたというエピソードが明かされる流れは、彼女がおじいちゃん子であり、内に秘めた優しさを感じさせる温かな場面でした。

学歴は高校中退ですが、決して頭が悪いわけではなく、むしろ地頭の良さを感じさせるヴィヴィアン。では、なぜ彼女はコールガールになったのか。生まれ育った環境や過去を知ることで、これまで抱えてきた辛さや苦しみに自然と共感してしまいます。貧しさの中で、まるでアリジゴクのような負の連鎖から抜け出せずにいた彼女。変わりたい、状況を変えたいと願いながらも、現実は簡単には動きませんでした。
しかし、エドワードと出会ったことで、「生きる場所」や「見る世界」は自分の意志で変えられるのだと気づき、前向きに変化していきます。その歩みこそが、この物語の軸だと感じました。

また、ヴィヴィアン自身も、金で性を買う他の男たちとは明らかに違う、エドワードのロマンチックでスマートな振る舞いに、少しずつ惹かれていきます。彼はすぐに体を求めることはせず、一晩共に過ごした翌朝には全種類の朝食を用意してくれるなど、女性が喜ぶポイントをさらりと押さえてくれたり。コールガールとして“消費”するのではなく、一人の女性、ひとりのレディとして向き合ってくれます。

『PRETTY WOMAN The Musical』

ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ
個人的に、私がエドワードの一番好きなところは「きちんと謝れる」ところです。自己肯定感が低く、傷ついたヴィヴィアンが、思い詰めて彼のもとを去ろうとする場面があります。そんなとき、エドワード自身にも言い訳やプライドはあるはずなのに、自分の言動や態度を振り返り、素直に非を認め、思いを言葉にして伝えます。

自分の考えだけを押し通すのではなく、「話し合うこと」を選び、歩み寄ろうとする。その誠実な姿勢が、二人の関係を少しずつ前へと進めていくのだと感じました。そして、ヴィヴィアンが悲しみや辛さを押し込めるのではなく、エドワードにさらけ出したとき、その想いをきちんと受け止める彼の懐の深さや優しさにも心を打たれます。
正直、世の全男性にエドワードを見習ってほしいくらいです(笑)。

もう一つ、特に好きなシーンがあります。期間限定のパートナー契約を結び、そのために「新しい服を何でも買っていい」とエドワードからブラックカードを手渡され、意気揚々と高級ブティックへ向かったヴィヴィアン。しかし、派手なコールガール姿の彼女に対し、店員たちはあからさまに冷たい態度を取ります。そこで彼女は自信を失い、服を買えずに店を後にします。

そんな彼女の様子を察したエドワードは、「誰が君に意地悪を?」と静かに怒り、その日の仕事をすべてキャンセルして、彼女の買い物に同行します。「大丈夫、恐れないで」「そんな人たちがどれほどくだらないか」「隠せないのは君の魅力だ」と言葉を重ね、ヴィヴィアンの心をそっと支え、自信を取り戻させてくれるのです。

「毅然としていて。君は美しい。願いはかなうよ。You are beautiful」
そう伝え、VVVIPとして特別対応を受けさせてくれるエドワード。不安そうなヴィヴィアンに「任せて」とウインクする城田さんの姿には、思わず惚れてしまいます(笑)。
大事な仕事よりも、落ち込んでいる彼女のケアを迷わず優先するところが、よくいる“ただ仕事が忙しい男”とは決定的に違う。金銭的な余裕だけでなく、心の余裕まで感じさせる瞬間です。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

そして、新しい服を身にまとったヴィヴィアンは、見た目が変わっただけではありません。歩き方も、振る舞いも、マインドもがらりと変わり、自信がみなぎっていきます。「価値は服ではなく、内側の魂!」と高らかに歌い上げるシーンには、胸を打たれました。

星風まどかさんが演じるヴィヴィアンは、美しさとスタイルの良さが際立っていました。
派手なメイクに金髪のウィッグ、真っ赤なジャケットにダメージジーンズのホットパンツ、安全ピンで留めた黒のブーツ。ウエストや胸元を強調したコールガール姿から、上品な白いワンピース、洗練された大人の女性を思わせる爽やかな白のパンツスーツへと装いが変わった瞬間、そのギャップに心を奪われます。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

また、赤いドレスを纏って現れた姿は、思わず息を呑むほどの美しさでした。星風さんの品のある顔立ちと雰囲気にぴったりで、エドワードが見惚れるのも納得です。
自信を持ち、未来へと希望を抱いていくヴィヴィアンの心の変化が、星風さんの小柄な身体から放たれる、魂に響くような力強い歌声からまっすぐ伝わってきました。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

今作のキャスティングで特に注目したいのが、エドワードが信頼を寄せる顧問弁護士、フィリップ・スタッキー役の寺西拓人さんです。
「国民の元カレ」と呼ばれ、飛ぶ鳥を落とす勢いの timelesz の新メンバーとして活躍するアイドル・寺西拓人のイメージからは想像できないほどの、見事な“噛ませ犬感”(笑)。

フィリップはエドワードのビジネスパートナーとして表向きは信頼されていますが、物語が進むにつれ、「お金」を最優先にする価値観や、裏の顔が露わになっていきます。特に、ヴィヴィアンがコールガールだと知った途端、掌を返したように彼女を蔑み、高圧的な態度で接する姿は、人間性の低さが際立ちます。ヴィヴィアンの二の腕に触れながら嫌味を言う場面は思わずぞわっとしますし、酒に酔って絡み、罵る姿も本当に最低で、終盤には「テラ、無理かも」と思ってしまうほどでした(笑)。

ですが、それは寺西さんが役を完璧に生きているということ。彼がとことん嫌な男を演じ切るからこそ、エドワードのスマートさや誠実さが物語の中でより鮮明に浮かび上がっていたのだと感じます。
今の寺西さんの人気と好感度を考えると、あえてこんな嫌われ役を引き受けなくてもいいのでは、と思ってしまいますが、本作は加入前に自らオーディションを受け、勝ち取った作品。アイドルとしての姿とはまったく異なる、ミュージカル俳優・寺西拓人のふり幅を、ぜひ体感してほしいです。
エンディングからカーテンコールでは、共演者の皆さんとニコニコ笑顔で、ダンサブルに華麗に踊る“いつものテラ”もしっかり堪能できますのでご安心を(笑)。
全力で演じ切ったあとに見せるその姿に、やっぱり彼は素敵な役者で、アイドルとしての魅力も抜群だなと改めて感じました。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

ヴィヴィアンの友人で、姉御的存在のキットを演じるエリアンナさんは、豪快さと迫力、そして存在感が抜群です。ソウルフルな歌声と、全身から放たれるパワフルさに圧倒されました。

『PRETTY-WOMAN-The-Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

一方、Wキャストの石田ニコルさんは、ヴィジュアル的には正統派美人で、どちらかというとキットよりヒロインのヴィヴィアン寄りかな?と最初は感じていました。しかし、登場時の「Welcome to the Hollywood!」という気迫のこもった第一声と歌声で観客を引き込み、その印象は良い意味で覆されます。キットの少し軽くて、どこか適当な一面の表現も巧みで、確かな演技力を感じました。

『PRETTY WOMAN The Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

そのほかにも、物語を彩るサブキャラクターたちの存在が、作品の世界をより豊かなものにしていました。
可知寛子さんは、さまざまなミュージカルや舞台でアンサンブルとして活躍されている俳優さんで、今作でも元カノ、アパレル店員、カメラマンと、複数の役柄を演じ分け、一癖あるキャラクターでしっかりと爪痕を残していました。
特に印象的だったのが高級アパレル店員役。場違いなヴィヴィアンを舐めるように値踏みする視線や、高飛車な態度、姿勢、歩き方、話し方までが絶妙なコメディタッチで表現されており、「いらっしゃいませー」の一言だけでも思わず笑ってしまいます。
可知さんの表情や動きは毎回ツボで、出演されていると自然と嬉しくなる俳優さんだなと感じました。
実際、客席からも可知さんの登場シーンでは笑い声が多く聞こえ、「可知さん、面白いな」といった声が漏れ聞こえてきて、やはりファンの多い俳優さんなのだなと実感しました。

ホテルの新人スタッフ、ジュリオ役のシュートチェンさんも目を引く存在でした。
くるくると変わる表情が可愛らしく、主要キャストとのやり取りには思わずくすっと笑ってしまいます。物語の良いアクセントになっているだけでなく、パフォーマンスも正確で美しく、確かな実力を感じさせる素敵な役者さんだと思いました。

『PRETTY WOMAN The Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

二幕では、エドワードとヴィヴィアンがオペラを観に行く場面が大きな見どころです。
初めてのオペラに、イタリア語もわからないけれど楽しめるのかと疑問だったヴィヴィアン。しかし、言語の壁を越え、次第にオペラに無邪気に夢中になっていきます。
その姿を見ながら、エドワードは彼女への想いを募らせていく重要なシーンとなっています。そのときの城田さんの、愛おしそうで優しい眼差しがとても印象的で、慈しみに満ちた愛を感じました。

アンサンブル俳優の石井千賀さん、佐々木淳平さんによる、会場に響きわたる『椿姫』は圧巻です。ヴィヴィアンがその豊かな表現力にうっとりと聴き惚れ、言葉はわからなくてもオペラの物語に引き込まれていく様子は、観客も一緒に疑似体験しているかのようで、感動的でした。

後半、面倒な恋愛は避けたいエドワードと、お金を稼ぐことを目的とするヴィヴィアン。あくまでビジネスとして始まった二人の契約関係は、少しずつ形を変えていきます。 仕事として割り切るため、「キスはしない」と決めていたヴィヴィアンは、当初その一線を守り続けます。しかし、ついにそのルールが破られた瞬間は、気持ちを抑えきれなくなった二人の関係が“契約”ではなくなり、物語における感情の大きな転換点です。
その後、二人の関係は恋愛へとシフトしていきますが、ヴィヴィアンは決して「シンデレラ」になることを望みません。
「誰かになりたいわけじゃない」「体は売っても、魂は売らない」「プライドだけは消せない」彼女は、どんな状況に置かれても“自分”を失わずにいます。
終盤、エドワードは新しいアパートの鍵や車の鍵を彼女に差し出しますが、ヴィヴィアンはそれを受け取りません。一見すると、申し分のない条件に思えますが、彼女が欲しかったのは“物”ではなく、誠実な想いや対等な愛でした。

誰かに与えられる未来ではなく、自分で選び取る人生を。
ヴィヴィアンは、最後まで自分の理想や夢を手放さなかったのだと感じます。

<span style="font-size:80%"> ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』 ミュージカル『PRETTY WOMAN The Musical』撮影/岡千里 キセキミチコ

エンディングでは、高い塔に閉じ込められたお姫様――つまり“自分自身”を、騎士が迎えに来て助け出してほしいというヴィヴィアンの理想が、ついに形になります。
建物の最上階にいるヴィヴィアンのもとへ、はしごを使ってのぼり、プロポーズするエドワード。高所恐怖症の彼が、ビビりながらもヴィヴィアンのために赤いバラを手に、馬にまたがり、傘を剣のように構えて愛を告げる姿は、どこか可笑しくて思わず笑ってしまいます。

城田さんが“バラが似合う良い男”であることは間違いありませんが、ここではただカッコつけているのではなく、彼女の願いに応えようと必死な、誠実で不器用なエドワードの姿がとても愛おしく映ります。そこにこそ、女性の理想がぎゅっと詰まっているように感じました。

そして最後は、お姫様抱っこでステージから去っていく二人。
その瞬間まで、女子の夢がたっぷり詰まったエンディングでした。

今作は、ヴィヴィアン“だけ”の成功物語ではありません。
エドワードもまた真実の愛にたどり着き、友人のキットも新たな一歩を踏み出します。観客は、登場人物の誰かに自分を重ね、勇気をもらえるのではないでしょうか。

お金を稼ぐことを最優先し、そのためなら他人の会社が潰れようと構わない――血も涙もないような、現実的な仕事人間だったエドワードが、明るく、飾らず、周囲を照らすようなヴィヴィアンと出会うことで変わっていきます。
ダンスではしゃいだり、シェイクスピアの詩を読んでみたり、他人の夢を応援したり――やがて彼自身も夢を描き、何かを“生み出す人間”へと変化していきます。その姿はとても人間らしく、少しずつ心がほぐれ、表情が和らいでいく過程が静かに心に残りました。
すべてを持っているようで、どこか孤独だったエドワードが、確かに満たされていくのです。

最後に改めて投げかけられる「君の夢は何?」という問いは、観る側自身に向けられ、自分の夢や人生、未来を思い描かせてくれます。
過去や環境がどうであっても、人は変われる――そう信じさせてくれる作品だと感じました。

そしてそれは、「夢なんてない」「夢なんて叶うわけがない」そう思い、夢さえ持てない状況や環境にいる人に対しても、誰もが夢を持っていい!夢は人生の地図だ!夢を持てば、叶うこともある。だから、夢をあきらめるな!
そんな前向きなメッセージを、まっすぐに投げかけてくれます。
「夢は必ずしもその形で叶わなくても、もっといい場所へ連れて行ってくれる」Never give up――沢山の愛と希望をもらえるミュージカルでした。是非、劇場でお楽しみ下さい。

(文:あかね渉

公演情報

『PRETTY WOMAN The Musical』

脚本:ゲイリー・マーシャル / J・F・ロートン
作詞・作曲:ブライアン・アダムス / ジム・ヴァランス
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版上演台本・訳詞:城田優
ミュージックスーパーバイザーオーケストレーション:ウィル・ヴァン・ダイク
アソシエイトディレクター:D.B.ボンズ
アソシエイトコレオグラファー:ラスティ・モワリー

キャスト

ヴィヴィアン・ウォード:星風まどか / 田村芽実
エドワード・ルイス:城田優
キット・デ・ルカ:エリアンナ / 石田ニコル
ハッピーマン:spi / 福井晶一
フィリップ・スタッキー:寺西拓人
デイビット・モース:吉田広大
ジュリオ:シュート・チェン
スカーレット:可知寛子
ヴィオレッタ:石井千賀
アルフレード:佐々木淳平
仙名立宗 / 富田亜希 / 吉元美里衣 / 杉山真梨佳 / 伊藤広祥 / 井上花菜 / 安井聡 / 青山瑠里 / 政田洋平 / 中嶋尚哉
Swing:大山怜依 / 白倉基陽

【開催日程・会場】
2026年1月22日(木)〜2月8日(日)
東京都 東急シアターオーブ

2026年3月1日(日)〜8日(日)
大阪府 オリックス劇場

公式サイト
https://prettywomanjp.com/

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